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「トロッコ問題」記事への追記――思考実験の功罪、ダブルエフェクト原理、フィリパ・フットの真意

11/13/2010 - 9:17 am by macska

前回の記事「『消極的義務』の倫理――『トロッコ問題』の哲学者フィリパ・フットとその影響」では書ききれなかったネタがあふれるほど余っているので、おまけとしてそのいくつかを書いてみる。というのも、サンデルの授業で紹介されているだけでなく、最近おこなわれた中森明夫さんと宮台真司さんのイベントでこの「トロッコ問題」が取り上げられるなど(宮台さんはちょっと間違って覚えていたようだけれど)、ここのところトロッコ問題への関心が高まっているようなので、もうちょっとこのサンデルブーム、トロッコ問題ブーム(?)に便乗してみようかと。 Read the rest of this entry »

「消極的義務」の倫理――「トロッコ問題」の哲学者フィリパ・フットとその影響

10/19/2010 - 12:01 am by macska

今月三日、イギリス出身の倫理哲学者フィリパ・ルース・フットが九〇歳で亡くなった。あるとき「女性の哲学者はどうして少ないのか」というシンポジウムに参加してみたら、発表者が全員男性哲学者だった、というような冗談みたいな男性優位社会でもある哲学界において、二十世紀中盤におけるアリストテレス的な徳倫理の復権に大きく貢献した哲学者の一人であり、前世紀を代表する女性哲学者の一人として記憶されることになるだろう。

しかしなんといっても彼女のもっともよく知られている功績は、いわゆる「トローリー(トロッコ)問題」という思考実験を提示したことだ。最近話題のマイケル・サンデル著『これからの「正義」の話をしよう:いまを生き延びるための哲学』を読んだり、かれの講義を収録したテレビ番組『ハーバード白熱教室』を観た人は、次のような設定に見覚えがあると思う。「トロッコ問題」には後述するように多数のバリエーションが生まれているが、以下はサンデル『これからの「正義」の話をしよう』から引用する。 Read the rest of this entry »

カムアウトをしない「自由」はない、あるのは「不自由」だけ(インディペンデント・マガジンpe=po掲載原稿)

10/18/2010 - 10:32 am by macska

(同性愛者らが)カムアウトをするべきかどうか、あるいはカムアウトするとしたらどういうタイミングでするかは、本人の判断に任されているべきである−−それは、まったくその通りだと思う。勝手に「あの人は〜だ」とアウティングしてしまうのは、良いか悪いかと言えば悪いに決まっている。

でもそのアウティングについて、レズビアンの小説家で活動家のサラ・シュルマンは、1990年にThe Village Voiceに掲載した短い文章「Outing: The Closet Is Not A Right(アウティングについて−−クロゼットは権利ではない)」で、次のように書いている(超意訳)。 Read the rest of this entry »

医者の「米国のインターセックス当事者運動は、それほど医療批判をしなくなっている」という見解について

10/17/2010 - 9:28 pm by macska

前回このブログでインターセックス(性分化疾患)の話題を全力で取り上げてから、四年以上がたった。米国で「インターセックス」に変わる医学的な用語として「Disorder of Sex Development(より以前はDisorder of Sex Differentiation)」という言葉が提案されたのがその前年。当時まだ日本語としての定訳がなかったので、「性分化・発達障害」(英語における正式名称がdevelopmentになるのかdifferentiationになるのか、その時点でははっきりしなかった)として紹介したが、その後日本でも「性分化疾患」という用語が決まり、社会的認知が進みつつある。

そういう中、ある記者の方からメールで取材の申し込みを受けたが、最初に出てきた質問は、次のようなものだった(ややいい加減な要約)。「インターセックス当事者の運動は医療のありかたを批判してきたと言うが、日本の医者に取材したところ、いまでは米国の当事者の意見も変化してきていて、それほど医療に対して批判的ではなくなっているらしい。そうした指摘についてどう思うか?」(なお、この文中で「医者」というとき、それは一般の医者ではなく、性分化疾患のマネージメントについて指導的な役割を担っている大学病院勤務の専門医のことだとお考えください。)

当事者の意見が変化している、以前ほど批判的な声が聞かれなくなってきていると感じているのは、日本の医者だけではない。米国の医者だっておそらく同じ印象をいだいているだろう。というより、おそらく米国の医者がそのように思っているということが、国際学会などを通じて日本の専門医にも伝わっているのではないかと思う。しかしそれは、医者という立場から見える、ごく限られた地平の話でしかない。 Read the rest of this entry »

ある「炎上」「ネットいじめ」に抱く、いやというほどの既視感

8/27/2010 - 10:23 am by macska

2ちゃんねるやミクシィなど、ソーシャル系のインターネットサイトを震源とする、一般人のブログ「炎上」や、個人情報を悪用した嫌がらせなどが、問題として取り上げられるようになって久しい。この短い文章では、そうした問題についての日本における議論の参考とするために、先日英語圏(とくに米国)で騒がれた、ある「ネットいじめ」の事例について、紹介してみたい。文中で言及している動画やコメントは、既に知っている人もいると思うし、英語がちょっと分かる人が検索すれば一発で出てくるけれども、不必要に晒したくはないのであえて省く。 Read the rest of this entry »

性労働者支援ネットワークにおける、ソーシャルワーカーと性労働者たちのSNS利用状況格差

6/9/2010 - 7:46 pm by macska

前エントリ「Facebookの普及に見る米国の社会階層性と、『米国=実名文化論』の間違い」は今月1日発行のメールマガジンα-Synodos6月1日号に寄稿した文章だったけれども、その後わたしが出席したあるミーティングでたまたま関連した話になったので、前エントリへの追記としてその報告をしておきたい。

わたしが出席したミーティングとは、わたしの住むオレゴン州ポートランド地域でホームレス支援や低所得層向けの医療提供、感染症予防や性暴力やドメスティックバイオレンス(DV)対策など、さまざまな社会支援活動に関わっている人たちが、性産業で働いている人たちに対するサービスやアウトリーチについて話しあうためのもの。これらの団体はそれぞれ別個に活動しているけれども、月に一度集まって情報交換したり共同でワークショップやイベントを開いたりするためのネットワークを作っている。 Read the rest of this entry »

Facebookの普及に見る米国の社会階層性と、『米国=実名文化論』の間違い

6/8/2010 - 8:49 am by macska

世界最大のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、Facebookが日本(語圏)に進出してから二年がたった。よく知られているように、Facebookは実名での登録を前提としていることが特徴であり、「米国で人気の実名SNSが日本社会において受け入れられるか」と話題になった。日本で最も利用されているSNS・ミクシィも、かつては実名での登録を推奨していたが、個人情報や個人的な写真が流出するという騒ぎを経て、実名で利用されることはあまりない。日本語版開始から二年たったいま、日本在住のFacebookユーザ数も二〇〇九年だけで約三倍に増えたものの、国別ランキングでは上位三十位にすら遠く及ばず、米国の1%前後に留まっている。

Facebookが日本で広まらないのは、当初から言われていたように、実名登録制が日本のネット文化に合わないからである、という説明がよく聞かれる。なるほど、匿名を前提とする2ちゃんねるや、ハンドルを使って繋がるミクシィ、さらには歌や踊りを見せても実名はなかなか出さないニコニコ動画も含め、日本のネット文化においては、会社や学校の人間関係から切り離されたところに、匿名だからこそ普段は出せない自分を出したいというニーズが反映されているかもしれない。

また、米国で人気のSNSは、流動的な労働市場において自分を売り込むために使う人が多いから実名なのだという人もいる。この説明は、個人が実名ばかりか学歴や職歴を公開するなど、主にホワイトカラーの求職・求人を目的に使われるLinkedInには当てはまる。しかしFacebookにおいてそれが一般的な利用法であるようには見えない。そもそも、実名登録制によって浸透したSNSは、米国においてもFacebookとLinkedInのほかにはない。すなわち、単純に「日本人は実名制に抵抗を持つが、米国人は持たない」という話ではないことになる。 Read the rest of this entry »

『アメリカ発 DV再発防止・予防プログラム』へのコメントへのコメントと、サポートグループの不可能性

4/29/2010 - 9:54 pm by macska

いつみても「キリンが逆立ちしたピアス」っていいブログ名だよなあと思ってしまうのだけれど、その id:font-da さんが、山口佐和子著『アメリカ発 DV再発防止・予防プログラム』を紹介している。わたしもこの本については「某秘密主義ML」(検索キーワード)で知り、気になっていたので、信頼できるレビューが出てきて助かる。いずれ入手するつもりだけれど、いつになることやら。

それにしても、「アメリカ発」の報告なら、なんでわたしに取材に来なかったんだ!という自意識過剰はともかくとして、どれくらい米国の反DV運動の中におけるさまざまな視点や主張を集めているのかという点は気になる。肝心なところは、大手団体に連絡して紹介してもらう先を取材していては全然見えてこないはずなので、著者自身が運動内部の状況をよく理解しているか、そうした状況がわかっている内部協力者が必要なはず。いやわたしに声がかからなかったから文句言ってるわけじゃなくて。

以下、本は読んでいないので山口さんの記述についてはコメントできないけど、font-da さんのコメントに追加コメントしてみる。 Read the rest of this entry »

労働争議でグダグダになってるWANを再生させる5つのアイディア

3/3/2010 - 10:05 pm by macska

NPO法人WAN(ウィメンズ・アクション・ネットワーク)における労働争議(労働者に対する労働条件の不利益変更の一方的通告からはじまり、それに労働者が組合を作って抵抗したところ、組合員二名に解雇勧奨通知)に関連して、普段あんまり署名活動とか参加しないわたしも労働争議を支援する署名の呼びかけ人にまでなってしまっているのはご存知の方も多いと思う。てか呼びかけ人なのにこれまで全然自分のブログで呼びかけてなかった、ごめんなさい。 Read the rest of this entry »

発達障害のあるアーティストによるドラァグショー報告/社会参加支援の一つの試みとして

1/25/2010 - 11:15 pm by macska

前エントリに続き、最近のシゴト報告。こんどは、今月11日に行われた発達障害者とその他のゲストによるドラァグショーについて。わたしの最近のさまざまな活動をガチ報告するという趣旨のこの「わたしの最近のシゴト」シリーズだけれど、本当に「お仕事」として給料を受け取っているのはこの件だけだったりする。てゆーかわたしのブログの読者でもわたしがいまどういう仕事をしているのか知らない人が多いと思うので(よく大学の教員だと思われるけど、そのキャリアコースからはとっくに脱落しました…と打ち明けたら小谷野敦さんがなんだか珍しく優しかったなw)説明すると、発達障害のある人たちを支援する非営利団体でごちゃごちゃ雑務をやってます。というのも2008年の終わり頃にわたしの友人というかハウスメイトがその団体の代表に就任したのだけれど、前の代表がダメな人で、銀行口座の残額ほとんどゼロで借金100万円近くみたいな状態で引き継いでしまったので、立て直すために呼ばれたのがはじまり。オフィシャルな役職は「ボランティアのマネージメント係」という弱小ポジションだけれど、実は代表の相談役も務める特務スタッフ、みたいな。 Read the rest of this entry »

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