開設1周年を迎える「ミーガン法のまとめ」サイトの懺悔

2005年12月28日 - 1:40 AM by admin

今年ももうほとんど終わり。去年のこの時期に起きた事件と言えば奈良の少女誘拐殺害事件だけれど、その後も幼い子どもたちに対する性暴力や殺害といった犯罪が繰り返し大きく報道された一年だった。1月に奈良の事件で容疑者として過去にも子どもの性的搾取で逮捕された経歴のある男性が特定されると、「子どもたちを守るため」という口実でミーガン法をはじめとしたネオリベラリスティックな社会政策を求める世論が沸騰する恐れを感じたので、それに対抗するために数日のうちに「ミーガン法のまとめ @ macska dot org」というサイトを作り上げてミーガン法を導入すべきでない客観的な根拠を挙げた。 Read the rest of this entry »

米国「トランスジェンダーを含むヘイトクライム法案」の舞台裏

2005年12月25日 - 3:05 PM by admin

TransNews Annex 経由で Washington Blade の記事「Frank says trans issue stalled Senate hate crime measure」(12/21/2005) という記事を読む。米国連邦法のヘイトクライム(特定の人種や性的指向などの集団への差別感情を動機として起こされる犯罪)防止条項を修正して保護対象を拡大する法案がいま審議されているけれど、上院でこの法案がスムースに通過しないのはトランスジェンダーの人たちまで保護対象に含めようとしているからだ、とバーニー・フランク下院議員が指摘しているという内容。フランク議員は米国の政界では最も有名な同性愛者だけれど、「トランスジェンダーの権利を主張するとゲイの権利までもが通らなくなる」としてトランスジェンダーの権利を後回しにする傾向があるので、今回も「またフランク議員か」という声がトランス・コミュニティからは聞こえる。と、これだけなら「トランスを切り離すことで自分たちだけいい思いをしようとするけしからんゲイ」というよくあるパターンなのだけれど、この法案を巡る攻防には裏やそのまた裏があるという話をワシントンDCで議員たちにロビー活動をしている友人から仕入れたのでレポートする。 Read the rest of this entry »

上野千鶴子講演「ジェンダー・セクシュアリティ研究に何ができるか」の危うい公私論

2005年12月23日 - 6:27 PM by admin

今度オークランドに行く時にはお気に入りのコリアンレストランに連れて行く予定のマサキくんによる The Survival 経由で上野千鶴子氏による講演「ジェンダー・セクシュアリティ研究に何ができるか?」を読む。「初学者にも上級者にも面白いものを」との要望に応え、いろいろな事を広く語る内容でかなり分かりやすい内容だけれど、そのうちセクシュアリティについて論じた部分に危ういものを感じたので以下にコメントする。また、上野氏の引用が気になって言及されている文献を読んでみたところ文献利用に疑問を感じたので、それについても述べることにする。なお、講演の全文が公開されているサイトにおいては「引用は一切許可できない」と書かれているけれど、許可を得なければいけない理由が思いつかないので勝手に引用する。 Read the rest of this entry »

DV被害者支援を志す人はマツウラマムコ著「『二次被害』は終わらない」に絶望せよ

2005年12月18日 - 3:25 AM by admin

サブカル路線に走った軽い記事に混じって「女性学年報」第26号に掲載されたマツウラマムコ氏の論文「『二次被害』は終わらない 『支援者』による被害者への暴力」を読む。マツウラ氏はこのブログにもたまにコメントをくださっている方で、性暴力やドメスティックバイオレンス(DV)への取り組みにおける「支援者の暴力」の問題に関してわたしと似たアプローチを取っているのだけれど、わたしが常々問題としているような「DVシェルターにおける権力構造」みたいなある意味社会設計によって解決可能な問題よりさらに奥にある解決不可能な構造的問題まで射程を伸ばしている点で評価できる。 Read the rest of this entry »

世界一単純なアファーマティブアクションの解説

2005年12月15日 - 6:11 AM by admin

アファーマティブアクション、あるいはポジティブアクションとか積極的格差是正措置みたいな言い方もされるけれど、こんな単純な話をよく理解しないまま賛否を議論している(大半は反対論だけど)人が多いように思う。そこで今回は世界一単純にそのあたりを解説するので、賛成か反対かはとりあえず棚上げしてアファーマティブアクションの論理を理解して欲しい。賛成とか反対とか言う前に、何について議論しているのか理解していなければ意味無いものね。ただ、論理は単純だけどそこから先はちょっと頭を使って考える必要があります。それから、ここ試験に出ます(ウソ)。 Read the rest of this entry »

「同性婚合法化運動の英雄」ニューサムSF市長の献金パーティで抗議活動

2005年12月13日 - 4:39 AM by admin

今週のはじめ、ポートランド市のコミッショナー(条例を審議したりするという意味では市議会議員のようなものだけれど、コミッショナー1人1人が行政官として特定の市政府部署を統括するという大都市では珍しい地位)のサム・アダムス氏から同報メールを受け取る。内容は、サンフランシスコのギャビン・ニューサム市長がポートランドで再選に向けた献金パーティをするから参加してくれ(寄付しろ)というもの。呼びかけ人のリストを見ると、アダムス氏のほか Basic Rights Oregon(オレゴンのLGBT権利擁護団体)やポートランドのゲイ&レズビアンの事業経営者(ゲイ&レズビアン関連の事業じゃなくて、経営者自身がゲイ&レズビアン)や民主党有力者が名を連ねていた。ある街の市長がそこから遠く離れた街で献金パーティをするというのは奇妙だけれど、明らかにニューサム市長は同性婚問題で得た名声を利用してポートランドのクィアたちから政治資金を集めようと思っている様子。 Read the rest of this entry »

NM州知事の経歴詐称暴露で2008年大統領選挙はスタート

2005年11月25日 - 12:08 AM by admin

AP通信の報道 によると、大学卒業時にメジャーリーグのカンザスシティ・アスレティックス(現オークランド・アスレティックス)からドラフト指名を受けたと自称していたニューメキシコ州のビル・リチャードソン知事が、実際にはドラフト指名は受けていなかったことを地元メディアに突き止められて認めた模様。リチャードソンは全米唯一のラティーノ系の知事で、下院議員からクリントン政権ではエネルギー庁長官・国連大使に任命された。州知事としても成果を挙げており、2008年大統領選挙の民主党予備選に出るとみられていた政治家の中ではわたしが一番期待していた人物。
一応大学時代には名選手だったらしく実際にスカウトとの接触はあったとされているけれど、ドラフト指名を受けたか受けていないかなんてちょっと調べればすぐ分かりそうなものなのに、どうしてそんな嘘をついたのか。おそらく1982年にはじめて下院議員選挙に出たときは、白人でない自分が将来大統領候補になって経歴のありとあらゆる事実を検証されるとは思いもせず、つい自分がいかにスポーツマンとして優れていたかを誇張しちゃったのだろう。そして、これまで20年以上のあいだ誰も気付かなかった小さな経歴詐称がいまになって突然暴露された理由は? 大統領選はまだずっと先だけれど、もしかすると2008年に向けた激しい政治の季節がたった今はじまったのかもしれない。

世界日報・山本彰記者によるインチキ取材の手法を暴く

- 12:05 AM by admin

今日紹介するのはハワイ大学ミルトン・ダイアモンド教授が世界日報の山本彰記者とのあいだに交わしたメールの第二弾。読んでいなければ先に第一弾を読むこと。読んだ人はご存知の通り、ダイアモンド教授は「全文丸ごと」掲載することを条件にメールの公開を許可してくださったのだけれど、読者にとっての分かりやすさを考えて別のところでメール全文を公開したうえ、ここではそこから抜粋引用翻訳しながらコメントしていく。また、ダイアモンド氏のメール全文には山本氏の書いた部分が(おそらく全文)引用されているので、それも評論の対象とする。山本氏の承諾を得ずとも構わないと判断した理由は前回を参照。 Read the rest of this entry »

ミルトン・ダイアモンド教授が「ジェンダーフリー支持」を明言

2005年11月24日 - 1:44 AM by admin

ジョン・マネーによる「双子の症例」実験のその後を追跡調査してその破綻を明らかにした学者と言えば、ハワイ大学のミルトン・ダイアモンド教授。「フェミニストやジェンダーフリー派はマネーの理論に依拠している」という間違った思い込みのもと、「反ジェンダーフリー」派の世界日報や八木秀次氏(「ブレンダ」本解説執筆者)はそのダイアモンドを自分たちに都合の良い論者だと思い込んで利用したのだけれど、わたしが常々指摘してきた通り、世界日報に掲載されたインタビューは誘導質問によるインチキだった。上野千鶴子氏の業績を否定したコメントも記者に間違った情報を吹き込まれて「それが事実ならば」という前提で発したものだったけれど、実際のところダイアモンド氏はジェンダーフリーも混合名簿も支持する立場の学者なのね。で、これまでの議論ではその証拠を要求する人に対してダイアモンド氏が世界日報の山本記者に送ったメールを個人的に見せてきたのだけれど、全文丸ごとであれば公開しても良いという許可を当人から得たので、わたしの手元にある2通を公開することにした。 Read the rest of this entry »

「諸君!」鼎談のジェンフリ・バッシングは相変わらず嘘だらけ

2005年11月23日 - 7:13 AM by admin

ちょっと前にこのブログに降臨して議論に応じてくださった小谷野敦氏が雑誌「諸君!」で仲正昌樹・八木秀次の両氏と鼎談したとの情報を掲示板の方で聞いていたのだけれど、今日そのコピーが手に入った。小谷野氏は現在「禁煙ファシズム」とやらとの対決に注力しているようだし、特にウォッチするような相手でもないと思うのだけれど、かれの11月4日付けの日記を読むとどうやらわたしとやった議論と関係ありそうな感じなので、腐れ縁と思ってコメントすることにする。 Read the rest of this entry »