ミルトン・ダイアモンド教授が「ジェンダーフリー支持」を明言

2005年11月24日 - 1:44 午前 | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

ジョン・マネーによる「双子の症例」実験のその後を追跡調査してその破綻を明らかにした学者と言えば、ハワイ大学のミルトン・ダイアモンド教授。「フェミニストやジェンダーフリー派はマネーの理論に依拠している」という間違った思い込みのもと、「反ジェンダーフリー」派の世界日報や八木秀次氏(「ブレンダ」本解説執筆者)はそのダイアモンドを自分たちに都合の良い論者だと思い込んで利用したのだけれど、わたしが常々指摘してきた通り、世界日報に掲載されたインタビューは誘導質問によるインチキだった。上野千鶴子氏の業績を否定したコメントも記者に間違った情報を吹き込まれて「それが事実ならば」という前提で発したものだったけれど、実際のところダイアモンド氏はジェンダーフリーも混合名簿も支持する立場の学者なのね。で、これまでの議論ではその証拠を要求する人に対してダイアモンド氏が世界日報の山本記者に送ったメールを個人的に見せてきたのだけれど、全文丸ごとであれば公開しても良いという許可を当人から得たので、わたしの手元にある2通を公開することにした。
ただし、英語のメールを全文丸ごと載せるだけじゃ日本の読者には分かりにくいだろうし、わたしとしてもコメントしにくいので、全文は資料として別のページに載せたうえで、以下にはそこから抜粋・引用しながら解説しようと思う。ちなみに、公開の許可を得ているのはダイアモンド氏の出したメールだけであり山本記者から同様の許可は得ていないが、ダイアモンド氏は受け取ったメールに返信する際カットせずに相手のメールをほとんど全部引用する癖があるらしく、ダイアモンド氏のメールの「全文」には山本記者からのメールが含まれているのね。山本記者の承諾を得ずにかれの記述を引用・論評することを非難する向きもあるかと思うけれど、これは山本氏個人のメールではなく世界日報社を代表する立場のメールなのでプライバシーの問題は起きないはずだし、取材において世界日報はダイアモンド氏のメールをいくらでも公開できるのにその逆はできないというのはメディアと個人の関係として不公平なので、公開に問題はないと考える。(まさか世界日報さんが週刊金曜日と同じようなこと言い出したりなんてしないですよねぇ♪)
まずは8月10日にダイアモンド氏から山本氏に送られたメールから。これは8月5日に山本氏が出したメールへの返答であり、時期的には八木秀次氏が「解説」でダイアモンド氏の業績を利用しつつジェンダフリー・バッシングを行った扶桑社版「ブレンダと呼ばれた少年」が出版され、東京新聞と朝日新聞においてダイアモンド氏自身が八木氏の主張に反するようなコメントを発表したあとになる。(なお、簡単な訳をつけるが、山本氏とダイアモンド氏の区別を付けやすくするように前者を「ですます」調で訳し、後者を「映画の邦訳にありがちな不自然な日本語」にする(笑))
まず山本氏が、メールの趣旨を述べている。

(山本氏)
How are you?(お元気ですか?)
Actually I’d like to get your permission so that I can use the interview with you made this January at the Hawaii University for the new book about the gender which will be published next month in our company The Sekai Nippo.(実のところ、今年の1月にハワイ大学で行ったインタビューを当社世界日報が来月に出版するジェンダーに関する書籍に再掲する許可を頂きたいんですよ。)
Because of this article, the topic about Mr. David Reimer became popular in the media society and the book “As Nature Made Him” has been recently translated into Japanese again.(あの記事のおかげで、デイヴィッド・ライマー氏の話題がマスコミ界で広まって、最近「ブレンダと呼ばれた少年」が再び日本で翻訳されました。)

おかしな「解説」をつけて再販されただけで、「再び翻訳」されたわけじゃないだろーが、と言いたいところだけれど、英語の添削をしたいわけじゃないので以下多少おかしいくらいのところは黙っておこうと思う(でも、元ワシントンDC支局長でしょー?)。ここで「来月出版する予定」と言っている本は9月中には出なかったようで、おそらく11月になって出版された「ビューポイント・緊急特集号第3弾 男女共同参画基本法・抜本的見直しを急げ!」がそれなんじゃないかと思うけれど、そちらのページを見れば分かる通りダイアモンド氏のインタビューは掲載されていない。その理由は以下にある。

(ダイアモンド氏)
I would certainly like to help. But I am afraid that what I say might not be accurately translated and was disappointed to understand that I was quoted as saying some unflattering things about Dr. Chizuko Ueno. I don’t think my comments were placed in the context I thought appropriate.(お役に立ちたいとは思っているよ。でも、あのインタビューではわたしの発言が正確に訳されていないように思うな。わたしが何か上野千鶴子教授についてひどいことを言ってしまったかのように引用されているようだけれど、がっかりしているんだ。わたしのコメントが不適切な文脈に入れられてしまったように思うんだ。)

ここで山本記者は東京新聞と朝日新聞に掲載されたダイアモンド氏の発言について、世界日報におけるそれとあまりに違うために読者を混乱させていると泣きつく。

(山本氏)
I’ve recently seen your comments in the articles of two Japanese daily ( the Asahi Shinbun and the Tokyo Shinbun ) .(最近、あなたが朝日新聞と東京新聞という日本の2つの日刊紙で発言しているのを読みました。)
I’m afraid the articles of these papers using your comment made Japanese people confused again about sex and gender ,because the comments were not quoted suitably in the context. They seemed to supprt gender-free idea by the articles.(これらの新聞に載せられたコメントは文脈がはっきりしないためにセックスとジェンダーについてまた読者を混乱させているのではないかと不安です。これらの記事を読むと、まるであなたの発言はジェンダーフリーの考えを支持しているかのようです。)

それに対するダイアモンド氏の答え。

(ダイアモンド氏)
I have not seen their comments but I’m sure I didn’t tell them anything different than I said to you.(それらの新聞に載ったコメントをわたしは確認していないけれど、かれらに対して言ったことはあなたに対して言ったことと全く同じだよ。)
[…]
Basically I do support gender-free ideas. I don’t think there is anything in the book “As Nature Made Him” that goes against that idea. (基本的に、わたしはジェンダーフリーの考えを支持している。「ブレンダと呼ばれた少年」のどこを読んでもそうした考えを否定する要素はないと思うね。)【強調はダイアモンド氏による】
[…]
As I told you, I think that everyone ought to have open opportunities to be educated and develop as they wish and can. I do believe that males and females are somewhat different but there is no way to predict which individuals would benefit the most from any teaching or opportunity thus all should be offered the same opportunities and treated equally. Any individual man or woman might avail themselves differently of the opportunities and might do different things with them but I think each and every person should have the chance to find their own niche in the world. (あなたに話した通り、わたしは人々はみんな可能な限り自分の望む通りに学び成長する広い機会を持つべきだと思っているよ。わたしはたしかに男性と女性は生物学的にやや違っていると思うけれど、どの個人がどういった教育や機会を活用できるかなんて誰にも分からないのだから、全ての人が同等の機会を与えられ、対等に扱われるべきだと信じている。それぞれの男性なり女性が個人として自分にふさわしい居場所を見つけられるチャンスを与えられるべきだ。)

ここでダイアモンド氏はジェンダーフリーを支持していることを明言しているばかりか、それが何を意味するのかかれなりに考えて説明している。ここを読めばどう転んでもダイアモンド氏が保守派が望んでいたような「反ジェンダーフリー」「反フェミニズム」の立場を支持する論者でないのは明々白々だ。そして、こう止めを刺す。

(ダイアモンド氏)
I would like to help as best I can. Please do not publish anything from our last interview. […] If you submit your questions to me in writing I will answer in writing so I can be sure of what is said and you can be sure of my meaning. That way we both will understand each other and there is less chance of misunderstanding. And when you publish do not extract only certain parts but publish everything in the questions and in the answers. (助けになりたいとは思ってるんだ。でも以前のインタビューを掲載するのはやめて欲しい。わたしが何を言っているかはっきりさせ、その意味をきちんときみに理解してもらうためには、文書の形で質問を送ってくれたら文書で回答してもいいよ。そうすれば、お互い理解しあえるし、誤解の危険も減るだろう。そして、インタビューを掲載するときはその一部だけ抜粋せずに、質問と回答の全文を載せてもらえないかな。)

一応「以前のインタビューは相互に誤解があったのかもしれない」という建て前を取っているけれど、これを読むと分かる通りダイアモンド氏は明らかに相手を信用していない。ある関係者の話だと、実はもともと世界日報から最初のインタビューを受ける前にもダイアモンド氏は「あそこは相手にしない方がいい」と助言されていたのだけれど、それを振り切ってインタビューを受けた結果やっぱり搾取的に利用されてしまったというわけで、今度こそはいいように利用されないぞという決意があったのだと思う。
ここまで言われてさすがに堪えたのか、その後1ヶ月以上山本記者からの連絡は途絶えたのだけれど、次は9月13日になってその「文書による質問」がダイアモンド氏に届く。…というところで、次回に続く。今回公開したメールの内容は衝撃的だけど、はっきり言って次のメールはもっと凄いです。
なお今回紹介したメールの全文は、以下の URL にあります。
http://macska.org/diamond-emails-pt-1


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