弱者へのレトリカルな搾取的便乗と、「◯◯ガー」という揶揄表現の妥当性

2011年7月12日 - 6:05 PM by admin

前エントリ「反ポルノ・売買春団体『エスケープ』十年前の方向転換と、暴力をふるう『反暴力』活動家たち」への反応のなかで、ほとんど唯一(ほかにいるかもしれないけど、見ていない)記事に批判的なことをツイッターで書いてくれたのは、@g_kinokoさんという人だった。マッキノンの反ポルノ論に好意的な人はたいていわたしの話を聞いてくれないし、まともに反応してくれないので、批判を書いたうえで、それへの反論にも応対してくれたのは嬉しかった。そうした直接の応答はツイッター上で書いているのだけれど、ちょっと気になった表現があったので、ここでもとりあげてみる。それは、@g_kinokoさんの次のようなコメントだ。 Read the rest of this entry »

反ポルノ・売買春団体「エスケープ」十年前の方向転換と、暴力をふるう「反暴力」活動家たち

2011年7月10日 - 10:54 PM by admin

最近、ツイッターで反ポルノ・売買春運動をしている人や、そういった人たちが進める「児童ポルノ単純所持規制」「ロリコン表現・メディア規制」に反発している人たちの発言がよく目に入ってくる。ちなみに今週メールマガジン「αシノドス」に掲載予定(だと思う、まだ確認取れてないけど、数日前に入稿しているし、ボツだとは言われていない)でも、その児童ポルノ規制に関連して「子どもの人身売買反対運動」について書いたのだけれど、そのこともあり反ポルノ・売買春系のサイトもいろいろ読みあさった。そのなかでもやっぱり一番充実しているのは、老舗の反ポルノ・反売買春団体「反ポルノ・買春問題研究会」のサイト。わたしはもちろんかれらの主張には反対の部分が大きいのだけれど、いっぽう「規制反対派」や「セックスワーク擁護派」には「反ポルノ・売買春派」の言い分をよく理解せずに、あるいは理解しようともせずに相手をバッシングするようなこともあって、居心地が悪い。
わたしは普段「相手の論理を理解して、理性的な議論をするべきだ」みたいに偉そうに言ってるけど、実のところ対立する論者の主張をねじ曲げてバッシングしたり、他人のそういう行為を見るのが、生理的に耐え難い、という個人的な理由が八割くらいを占めていて、「いや規制派の主張はそうじゃなくてこうだから、あなたの批判は的外れですよ」とか口を出してしまう。そのせいでわたし自身が規制派の一員だと勘違いされて罵声を浴びせられたり、逆に規制派の人から仲間だと思われたあとで本性を知られて「そんな人だとは思わなかった」と逆ギレされたりと、ろくなことがない、という愚痴はここまでにしておく。
今回エントリを書こうと思ったのは、その「反ポルノ・買春問題研究会」の活動報告に掲載された、「キャサリン・マッキノンさんの研究室を訪問」という記事を読んで、気になった点があったから。あ、いや、気になる点はほかにもたくさんあるんだけど、とくに気になったのが、反ポルノ・反売買春派のフェミニスト法学者として有名なキャサリン・マッキノンを「研究会」メンバーが訪れた、というこの記事。いつの記事か明記されていないのだけれど、マッキノンがコロンビア大学で客員教授をやっていたのは二〇〇〇年代初頭なので、だいたい十年くらい前のちょっと古い記事だと思う。 Read the rest of this entry »

「ポルノウィキリークス」の衝撃−−ポスト・ウィキリークス社会の 個人情報と人権

2011年5月16日 - 9:25 PM by admin

政府や大企業の持つ機密文書を広く一般に公開するために設立されたウィキリークスが、米国外交文書などをそれまでなかった規模で暴露し、国際的に大きな注目を集めたのは、昨年の夏から秋にかけての頃だった。当初、それらの文書が公開されれば、米国やその他各国の外交的利益が損なわれるだけでなく、文書の中で言及されている人権活動家の情報などが抑圧的な政権に知られてしまうことにもなり、かれらに危害が加えられることを懸念する声もあった。
しかし実際のところ、ウィキリークス自身が何もかも片っ端から公開するのではなく、既存メディアのジャーナリストと協力し内容を吟味したうえで公開する方針をとったこともあり、懸念されたほど大きな弊害は起きていない。結局、ウィキリークスが公開した文書には、国際記事を普段から読んでいる人なら「政府はそう表立っては言わないだろうけれども、まあそういうことなんだろうな」とあらためて納得させられるような内容が多く、意外性のある暴露はそれほどなかったように思う。あれだけ大きな衝撃をもって受け取られたわりには、これまでのところウィキリークスの直接の影響の大半は、一部の政府要人や外交関係者が恥をかいただけで終わっている。 Read the rest of this entry »

性感染症の流行をバイセクシュアルの存在と結びつける言説について

2011年3月2日 - 3:24 PM by admin

バックラッシュ!』出版でお世話になった双風舎の谷川社長が「夕刊ガジェット通信」において週三回の連載をはじめているが、そのなかで性感染症の流行を「乱交を繰り広げるゲイ男性」と、ゲイコミュニティと異性愛関係を行き来して性感染症を媒介するバイセクシュアルの存在に結びつける記事があった。
いくら「ゲイでバイセクシュアル」の人物の証言を紹介するかたちでも、あまりに安易で偏見を広めるだけになりそうな記事だと思って谷川さんにメールで連絡したところ、谷川さん自身が「安直に書いた記事でありわきが甘かった」と認めたうえで、連載で紹介するから批判を書いてくれと言われた。 Read the rest of this entry »

橋本努氏の「売春業のライセンス化」論は、承認も社会的包摂ももたらさない

2011年2月24日 - 4:40 AM by admin

ここのところ記事を書かせてもらっている「シノドスジャーナル」の執筆者の一人でもあり、わたしと守備範囲がかなりかぶっている(経済学よりの社会思想)橋本努さん(北海道大学大学院経済学研究科准教授)が、新著『自由の社会学』に関連して、「気鋭の社会学者が提案する『売春業のライセンス化』と『自由な社会』とは?」と題するインタビューを受けている。『自由の社会学』そのものは読んでいないのだけれど(紀伊國屋書店ビーバートン店でみかけたら買おうと思っている)、このインタビュー記事を読んで気になった点をいくつか。 Read the rest of this entry »

悪徳業者から生まれたカオスなソーシャル・ネットワーク――フレンドスター・フェイスブックに対する、マイスペースの異質さ

2011年2月16日 - 6:43 PM by admin

昨年夏にメールマガジン『αシノドス』及びブログ『シノドスジャーナル』に寄稿させてもらった記事「Facebookの普及に見る米国の社会階層性と、『米国=実名文化論』の間違い」が、ふたたび読まれている。ベン・メズリック著『facebook』などを参考にしつつ、世界最大のソーシャルネットワークサービス(SNS) フェイスブックの誕生と初期の発展について、米国社会における階級意識などを通して論じた記事だったが、そのメズリック本を原作とした映画『ソーシャル・ネットワーク』が日本でも一月に封切りされたことをきっかけに、「映画を観る前の予習として」あるいは「映画をより理解するために」として、ブログやツイッターなどでこの記事が紹介されているようだ。映画をきっかけにフェイスブックにアカウントを作った人も多いようで、ようやく日本でもフェイスブックが流行るか、それとも一時の流行で終わるか、注目される。 Read the rest of this entry »

ジュリアン・アサンジ性犯罪容疑に関連したよくある疑問・異論への応答

2011年2月10日 - 2:51 AM by admin

ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジにかけられている性犯罪容疑について、過去二回の記事(αシノドス初出「ウィキリークスのジュリアン・アサンジ逮捕をめぐる流言、そして「強姦」と「『強姦』」のあいだ」、週刊SPA!初出「 スピン・コントロールとしてのアサンジ擁護論」)でも紹介しているように、ジャーナリストの上杉隆・小西克哉・高濱賛各氏、評論家の山形浩生氏ら、そうそうたる人たちが、あろうことか容疑の深刻さを矮小化するような「誤報」を繰り返している。
英語圏でもマイケル・ムーアやナオミ・ウルフをはじめ、リベラルあるいは進歩派とみられている著名な論者がこうした言説を広めているのだが、それに対する批判や反論も活発に起きており、ムーアやウルフはメディアで弁明や釈明を求められた。また、ギズモードのような影響力のあるブログのいくつかは、事実が分かったあときちんと訂正記事を出した。それに対し日本語圏では、ほとんどそうした批判・反論が起きていないし、誤報を出した人や媒体が訂正記事を出す例も見当たらない。
そのためか、わたしが書いた批判を読んだ読者のなかには、わたしの記事の趣旨を理解しなかったり、あれだけそれは誤報だと書いているのに間違った「事実」を提示してくる人もいた。そこで今回のエントリでは、わたしの記事に対する「よくある反応」や、それ以外にもよく聞かれる「性的暴行容疑への異論」に対して、まとめて応答してみたい。 Read the rest of this entry »

スーパーボウルを制したグリーンベイ・パッカーズ――ファンと先住民オナイダ・ネーションが支える市民球団

2011年2月9日 - 7:03 PM by admin

先の日曜日に開催された、アメリカンフットボールの一大イベント・スーパーボウルでは、ウィスコンシン州グリーンベイを本拠地とするグリーンベイ・パッカーズがピッツバーグ・スティーラーズを下し、二〇一〇年度シーズンのチャンピオンの座を勝ち取った。アメリカンフットボールは日本ではメジャーなスポーツではないが、よく知られているように米国では四大スポーツ(フットボール、野球、バスケットボール、アイスホッケー)の中でも特に人気が高く、そのチャンピオンを決めるスーパーボウルは、試合だけでなくハーフタイムのエンターテインメントやテレビ中継で放映される広告に至るまで、おそろしいほど注目を集める。 Read the rest of this entry »

スピン・コントロールとしてのアサンジ擁護論(週刊『SPA!』二月八日号掲載)

2011年2月7日 - 5:00 PM by admin

以下に掲載するのは、扶桑社・週刊『SPA!』二〇一一年二月八日号(一月二五日発売)の「週刊チキーーダ!」コーナー内において掲載された短いコラムです。文字数制限が厳しいと、どうしても歯切れよく批判するだけの記事になってしまいがちなので、苦労しました。企画・編集で助けてくれた荻上チキさんに感謝します。また、同じテーマでシノドスにより本格的な記事(「ウィキリークスのジュリアン・アサンジ逮捕をめぐる流言、そして「強姦」と「『強姦』」のあいだ」)を寄稿しているので、そちらもご参照ください。 Read the rest of this entry »

再確認:「売春をしている人が、はじめて売春を行った時点での平均年齢は一三歳である」は間違い

2010年12月27日 - 3:00 AM by admin

メールマガジンα-Synodosおよびシノドスジャーナルに寄稿させていただいた(そしてその後当ブログにも転載した)「『テロ戦争』化しつつある、反『セックス・トラフィッキング=性的人身売買』運動」という記事において、米国の政治論議やメディアなどで広く流布しているある数値について書いた。それは「売春をしている人が、はじめて売春を行った時点での平均年齢は一三歳である」というものであり、同記事中で明快に指摘した通り、事実に反するRead the rest of this entry »