「排他的な安全」から「構築プロセスとしての安全」へ

2005年5月31日 - 2:08 PM by admin

地元で来月開かれるあるコンファレンスの関係者から運営方針について相談を受ける。そのコンファレンスというのは、左翼系の運動や活動家たちのコミュニティ内部における性暴力にどう対処すべきかという課題を掲げるもので、相談内容というのは、予定されたワークショップの1つとして「ラディカルなポルノを作ろう」という内容のものがあり、それを知ったある参加予定者から「自分は幼い頃児童ポルノに利用された経験があり、ポルノを肯定するようなコンファレンスには参加できない」というメールが届いたということ。主催者内部でも、参加できる人を制限するような事になるくらいなら「ラディカルなポルノ」についてのワークショップは別の機会に回そうという意見と、性暴力のサバイバーの一部にはポルノを通した自己表現によって自分のセクシュアリティを取り戻すという意義を見いだす人もいる以上そういったワークショップも必要とされているのではないかという意見とに割れてしまった様子。 Read the rest of this entry »

報道ではわからない大統領夫人のジョークのキワドさ

2005年5月14日 - 3:11 AM by admin

朝日新聞に5月14日付けの記事「大統領ジョーク連発 ローラ・ブッシュさん隠れた才能」。4月30日に開かれた「ホワイトハウス担当記者らとの夕食会」についての記事がこれだけ遅れて掲載されるということは、朝日新聞の記者は招かれず、他の記者が書いた記事を元にこの記事を書いたのだろう。とゆーか、いずれにしても遅すぎる気がするけど。 Read the rest of this entry »

意見募集:はてな「ジョン・マネー」項目草案

2005年5月5日 - 3:52 PM by admin

前回紹介した通り、はてなダイアリの「ジョン・マネー」の項目があまりに間違いだらけな上にわけの分からない陰謀論っぽい内容なので直そうと思ったのだけど、問題が問題なだけに「アンチ・ジェンフリ」「アンチ・フェミ」派からの反発が予想されそう。わたしとしては、できるだけ私情を排してマネーの崇拝者も批判者も納得できるような客観的な内容にしたいと思っているんだけどね。
そこで、以下に新たなエントリの草案を載せるので、内容についてご意見ください。元の記事をできるだけ残した上で問題点を直すというのも考えたのですが、あまりに酷くて間違いを削除するだけで全部消えてしまいそうなので(笑)新しく書き下ろしです。もちろん、「アンチ」派からのコメントやトラックバックも歓迎するので、焼くなり煮るなりご自由にどうぞ。…って、そんな事やってるうちに、誰かが勝手に書き換えて問題点を修正してしまったりして。 Read the rest of this entry »

「ブレンダと呼ばれた少年」の政治利用は間違い

2005年5月1日 - 12:52 PM by admin

ちょっと前の話題だけど、当時旅行中で書きそびれたので簡単に。Yoko さんから転送された産経新聞4月11日の記事によると、何年か前に無名舍から出版されて既に絶版となっていたジョン・コラピント著「ブレンダと呼ばれた少年」をフジサンケイグループの扶桑社が再刊することになったという。 Read the rest of this entry »

ニューヨーク市によってエイズ治療薬の実験台にされた子どもたち

2005年4月27日 - 8:12 PM by admin

大きな問題の割にあまり報道されていない事件。1988年から2001年までのあいだに渡り、親や家族を失い公立の児童養護施設や里親のもとで育てられていた子どもたちを、ニューヨーク市がエイズ治療薬の実験台として搾取的に利用していたことが明らかにされた(New York Times; Newsday; New York Post)。問題自体は昨年から指摘されていたのだけれど、今週ニューヨーク市が正式に事実を認めるとともに、外部の非営利団体による正式な調査を開始することが発表された。実験に参加させられたのは生後4ヶ月の赤ちゃんから十代の少年少女まで450人以上の子どもたちで、実験前に既にHIVに感染していたと「思われる」とされているのだけれど、実際のところ感染していたかどうかすら政府発表ではあやふやだったりする。 Read the rest of this entry »

ブッシュ政権弱体化で4年前の状況に酷似しつつある米政界

2005年4月3日 - 3:03 PM by admin

15年間意識不明の状態にあり、栄養補給チューブを外すかどうかの論争に政治家が介入し大騒ぎになったフロリダ州の女性が亡くなった。この問題でチューブを外すことに反対し政治家を動かしたのは宗教右派と呼ばれる勢力だが、実際に世論調査を行ってみると国民の7割から8割までもが「こうした家族内の困難な状況に政治家が介入するのは間違いだった」と答えている。現政権及び議会に大きな影響力を持つ宗教右派勢力が、実は共和党員あるいはキリスト教徒のうちのごく一部でしかないことが再度確認されたと言える。介入の中心となったディレイ下院院内総務や、本業が医師なのにわずか1時間あまりの患者のビデオを観て「彼女に意識があることは明らかだ」とトンデモ診断を下したフリスト上院院内総務ら、この問題に関わった政治家の大半は大きな恥をかいた。ディレイ議員は共和党が圧倒的に強いテキサス州の選出だが、その選挙区ですら最新の調査によると有権者の過半数がディレイの再選には反対すると言っている。 Read the rest of this entry »

いわゆる「尊厳死」論争は聞けば聞くほど不愉快

2005年3月26日 - 9:34 PM by admin

ここ一週間ほど、ラジオのニュース番組を聴くのが不愉快だ。もちろん、ニュースというのはそもそも不愉快な事件や事故についての報道が大部分を占めているわけだし、ブッシュ政権のいま政治関連のニュースは不愉快なことだらけなのが当たり前だけれど、ニュースの内容が不愉快なのとニュースを聴くことが不愉快なのとは別の話。最近、ニュースを聴くこと自体が不愉快なのだ。その理由は、ここのところ米国で大きな騒ぎとなっている、脳にダメージを受けて15年間意識不明の状態にあるフロリダ州の女性の「尊厳死」を巡る左右両派のバカげた言動にある。再三の審議において裁判所は彼女の夫の主張どおり彼女の栄養補給装置を取り外すことを認めたけれど、それに反対する彼女の両親に宗教右派と保守政治家が肩入れして、大きな政治的問題となっている。 Read the rest of this entry »

「反同性婚」憲法条項でドメスティック・バイオレンス対策が違憲に

2005年3月25日 - 6:11 PM by admin

つい最近講演で訪れたばかりのオハイオ州クリーヴランド(というか、実際に講演したのはその近郊の小さな街だけれど)からのニュース。当地の新聞 The Plain Dealer昨日の記事によると、昨年住民投票で成立した、いわゆる「同性婚禁止する憲法改正」を理由に、ドメスティック・バイオレンス(DV)を取り締まる法律の一部が違憲であるという司法判断が下った。問題となったのは同性婚とは何の関係もないヘテロセクシュアルの男女のカップルのケースであり、パートナーの女性に対するDVの罪で逮捕された男性の罪状が、判事によって比較的軽い罪に変更された。 Read the rest of this entry »

議論続行用エントリ

2005年3月10日 - 3:25 PM by admin

ええと、わたしが1週間入院しているあいだに「水原さんへのお返事」のエントリのコメント欄が議論で大変な事になってしまっているようなので、別に議論続行用のエントリを立てます。以降、関連の議論はこちらで行ってください。

100年前に起きた「性別の自己決定」論の歴史的教訓

2005年2月28日 - 11:12 PM by admin

ニューヨーク大学で客員教授をしているオランダ人歴史学者、Geertje Mak 氏が GLQ(クィア理論系の学術誌)最新号(volume 11, issue 1)に載せた論文「”So we must go behind even what the microscope can reveal: The hermaphrodite’s “self” in medical discourse at the start of the twentieth century」を読む。Mak 氏とは先週のシンポジウムで出会ってこの論文の存在を教わったのだが、歴史的な記述であるにも関わらず現代のインターセックス運動にも当てはまりそうな面白い内容。

インターセックスの歴史についてはミシガン州立大学の Alice Dreger 教授が「Hermaphrodites and the Medical Invention of Sex」という本で徹底的に書いているのだけれど、それによる分類では Mak 氏が研究対象とした20世紀前半は「性腺の時代」から「手術の時代」への転換期という風に分類されている。すなわち、人には必ず「真の性別」があるはずだ(つまり、本物の半陰陽なんて滅多にいない)という認識が共有されており、それは外見上の性や本人の性自認とは関係なく性腺のタイプによって医学的に診断される、と考えられていた時代が前者であり、一方「真の性別」なんてどうでも良くて、手術と生育環境によって一方の性であるとして育てればそれで万事上手く行くと考えられたのが後者の「時代」。Mak氏の論文は、こうしたパラダイム転換がどのように起きたかを明らかにしている。 Read the rest of this entry »