「反同性婚」憲法条項でドメスティック・バイオレンス対策が違憲に

2005年3月25日 - 6:11 PM | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

つい最近講演で訪れたばかりのオハイオ州クリーヴランド(というか、実際に講演したのはその近郊の小さな街だけれど)からのニュース。当地の新聞 The Plain Dealer昨日の記事によると、昨年住民投票で成立した、いわゆる「同性婚禁止する憲法改正」を理由に、ドメスティック・バイオレンス(DV)を取り締まる法律の一部が違憲であるという司法判断が下った。問題となったのは同性婚とは何の関係もないヘテロセクシュアルの男女のカップルのケースであり、パートナーの女性に対するDVの罪で逮捕された男性の罪状が、判事によって比較的軽い罪に変更された。
問題だったのは、当のカップルが事実婚の関係にありながら法律上未婚であったことだ。オハイオ州の「同性婚禁止憲法条項」は単に同性婚の認知を禁止しているばかりでなく、それに準ずるような関係性の認知、例えばシビル・ユニオンのようなものも禁止する文面になっているが、「法律上の結婚以外にそれに準ずるような関係認知の制度を作ってはいけない」という部分が、法律上結婚しているかどうかに関わらず事実上結婚しているのと似た関係であれば適用されるとしたDV対策法規を無効にしたというのが判事の判断だ。酷い判断だと思うかもしれないが、判事は自分はただ憲法に従って法律の合憲性・違憲性を判断しているだけであり、今後こうした判決が続くことによって(DV被害者にとって)恐ろしい事態が来るのではないかと危惧しているとまで述べている。
実際、62%の支持を得て成立したオハイオ州の反同性婚憲法修正条項を読むと、判事の判断は憲法法学上正しいように思える。条項の文面は以下の通り:

Article XV, Section 11 – Only a union between one man and one woman may be a marriage valid in or recognized by this state and its political subdivisions. This state and its political subdivisions shall not create or recognize a legal status for relationships of unmarried individuals that intends to approximate the design, qualities, significance or effect of marriage.

わたしが住むオレゴン州の「反同性婚項目」には二番目の文が含まれていないので、結婚と別でさえあればシビルユニオンのような制度を作る余地があるし、実際そういう動きも起きている。でもオハイオ州では、シビルユニオンも同時に禁止するつもりで二番目の文を紛れ込ませた結果、同性愛関係にある人たちだけでなく、異性愛のDV被害者まで困る結果になってしまった。今回の判決は加害者の量刑に関するものだが、今後これを前例として加害者に対する接近禁止命令が出ないようになったり、被害者に対する公的支援が打ち切られたりするかもしれない。
同性婚禁止憲法改正案を推進した政治家や活動家たちは、DV被害者を危険にさらすことは本意ではなかったと言い、必要ならばDVに関する法律を書き換えることで対処できると言う。しかし、そもそも同性愛者を差別して普通の生活を送ることを妨害するだけのために憲法を変えてしまうような連中が、自分たちはDV被害者を傷つけるつもりはなかったんだと言っても意味がない。仮に法律を改正するとして、同性パートナーによるDVの被害を受けた人を彼らは保護するべきだと考えているのか、それとも彼らの考える法改正とは異性愛カップルにおけるDV対策を合憲にするだけなのか、どちらのつもりなんだろうか。
DVの問題に取り組む施設や団体にとっては、法律や司法に頼らずに被害者を支援するにはどうするのか考え直す良い機会だと思う。普段から公的制度に頼り過ぎているために、いざ不法滞在していたり逮捕状が出ていたりして法制度に頼れないDV被害者が現れたらどうやって支援して良いか分からずパニックを起こすシェルターは多いが、今回の判決をきっかけに「公的制度に頼らない被害者支援」のスキルを高めればより多くの被害者を助けることができるはず。少なくとも、同性カップルへの権利侵害を放置したまま、目先の法改正だけを求めるような醜態を晒してはいけない。すべてのDV被害者を救うためには同性カップルに異性カップルと同等の法的な地位が与えられることは不可欠であると主張し、できるだけ早く同性婚禁止の憲法条項を破棄できるよう働きかけるべき時だ。

One Response - “「反同性婚」憲法条項でドメスティック・バイオレンス対策が違憲に”

  1. 柏・松戸・東葛エリアのくらし生活情報サイト Says:

    DVに悩む女性の駆け込み寺
    こんにちは、Aです。
    千葉県発行の県民だより に、NPO法人・かしわふくろうの家についての記事がありましたので、ご紹介いたします。
    最近ではDV(ドメスティックバイオレンス)と呼ばれている、夫や恋人からの暴力に悩む女性のの被害女性が悩みを率直に相談できる�…

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