フェミニズムと異性愛中心主義:上野千鶴子さんとの対話報告

2006年8月31日 - 2:00 AM by admin

先日このブログで双風舎刊『バックラッシュ!』掲載の上野千鶴子氏のインタビュー「不安なオトコたちの奇妙な〈連帯〉——ジェンダーフリー・バッシングの背景をめぐって——」について、異性愛中心主義的であり、バックラッシュを批判するという形を取りながら上野氏の発言そのものが「ジェンダーフリー」という看板のもとに多少なりとも始まっているセクシュアルマイノリティに関する教育へのバックラッシュではないかと批判した。
その後しばらくその件については放置していたのだけれど、ある方からのアドバイスによって上野さんに「このような批判を書きました」と連絡したところ、上野さんから返事があり、それから3週間かけてそこそこ建設的な対話を持つことができた。現在その対話が一段落したので、そのことについて以下に報告したい。ただし上野氏は対話内容の公開を拒絶したので上野氏に関する部分は直接の引用ではなくわたしが理解する彼女の主張であり、実際の彼女の意図とは違う可能性があるのでご注意を。 Read the rest of this entry »

コミットメントを欠く「フェミニズムへの助言」への懐疑

2006年8月10日 - 5:11 PM by admin

最近このブログ及び別ブログにおいて行ってきた一連の「弱者男性論」関連の議論でわたしが Masao さんという人に向けて書いた「あなたに戦略上のアドバイスをもらうほどフェミニズムは落ちぶれていないでしょう」という言葉がいろいろ解釈されて別のところで反発とともに(脱文脈的に)言及されたり、また一定の理解を示しつつも難点を挙げられたりしているので、ちょっとだけ解説してみたい。 Read the rest of this entry »

「コンドームなしの売買春増加」を抑止する政策的介入、解決編

2006年7月31日 - 1:28 AM by admin

先日、「売買春合法化論者に問う:『コンドームなしの売買春』増加にどう対処するか?」というエントリにおいてフェミニズムによる売買春非処罰化/合法化論を説明したうえで、米国の一部の都市などではネット上の売春者品評サイトなどの影響によりコンドームを使用する売春者への風圧が強まっていることを紹介した。そして、そういった現状を元に、政策的にどうすれば売春者の健康を守ることができるのかいいアイディアを考えてもらいたい、また「合法化すれば問題はすべて解決」というような単純な考え方をしている人には考えを改めてもらいたいと思い、わたし自身の考えは本文中には書かずに「政策立案コンクール」という形で意見を募集した。中にはわたしも考えていなかったような解決策を提案された方もいて、非常に有意義だったと思うのだけれど、議論が煮詰まってきたようなので、ここでこれまでの流れをまとめつつ、わたしの考えを提示したいと思う。(設題及びそのコメント欄未読の方はそちらから先にどうぞ。) Read the rest of this entry »

地雷を地雷と知りつつ踏み抜くような大隅典子氏の「人種の差」論

2006年7月27日 - 12:11 AM by admin

先日ジェンダー論争関係で大隅典子さんにメールしたところ真摯なお返事をいただいてちょっと嬉しかったのだけれど、その大隅さんがブログの最新記事「人種の差」に書かれていることはいくらなんでも酷すぎだと思うのでこの場でコメントしておきます。ちなみに、われらが正統派理系フェミブロガーせぐりんこと瀬口典子さんも反論書くという噂。瀬口さんと大隅さんで「典子」の名前を賭けて真剣勝負して欲しいところ。 Read the rest of this entry »

売買春合法化論者に問う:「コンドームなしの売買春」増加にどう対処するか?

2006年7月26日 - 7:57 PM by admin

ここ数日某所で売買春について議論しているのだけれど、あまりに相手(売買春反対派フェミ)の手応えがなくて面白くない。実際、売買春についての議論は既に飽きるほどくりかえされていて、だいたい売買春合法論の勝利で議論はとっくに終了している。最近では「人身売買反対運動」の名を借りて実質的には「反売買春」の運動をやっているフェミニストもいるけれど、それ自体「売買春」そのものの議論では売買春肯定論者にかなわないことのあらわれでもあるし。既に終わった議論を延々と繰り返すだけというのもつまらないので、今回は売買春合法論者が手こずりそうなもうちょっと複雑なシナリオを用いて政策立案コンクールをやってみたいと思います。 Read the rest of this entry »

鈴木謙介氏論文「ジェンダーフリー・バッシングは疑似問題である」と「弱者男性」論への疑問

2006年7月19日 - 8:35 AM by admin

フェミニズムやジェンダーフリーに対するバックラッシュの背景に「弱者男性」の不満や不安があるという種の指摘は以前からたまに見かけていたのだけれど、『バックラッシュ!』刊行以来そういった主張をさらに目にするようになったように思う。その1つの例が、先日コメントした赤木智弘氏の「『バックラッシュ!』を非難する」だけれども、その赤木氏の「『バックラッシュ!』は弱者男性の包摂を考えていない」という批判があたらないことは既に指摘した。けれども、わたしはその『バックラッシュ!』収録論文において「弱者男性」(という用語を鈴木氏自身は使っていないが)の包摂を訴える鈴木謙介氏の主張の方にも疑問を感じるので、この機会に鈴木氏の主張をまとめたうえで疑問点を提示しておく。 Read the rest of this entry »

小谷野敦さんの回答を検証する(プラス小谷野さん専用コメント欄)

2006年7月9日 - 9:59 AM by admin

さて、改変につぐ改変を繰り返す小谷野氏に耐えかねてわたしが提示した7つの質問に対し、小谷野氏は一応の回答をよせてきた。今度はこの回答をあとから改訂するようなことはしないで欲しいのだけれど、順番に検証していく。なお、小谷野氏は「小山のコメント欄での議論は、小山と一対一でやれるならともかく、匿名の第三者が入り込んできたりして面倒なことこの上ないから、お断りである」と書いているが、なるほどこれはもっともなので、このエントリのコメント欄では小谷野氏(とわたし)以外の発言を禁じる。何か意見を書きたい人は、掲示板に書いてください(匿名の人の意見は、多分小谷野氏には無視されます)。 Read the rest of this entry »

共感はできても賛同してはいけない「『バックラッシュ!』を非難する」

2006年7月8日 - 3:20 PM by admin

『バックラッシュ!』発売以来、同書に関連してブログ界で発表されたもっとも興味深い感想は、言うまでもなく赤木智弘氏による「深夜のシマネコBlog」に掲載された記事「『バックラッシュ!』を非難する」であろう。よりちゃんとした感想や書評はいくつもあるけれど、大量についたはてなブックマークから分る通り、最も多くの人の関心を引いたのは明らかにこの記事だ。わたしは最初これを読んでネタ的に面白がっていたのだけれど、このブックマークを見て気が変わった。ネタとしてではなく、本気でこの記事に賛同している人がかなりいるようなのだもの。関連した掲示板の議論を読む限り、どうやら赤木氏本人も本気モードのよう。恐ろしい。 Read the rest of this entry »

『バックラッシュ!』掲載論文への小谷野敦氏の批判に応えて

2006年7月5日 - 12:36 PM by admin

発売して10日で増刷になった双風舎『バックラッシュ!』だけれども、はじめてわたしの書いた文章に関連する批判が出てきたので反論する。批判をしたのは以前このブログでも議論に参加してくださった小谷野敦氏で、mixi 内に書いてあるらしい。mixi のような半公開のサイトに掲載された論評を非会員がどう扱って良いのかよく分からないので、批判があるなら公開のサイトに掲載するなり、直接メールで送ってくるなりして欲しかったのだけれど、いまさらそれを言っても仕方がない。小谷野氏にメールを出してその辺りを尋ねたところ、反論のためにブログで引用して構わないという返事はあった。また、その直後かれが公開のブログの方にも書名をあげないまま(宣伝したくないらしい)追加の批判を書いたようなので、それにも応えておく。【07/08 追記】 Read the rest of this entry »

「無名のアルコール依存症者たち」のカルト的マインドコントロール

2006年7月2日 - 7:31 AM by admin

別のところで書いた話に関連して、AA 批判のつづき。わたしはカルト自体が悪いとは思っていないのだけれど、カルトがポップ心理学や疑似科学的なものを使ってまともな療法を装っているのが危険だと思うので、こうした批判があるという事実を周知させることは無意味ではないと思う。AA についてもっとよく知りたい方は、AA 日本のサイトで「12のステップ」「12の伝統」「AA についての素朴な疑問」あたりも読み合わせて各自判断していただきたい。さらに一言付け加えておくと、わたしは AA はカルト的なマインドコントロールを使う集団だと思っているけれど、一度参加したら抜けられないという種類のカルトではないので、両方のサイトを呼んでそれでも判断が付かない人は一度参加して自分なりの結論を出せばいいと思っている。 Read the rest of this entry »