書類の性別欄をどう変えるかで悩むより先にするべきこと

2006年12月14日 - 7:34 AM by admin

知り合いの法学教授から、彼女が教えているロースクール(法学大学院)においてこのたびジェンダー自認及び表現 (gender identity and expression) による差別を禁止する内規が作られることになり、それに従い入学願書の性別欄をどうするかについても議論が起きているとのことで、意見を求められた。「gender identity and expression」というのは、性同一性障害の人やトランスジェンダーの人など、性自認やジェンダーのプレゼンテーションが生殖学的性別(に通常関連付けられているもの)と違う人たちの公民権を保証するためによく使われる用語で、つまりこの内規によって学生の入学審査や職員の雇用・昇進においてそういった人たちを不平等に扱かわないということになる。 Read the rest of this entry »

組織に無限の責任を負わせない「セクハラ対策」のあり方

2006年12月13日 - 6:55 AM by admin

普段見ないサイトだけど、偶然見てしまったのでコメント。 CNET Japan にブログの形で掲載されている「ギートステイト制作日誌」の最新号で、哲学者・批評家の東浩紀さんがいじめやセクハラ、ドメスティックバイオレンス(DV)といった文脈で最近関心を呼んでいる「精神的な暴力」という課題についてこういう発言をしている。 Read the rest of this entry »

女性運動の歴史の否定の上に成り立つ「ジェンダーフリー」概念の「豊かさ」

2006年12月12日 - 3:03 AM by admin

とりあえず今年の仕事は大方片付き時間ができたので、かなり前に取り上げ続編を予告しておきながらしばらく放置していた若桑みどり他編著『「ジェンダー」の危機を越える!』の話題に戻りたい。今回は第3部「バックラッシュに抗うまなざし」から伊田広行氏による文章「フェミニストの一部がどうしてジェンダーフリー概念を避けるのか」を取り上げる。「ジェンダーフリー」なんてもはやいまさらどうでもいいような気もしないではないけど、まぁ暇な人は読んでください。 Read the rest of this entry »

「加害者は決して完全悪ではない」こそ反DV運動の教訓

2006年11月30日 - 12:22 AM by admin

以下に報告するのは、以前から何度か話題のソースとしている某秘密主義ジェンダー研究系メーリングリストで過去数日にわたって続いたドメスティック・バイオレンス(DV)についての議論について。わたしと意見をたたかわせた相手の中心的な人はDVについての著書もある男性の学者なのだけれど、リストのルールによってリスト外での引用不可とされているので名前を伏せ、直接の引用は避けることにする。わたしは学術的な議論は公に開かれているべきだと思うのでこのメーリングリストには非常に不満があるのだけれど、貴重な情報源でもありルール違反を理由に追放されては困るので、「名前を出さない」「直接の引用はしない」というところまで妥協しちゃっています。 Read the rest of this entry »

米国の大学入学審査で「男性優遇措置」が行なわれる理由

2006年11月29日 - 12:24 AM by admin

山口智美さんのブログエントリ「学術会議のジェンダー関連シンポのフシギ」及び「アファーマティブアクションと大学についての雑感」に関連して、米国の大学において女子学生の割合が増えている件について。
米国の大学ではすでに女子学生が過半数を越えていて、むしろ「男子の学力低下が問題となっている」という話がコメント欄からはじまっていて、それに対して山口さんが「女性全体は良くても、他のマイノリティの要素が絡む場合どうなのか」という妥当な意見を書いているのだけれど、一つあまり知られていない事実がある。それは、「男性を救済するアファーマティヴアクション」は既に大々的に実施されており、しかもそれがアファーマティヴアクション反対派がおおいに批判する「クォータ制」という形式を取っているという事実だ。 Read the rest of this entry »

米国における障害者のためのパーソナル・ケア・アテンダント制度の問題点

2006年10月21日 - 12:27 PM by admin

前回に引き続き、過去にメーリングリストに流した文章の使い回しです。今回掲載するのは、米国の一部の州における障害者介護のためのパーソナル・ケア・アテンダント制度の現状について。アテンダントというのは障害者の身の回りの事を手伝う仕事をする人のことだが、バークレーで発足した自立生活センター (Center for Independent Living) からはじまった取り組みでは、政府から支給される資金を使ってサービスを受ける側のクライアントが自分に合ったアテンダントを選んで「雇う」ことができるという点が日本でも好意的に紹介されることがある。
しかし一方で、その利点が過大に解釈されて「アメリカにはこんなに素晴らしい制度がある」的に宣伝されることにも疑問を感じるので、わたしが身近で見聞きする問題点を挙げてみた。ただし、わたしはこの制度は基本的に良いと思っているので、その点は誤解のないように。日本での障害者自立のための取り組みへの参考とするのであれば、問題点も理解したうえでより優れた制度を作る方向に議論が進む事を望みます。 Read the rest of this entry »

3年前の『トランスジェンダリズム宣言』への感想ノートを公開

2006年10月16日 - 11:23 AM by admin

今回掲載するのは、3年前に米沢泉美ほか編著『トランスジェンダリズム宣言』を読んで某メーリングリストに送った感想。同じメーリングリストに参加していた執筆者の一人によって他の執筆者にも転送してもらい、いくつか反応もいただいた。かなり前の本だとはいえ、これからこの本を読む人のためのガイドにもなるんじゃないかと思ったのでごく一部だけ修正して掲載します。

というか、本来なら著者の田中玲さんからいただいた『トランスジェンダー・フェミニズム』の方の感想を早く書くべきなんだけど、いい加減に扱いたくないテーマだし、最近忙しく新しい記事を書くヒマがないので、ここを頻繁にチェックしてくださっている読者が離れて行かないように過去の文章を使い回してコンテンツにしておこうかと。内容は古くなっている可能性もあるのでご注意を。なお、書評というよりまさに「感想ノート」の状態なので、本書を読んでいない人には訳が分からないと思います。 Read the rest of this entry »

悲劇の意味をすり替えたバックラッシュ勢力:『ブレンダと呼ばれた少年』著者に聞く

2006年9月28日 - 4:04 PM by admin

以下に掲載するのは、『週刊金曜日』に先週(9月22日発売号)に掲載された記事「悲劇の意味をすり替えたジェンダー叩き勢力」の元原稿です。週刊金曜日の売り上げを落としてはいけないとウェブでの公開は一週間控えていましたが、既に同誌は次の号が販売されており、そもそも同誌の読者層とブログを読む層はあまり重ならないと思うので、元原稿を公開することにしました。 Read the rest of this entry »

井上輝子氏「『ジェンダー』『ジェンダーフリー』のつかわれ方」脚注に見る山口智美さんへの怨念

2006年9月12日 - 4:32 AM by admin

今年の3月に行なわれた「『ジェンダー』概念を話し合うシンポジウム」の内容をもとに編纂した「『ジェンダー』の危機を越える!ーー徹底討論!バックラッシュ」を著者の一人である上野さんからいただいた。とは言っても、たまたま他に送ってもらうものがあり、著者コピーが一部余っていたからついでに送ってくださったのだけれど、せっかくいただいたものを無駄にしないために気になった部分を何回かに分けてコメントしたいと思う。今回は和光大学教員で日本女性学会理事の井上輝子さんの「『ジェンダー』『ジェンダーフリー』のつかわれ方」について。 Read the rest of this entry »

『ブレンダと呼ばれた少年』と終わらないバックラッシュ言説の迷走

2006年9月4日 - 1:08 AM by admin

以下に掲載するのは、先月25日に世界日報に山本彰名義で掲載された記事「根拠失った小山エミ氏(フェミニスト)の本紙批判」への反論記事。もともと某誌のための原稿として書いたものだけれど、編集者の方と話し合った結果長さも焦点も異なる記事に書き直すことになったので、ボツとなった元原稿をここに公開することで世界日報への反論としたい。 Read the rest of this entry »