北米社会哲学学会報告6/同性婚論争と「トランスジェンダーの結婚」の合法性

2008年10月2日 - 7:55 PM by admin

学会でさまざまな発表を聞きながらとった35ページのメモを元に二ヶ月に渡って続けてきた「北米社会哲学学会」報告も、今回でついに最終回。連載を最後まで書き上げたこともそうだけど、二ヶ月後になっても自分が理解でき内容を思い出せるようなメモを書いた自分を褒めてあげたい。ていうか誰か褒めてよ! というのはともかく、今回は「同性婚」をめぐる論争に「トランスジェンダーの結婚」がどう関わるかを取り上げた発表を紹介する。発表者はハンボルト州立大学(カリフォルニア州)哲学部講師の Loren Cannon という人だが、かれはFTMトランスジェンダー当事者でもあり、ハンボルトで女性学を教えているわたしの友人の知り合いだったと後で分かった。 Read the rest of this entry »

北米社会哲学学会報告5/売買春、フェミニズム哲学、承認をめぐる闘争

2008年9月30日 - 8:33 PM by admin

だんだんネタの鮮度がさがってきて最初ほど面白くないという噂もある北米社会哲学学会報告、今回はともにキャサリン・マッキノンの思想とフェミニズム法哲学に関連した発表二件について。「Toward a Feminist Theory of the State」などの著作を読んでマッキノンの主張を理解している人は別として、彼女の主張を「反ポルノ、反売買春」の文脈だけで見聞きして、そのおかしな主張(ごめん)がどういう理屈で成り立っているのか不思議に思っている人には、簡単なマッキノン入門編になるかも。あと、フェミニズム法哲学の弱点を乗り越えるものとしてアクセル・ホネットの承認理論を元にした「承認の法哲学」なるものも登場する。 Read the rest of this entry »

北米社会哲学学会報告4/「死ぬ義務」と「精子バンク」をめぐる医療倫理

2008年9月28日 - 12:25 AM by admin

どんどん古い話になってしまってきているけど(学会あったの、もう2ヶ月以上前だよ)、あと少しなので北米社会哲学学会報告の続き。今回は生命倫理系の発表2つについて。具体的には、カリフォルニア教育大学ポモナ校の哲学部助教授 Michael Cholbi による「死ぬ義務」に関する考察と、アリゾナ州立大学哲学部の Shari Collins-Chobanian による「精子バンクの倫理」についての発表。 Read the rest of this entry »

DV研究×行動経済学−−ドメスティック・バイオレンス被害者が加害者の元に戻る理由

2008年9月27日 - 4:29 PM by admin

リチャード・セイラーとキャス・サンスティーンによる『Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness』の関連ブログ経由で、ブラウン大学経済学部の Anna Aizer と Pedro Dal Bó による「Love, Hate and Murder: Commitment Devices in Violent Relationships」という論文を知る。行動経済学とドメスティックバイオレンス(DV)を結びつけて論じる内容となれば、わたしが紹介しなくて誰がする(いやしない、反語)、ということで、ここに紹介してみる。結論に必ずしも納得しているわけではないけど、興味深いしDV研究で取り上げる価値は十分にあると思う。 Read the rest of this entry »

バラック・オバマ陣営の最高経済顧問オースタン・グールズビー講演要旨/金融危機問題

2008年9月26日 - 5:50 PM by admin

ここに掲載するのは、9月25日にリード・カレッジ(オレゴン州ポートランド)で行なわれたオースタン・グールズビー(シカゴ大学経済学部)の講演でわたしが取ったメモの内容です。言っている内容はそこらの経済解説記事とそれほど変わらないけれども、グールズビーが大統領候補のバラック・オバマ上院議員の最高経済顧問であることを踏まえ、「かれが」一般市民に向かってこういう説明をしている、という意味で情報としての価値があると思い、そのまま掲載します。講演後のQ&Aもあります。

なお、わたしは経済学は教科書で自習しただけであり、現実の金融界におけるぐちゃぐちゃな金融商品の話とかは全然分からないので、おかしな内容があるかもしれません。もしおかしな部分があれば、それは99%くらいの確率でグールズビーのせいじゃなくて、わたしのせいです。その筋に詳しい方のコメントを歓迎します。 Read the rest of this entry »

北米社会哲学学会報告3/フェミニズムによる中立国家リベラリズム批判

2008年9月5日 - 12:35 AM by admin

例によって病気になって数日寝込んでいたのと、ファイトバックの会の泥沼に足を踏み入れてしまったのと、地元ポートランドで怪しげな事態が進行中なのでそっちに関わっていたのと(これはいずれ書こう)、まぁいろいろあってしばらく報告が中断されてしまったのだけれど、いい加減自分の記憶が怪しくなりつつあるので北米社会哲学学会レポートを再開する。今回は、フェミニズム哲学によるリベラリズム批判の発表について。 Read the rest of this entry »

DVシェルター廃絶論−−ハウジング・ファーストからの挑戦

2008年8月30日 - 2:51 AM by admin

ドメスティック・バイオレンスを、私的な関係における私的なトラブルではなく、社会的な対策・介入を必要とする社会問題であることがはじめに主張されたのは、とくに英米両国における第二波フェミニズムの盛り上がりの中においてだった。当初は「バタード・ウーマン」(殴られた女性)という言葉で呼ばれていたそれが、広く社会問題として認知されるにつれ、より範囲の広い−−被害者を女性に限らないという意味だけではなく、精神的・経済的な拘束も射程にいれた−−「ドメスティック・バイオレンス」(DV)という言葉が採用されるようになった。そして米国における一九九四年の「女性に対する暴力法」、日本で二〇〇一年に施行された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」といった法的制度が整備され、また各地に被害者の保護とDV防止をよびかけるさまざまな支援団体や相談窓口も設置された。 Read the rest of this entry »

某ファイトバックの会ブログ、南北朝時代に突入&賞味期限偽装(違)

2008年8月9日 - 10:36 PM by admin

以前から遠くで生暖かく見守っていた某「館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会」(ファイトバックの会)のブログがかなりヘンなことになっている。まぁ以前からヘンだったのはたしかなんだけど、今度なぜかそのブログが分裂した様子。おかげで、わたしもそれこそなんのことだか訳が分からないタイトルを付けてしまった。カテゴリ「neta」も新たに作ったし。

旧ブログ: http://fightback.exblog.jp/
新ブログ: http://fightback2.exblog.jp/

なんなんだこれは。てゆーか新ブログのURL安直すぎ。 Read the rest of this entry »

北米社会哲学学会報告2/結婚制度、リベラリズム、中立原理の限界

2008年8月4日 - 9:09 PM by admin

前回に続き、北米社会哲学学会@ポートランド大学からの報告。会場で取ったメモは全部で35ページあるのだけれど、前回の記事ではたったの5枚分しか紹介しきれなかった。このままのペースだと何回続くか不安だけど、うまいことまとめて5回くらいにおさまるといいなぁと思っている。ていうか、もともとはそれぞれの発表について1段落でまとめるつもりで書き始めたのだけれど、哲学の発表を1段落にまとめるのはさすがに無謀だった。 Read the rest of this entry »

北米社会哲学学会報告1/性的指向、ホモフォビアと、ディスオリエンテーションの可能性

2008年7月28日 - 10:52 PM by admin

先週わたしは、ポートランド大学(わたしが以前講師をやっていたポートランド州立大学ではなく、カトリック系の私立大学)で開催された North American Society for Social Philosophy(北米社会哲学学会)の年次総会に参加した…というか、潜り込んで勝手に発表を聞いた。基調講演にも50人程度しか来ないような小さな学会であり、ほとんどの参加者はお互い何らかの面識のある同士でもおかしくないわけで、ネームタグも付けずに参加した部外者のわたしの存在は怪しまれていたかもしれない。でもせっかく参加したのだし、たまたま今年のテーマが「ジェンダー、平等、社会的公正」ありわたしが関心を持つ話題が多かったので、何回かに分けてそこで聞いた発表をいろいろ紹介したい。 Read the rest of this entry »