夫婦別姓を選ぶ権利「だけ」を求める団体の無規範なシニシズム

1/9/2006 - 5:04 pm | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

「外部での引用禁止」をポリシーとしているあるフェミ運動&学究系メーリングリストで関わっている議論について報告。ここはクローズドなリストだとはいえ、公的な運動や学究が目的のリストなんだから引用禁止にするのはおかしいんじゃないかと思うんだけど、ルールに違反したとして追い出されたら嫌なので固有名詞の使用や直接の引用は避けます(括弧でくくっている部分は引用ではなくすべて要約です)。問題となっているのは、夫婦別姓を選択できるような民法改正を目指している団体。これまでの同種の団体が民法上の婚外子の差別撤廃を夫婦別姓の実現をともに主張してきたのに対し、ここは夫婦別姓のみを訴える点が特徴なんだそうだ。

もともとこのメーリングリストにおける議論は、婚外子差別の問題に取り組んでいる人が「夫婦別姓だけに集中して婚外子差別を切り離すのはおかしいのではないか」と訴えたことにはじまる。わたしは婚外子差別の問題についてよく知らなかったのだけれど、その人によると第二次大戦後に「妾の子を正妻の子と同等に扱うのはおかしい」という女性議員の主張によって婚外子差別は民法に取り入れられたそうで、女性(だけじゃないけど)運動がふたたび婚外子差別を容認するようになることに懸念を抱くのはよく分かる。

それに対してこの団体の人は「婚外子差別を肯定しているわけではない」としたうえで、批判の目的で団体のウェブサイトの内容を無断で引用するのはやめろと言い出した。サイトに早速行ってみると、無断引用だけでなく無断リンクまで禁止と書かれており、特に別姓婚に反対する立場のサイトからのリンクは絶対にお断りみたいなことが書かれている。

もちろん、誰にでも見られるように公表されたものについて引用や参照(リンクはこれにあたる)を禁止する物言いは法的にも常識的にも全く無意味だけれど、これが個人の日記サイトとか仲間うちのサイトであればまだ分からないでもない。でもここで問題になっているのは、社会に何かを訴えかけて法律の改正を実現しようという政治的な運動をやっているサイトなのよ。もしかしたらかれらは自分たちの主張がデタラメだから紹介されたら困ると思っているのかもしれないけれど、だったらなぜわざわざサイトを作るんだ。とゆーか、紹介されて困るようなこと書くなよ。まったく、一体何を考えているんだか。

そのことについて聞いてみると、なんでも最近は保守陣営による悪質な中傷によってフェミニズムやジェンダーに関する運動を貶めようとするバックラッシュがさかんだから、それからの防衛措置としてリンクや引用を禁止しているらしい。えーなんですかそれー? 保守派にリンクや引用をしないようにお願いしたら攻撃してこないとでも? フェミニズムの書籍にも性教育の教材にもみんな「引用・参照禁止」と書いておけば批判されないわけですか? だいたい、かれらが不当な引用で文意を捩じ曲げたりすることがあるからこそ、どうせ批判されるのであればきちんとリンクしてもらって読者が批判の妥当性を判断できるようにして欲しいとは思わないのかな。

だいたい、政治的な運動をやろうという団体が、批判を恐れてどうする。賛同者も反対者もお互いに引用・リンクしあって議論をすることで、より妥当かつ説得力のある意見が大勢を占めるようになり、必要なら法改正は実現に近づくはず。議論もせずに、あらかじめ賛同している仲間だけで何かを実現しようだなんて、そんなのうまくいくわけがないじゃん。

ここのサイトをよく読んでみると、夫婦別姓による利点として「事実婚が減り、婚姻制度や戸籍制度の形骸化が防げる」みたいなことばかりが並べられていて、全体的に「やむを得ない理由で別姓を必要としている人たちがいるので、別姓を認めるべきだ」という主張が繰り返されている。そこからは、「個人や家庭がそれぞれの生き方を選択し、それぞれの幸せを追求する」ことへの肯定的な態度は一切読み取れない。ものすごく保守的な団体だ。

ところがこの団体の人は、自分たちはそのような保守的な価値観を主張しているわけではないと言う。なんでも、かれらは保守政党の力を借りて民法改正を実現するための戦略として「婚姻制度や戸籍制度の防衛」といった主張を掲げているのであって、本心では「個人の幸せの追求」の理念に賛同しているらしい。そして、わたしがサイトを見て「保守的な団体だ」と感じたとすれば、かれらの戦略がうまくいっている証拠だという。

わたしも常々「戦略」の重要さは主張しているし、戦略的な理由から本来言いたいこと(例:性犯罪者をその他のひとから切り離されたまったく別種の人間であると見なすべきではない)ではなく目の前の目的(ミーガン法の阻止)のためにより有効な別のメッセージ(ミーガン法は効果がなく、第三者に迷惑)を掲げることはある。でも、戦略のためなら何を言っても良いと考えるようなシニシズムはわたしにはできないし、認めたくもない。最低限、自分がコミットしている倫理的判断に反するようなことは、いかに「戦略」であってもやるべきでないというか、よほど相当な緊急性でもない限り避けるべきだろう。

例えば、マイケル・ムーアが「華氏911」でやったように、ブッシュ政権とサウジアラビアの富豪との癒着を批判するために、アラブ人を差別的に描写して良いのか。できるだけ性指向を理由とした雇用差別を禁止する法案を通したいからといって、トランスジェンダーの人たちの権利をおざなりにして良いのか。憲法24条における「両性の平等」原則を守るためであれば、その条文が異性愛中心主義的であるという事実を黙認して良いのか。

夫婦別姓の問題について言うと、「事実婚を減らし、婚姻制度を守ること」が夫婦別姓の目的の1つであるとするなら、同姓・別姓に関わりなく事実婚を選択した人たちや、婚外子への差別や偏見は肯定するのか。婚外子への民法上の差別を肯定する論理として「『区別』を温存することが事実婚増加への歯止めとなり、婚姻制度の維持に役立っている」という主張も聞かれるのが現実であり、これは架空の話ではない。夫婦別姓を推進する運動自体が、婚外子差別を強化することは十分にあり得る。「婚外子の差別を肯定するつもりはない」と言いながら、かれらの行動はその思想に反する帰結をもたらしている。まったくもう、これだからシングルイッシューの団体はどこもかしこもダメなんだ。

また、この団体の人は、婚外子差別撤廃などを同時に主張するよりリベラルな団体とは協力関係を持ちたいとしたうえで、夫婦別姓を求める運動の内部に、保守からリベラルまで多様な手法やアプローチを取る団体が混在するのを認めるべきだと言う。これなど一見もっともな主張だけれど、わたしはこの団体が保守的であることを批判しているのではない。本心では「個人の幸せ」を重視すると言いつつ、「戦略」として保守的な立場を取ってみせる、そのために「個人の幸せ」を裏切るような行為を取ることも厭わないという無規範性やシニシズムを批判しているのね。

もしかれらが本心から保守主義者なのであれば、婚外子差別(保守派に言わせれば「区別」)の是非について議論することができる。ところがこの団体は、本心では婚外子差別を肯定しているわけではないのだから批判してくれるなと言うのね。まったくタチが悪い。第一、もしかしたら実は本当に保守派の団体で、「本心では婚外子差別を肯定しているわけではない」というのがわたしの批判をかわすための「戦略」かもしれない。いずれにせよ、その場その場の都合で口先だけ何とでも言えるような団体は議論の相手にすらならない。

悪いけど、この団体のサイトを読めば読むほど夫婦別姓選択制のような中途半端で保守的な「改革」によって問題意識が「ガス抜き」されることを許してはいけないという気になってきた。もし「それぞれの個人や家庭が自由に選択し、それぞれの幸せを追求する権利」を最優先に考えるなら、人の名前なんて原則自由に本人が決められるようにするべきだとわたしは思うもの。

もちろん、いきなりそういう抜本的な改革を声高に主張しても効果がないというのは分かっている。だから、別に声高に主張しなくてもいいから、もし本心では「個人の幸せ」を重視しているというのが本当であるなら、夫婦別姓の利点の1つとして「それぞれの個人や家庭の選択肢を増やし、かれらがそれぞれの幸せを追求できるようになる」というのを一番最後あたりにでも書き加えてもらえないかな。保守政党の政治家だって、かれらが考えるほど頭の固い人ばかりじゃないと思うよ。

18 Responses - “夫婦別姓を選ぶ権利「だけ」を求める団体の無規範なシニシズム”

  1. tn Says:

    What’s in a name? That which we call a rose, by any other name would smell as sweet.

  2. tn Says:

    ちなみにこのセリフ、坪内逍遥は「名が何じゃ?」と訳したけれど、
    13歳の少女ジュリエットがそんな言葉遣いするわけないわな(汗)

  3. macska Says:

    > That which we call a rose, by any other name would smell as sweet.

    “Not if you call it stinkbud.” – Bart Simpson

  4. 枡野浩一 Says:

    初めまして。歌人の枡野浩一です。
    このサイトに、
    私の名前で書き込みをした人がいるというのは、
    ほんとうでしょうか。
    http://d.hatena.ne.jp/o-tsuka/20060111
    こちらの日記を見て、
    ここのブログには初めて来ました。

  5. 枡野浩一のかんたん短歌blog powered by ココログ Says:

    ニセ枡野浩一の出現?

    こんな日記を拝読しました。 しかし、 私にはまったく身の覚えのないことです……。

  6. macska Says:

    以下のようなメールを枡野浩一氏に送りました。

    枡野さま

    はじめまして、macska dot org というブログを運営している者です。

    先日、偽の「枡野浩一」がわたしのブログにあらわれてコメントを書き込んだのは事実です。書かれた内容は、枡野さんがペンネームの是非について書いていた内容で、それを夫婦別姓の議論に持ち込んだわけですから当然話が合わず、ほかの読者から厳しく批判されました。

    ところがその後、同一人物(同一の IP アドレスを持つ人物)が枡野さんのサイトの URL を貼付けるという行為に出たため、気になって調べてみたところ、その人が使っていたメールアドレスが不正なものであると判明したので、その時点で該当記事は表示しないようにしました。

    さらに調べてみたところ、同じ人物がわたしのブログの別の記事を、わたしの名前を騙って歴史評論家の別宮暖朗氏の掲示板に貼付けたうえ、それに別宮氏が反論したものをかれの名でわたしのブログのコメント欄に書き込み、さらにわたしがそれが騙りであることに気づかずに再反論すると、こんどはそれを別宮氏の掲示板に書き込みました。そうすることで対立を煽って楽しんでいるようです。

    まず、最初に枡野さんの名前を騙って投稿されたコメントは以下の通りです。なお、時間は米国西海岸時間です。

    > 名前 : 枡野浩一
    > メールアドレス : mass_no@tolk.to
    > IP : 219.105.45.178
    > 日時 : 01/09/2006 @ 17:44pm
    >
    > 私は、
    > 「自分の力ではどうにもならないことがある」
    > と認めることからしか、
    > どんな表現も、
    > どんな人生も始まらないと思っています。
    > 繰り返しますが、
    > 「自分の力ではどうにもならないことがある」。
    > 親につけられてしまった本名を受け入れて生きていくことも、
    > そのひとつだと思っています。
    > 私は、
    > 「自分の力ではどうにもならないことがある」
    > と認めることからしか、
    > どんな表現も、
    > どんな人生も始まらないと思っています。
    > 繰り返しますが、
    > 「自分の力ではどうにもならないことがある」。
    > 親につけられてしまった本名を受け入れて生きていくことも、
    > そのひとつだと思っています。

    次の記事

    > 名前 : 引用元でございますの。
    > メールアドレス : mass-no@tolk.to
    > IP : 221.117.83.34
    > 日時 : 01/10/2006 @ 03:17
    >
    > http://masuno-tanka.cocolog-nifty.com/blog/2005/01/post_4.html

    IP アドレスですが、前者は DCN <http://www.dcn.ne.jp/>、後者は USEN/Broadgate <http://ftth.gate01.com/&gt; です。もし苦情を届けるなら、このメールを添付してこれらのプロバイダに連絡を取るのが良いと思います。

    このメールは、読者の誤解をとくためにわたしのブログのコメント欄にも掲載します。枡野さんの側で公開されても構いません。どうもお騒がせしてすみませんでした。

    macska
    http://macska.org/

  7. 枡野浩一 Says:

    ご丁寧な対応、
    ありがとうございました。
    今後の対応はまだ考えていませんが、
    とりいそぎお礼まで……。

    枡野浩一

  8. macska Says:

    さっきMLを読んでると、この記事で批判されている団体が何か言ってました。
    なんでも、この記事はかの団体を「中傷」しているんだそうだ。具体的な反論は一切無し。
    一体何考えてるんだろうね。
    政治に働きかけて法を改正しようとしている団体の公式見解を批判しても、中傷のわけがないじゃん。
    なんでそんなに民主主義が嫌いなのかなー。

  9. たんぽぽのなみだ~運営日誌 Says:

    無規範なシニシズム(3)

    それじゃあ、「無規範なシニシズム」は、 反対論者たちを過小評価しているから、 事情を知らない部外者の、的外れな言いぶんかというと、 そんなことはまったくないと思います。 市民団体の体質について、核心を突いていて、これを見て、 わたしは、「やはりそう思うか.…

  10. 井上良一 Says:

    私は、非嫡出子差別解消「だけ」を求めています。

  11. 井上良一 Says:

    「戸籍は、非嫡出子の権利保護に関して有用である(その1、2) −夫婦別姓運動の幼稚な主張を批判する−」
    「夫婦別姓化は 、非嫡出子差別を強化する(その1、2)」
    http://&#103eocities.yahoo.co.jp/gl/cgymb048/view/200608

  12. 井上良一 Says:

    神道をずいぶん嫌っておられるようですが、天皇制は非嫡出子を差別していないと思います。
    歴代天皇の半数近くが非嫡出子であり、明治天皇や大正天皇も非嫡出子でした。
    戦後の婦人運動が、法律婚主義を唱えて非嫡出子に対する差別を強化したことを考えると、私にとっての敵は、天皇制ではなく女性運動です。
    夫婦別姓運動も、その差別意識に満ちた戦後婦人運動の延長上にあるといえますし、全く非嫡出子とは利益相反するものです。
    夫婦別姓運動は別姓化だけを考えればいいんじゃないですか?その方が、差別的な本音を隠して非嫡出子を利用するよりなんぼかましです。
    非嫡出子は非嫡出子の権利だけを考えるのが当然だと思います。
    非嫡出子による、非嫡出子のためのホームページ
    http://www.&#103eocities.jp/cgymb048

  13. ムー Says:

    わたしも婚外出生者の差別解消のみを求めます。
    夫婦別姓論者には散々利用され、踏みにじられ、馬鹿にされ、差別されてきました。
    それに賛同した婚外出生者の母たちも大嫌い。

  14. 武田 めぐみ Says:

     私は非嫡出子の相続権が嫡出子の2分の1というのは実におかしい、整合性に欠けると思っています。私は結婚歴なし子供なしですが、経済的に成功して純資産数億円を1代で築きました。
     相続について弁護士に相談したところ、私には異母兄弟が4人、同血の姉が一人います。びっくりしたことに、半血の兄弟にも同等の相続権があるを知りました。
     兄弟は全て嫡出子ですが、仮に私の母が法立婚をしていなかったとしましょう。一緒に育った同血の姉は非嫡出子となり、私の財産の相続権は、見たこともない異母兄弟の半分になります。
     こういうケースも考えられます。私が法立婚をする前に妊娠し、その子の父が死んでしまったら、永遠にその子は非嫡出子です。そして私が後結婚し、子を産んだらその子は嫡出子です。兄弟として一緒に育っても、非嫡出子は私の財産の相続権は半分になります。
     その他、認知は子、母親からは拒否できません。仮に父親がダメ男で金に困窮している状態であるならば、認知することにより、子に親の扶養義務が生じます。この扶養義務は嫡出、非嫡出の差は規定されていません。また、非嫡出子が経済的に成功し、配偶者、子がない場合は、認知した親の相続権は嫡出子の親と同じです(古い話ですが、山口百恵が芸能界で成功したら、認知していない父親が名乗りをあげました)。
     非嫡出子の差別規定は、非嫡出子が二号、愛人の子との蔑み(すいません)が根底にあり、父親や正妻より一段劣っているとの思いこみがあります。事実婚や女性が子が経済力があるなど色々なケースが考えられるので、非嫡出子に対しての規定は即時撤廃すべきと思います。いずれにしても出生により、子を差別するのは人権上、妥当とは思いません。

  15. まいこ Says:

    わたしもムーさんと一緒で、非嫡出子の差別撤廃のみを求めています。

  16. nanami Says:

    夫婦別姓の実現「だけ」を求めて何か悪いんですかね?
    自分達にとって、切実な問題のみを考える事に何か問題が?
    チベットに行って「パレスチナ問題も考えろ」「沖縄の事も考えろ」と言っているのと同じですよ。
    どうも見た所、婚外子の状況を温存する考えの人は夫婦別姓にも反対の人が多く、夫婦別姓に賛成の人は婚外子問題にもこだわる人が多いようで困ります。
    両者はセットでなくてはいけないんですか?どっちか否定して、どっちか肯定したらいけないんですか?

  17. macska Says:

    nanamiさん、

    夫婦別姓の実現「だけ」を求めて何か悪いんですかね?
    自分達にとって、切実な問題のみを考える事に何か問題が?
    チベットに行って「パレスチナ問題も考えろ」「沖縄の事も考えろ」と言っているのと同じですよ。

    わたしも、実はこの団体とのやり取りの前は、それぞれ自分たちにとって切実な問題だけ関わっていけばいいんじゃないか、と思っていました。いまでも、この団体が夫婦別姓だけに取り組んでいること自体は非難するつもりはありません。

    わたしが問題だと考えるのは、夫婦別姓だけに取り組んでいることではなく、夫婦別姓の実現というたった一つの目的のために、より大切な倫理的判断を売り渡し、他の人たちが別のところでやっている取り組みの邪魔をしている点です。タイトルにある「夫婦別姓を選ぶ権利『だけ』を求める団体」という部分をわたしは批判しているのではなくて、「無規範なシニシズム」の方をわたしは批判しているのです。

    たとえるなら、チベット人がチベットの問題だけを訴えるのは結構ですが、チベットこそが世界で最も迫害されていると言うためにパレスチナや沖縄なんて大した事ないと言い出したら、それはおかしいでしょう? もっとも、チベット人活動家たちがそんな発言をしても影響はないでしょうが、夫婦別姓について取り組んでいる人の発言というのは、政治家にも支持者は少なくないですし、婚外子問題への影響も大きいのです。

  18. sss Says:

    現代の日本は慢性的な少子化によって今後大幅に労働人口が減ることが確実視されている一方で、高齢化が進むため、近い将来、日本が破綻する危機にあります。これに対応する策として、ダイレクトに少子化を抑制する試みが行われては来ましたが、さほど効力をあげていません。一方、別の方策として、男女共同参画を進めることによる労働人口増加によって、これらの問題を小さくすることも考えられてきていますが、これまでのところ、抜本的な解決がなされているとは言い難い状況にあります。これに対して、大きな突破口として考えられるのが夫婦別姓法案ではないでしょうか?
     大きな理由は2つあります。一つ目の理由は、女性が結婚・育児後も働くにあたっての働く意欲を考えた時、夫婦別姓は不可避、ということです。いかに通称利用が認められたとはいえ、それはあくまで通称利用であり、家庭での名前と職場での名前の遊離は、働く意欲を大幅に減退させるものです。夫婦別姓により、自己の名前を使用し続けることができる、というだけで、男女共同参画の推進を大幅に強化できることは想像に難くありません。さらに、それによって結婚や育児後も働く女性が今後増えれば、直接は関係のない夫婦同姓を望む女性も、社会進出を促すことでしょう。女性も働くことが常態化することで、家庭の家計もより安定化し、より多くの子供を望む家庭が増えることが期待できます。実際、米国等、夫婦別姓を認める国では、女性が結婚後も働く率は多く、それが労働人口減および少子化阻止につながっています。
     もう一つの理由は、結婚数の増加への貢献です。そもそも少子化の理由の一つが結婚の減少にあります。これに対しても、夫婦別姓を認めれば、そのことが理由で結婚できなかったカップルだけでなく、その他の多くのカップルに対しても、結婚への心因的なハードルを下げることができ、それによって、少子化を踏みとどませることができると考えられます。
     それ以外にも、個人の尊重、男女同権等の観点からも、夫婦別姓法案への要望は今後も増えていくことは確実ですが、やはりそれよりも、日本の財政・経済状況を考えれば、夫婦別姓法案の実施は、待ったなしであると言えるのではないでしょうか?もちろん、他にも、保育事業等の充実化など、必要なことは多いでしょうが、それらはあくまで地道な努力が必要な事業です。それに対して、夫婦別姓法案は、大きな日本の突破口となるものではないでしょうか?

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