小谷野敦さんによる「はてなキーワード『ジェンダー』項目」の間違い

9/6/2005 - 9:24 am by macska このエントリーを含むはてなブックマーク

現在実験中の掲示板 @ macska.org の方に「まな」さんから情報提供。以前「はてなキーワード」における「ジョン・マネー」の項目があまりにヒドかったので、なんばさんに手伝ってもらってより充実したものに修正したのだけれど、今度は「ジェンダー」の項目におかしな記述が。

本来は、フランス語、ドイツ語などに見られる名詞の「姓」のこと。
最近では、歴史的・文化的・社会的に定義される男女の差。状況や背景により定義は異なる。
生まれつきの性別による男女差(性差、sex)とは区別される。
とされているが、セックスとジェンダーが異なるという議論は、ジョン・マネーが、男児を女児として育てるのに成功したという人体実験に基づいていた(『性の署名』)が、その実験が失敗であったことは既に明らかにされているので、従来通りのジェンダー理解は通用しない。


本来は文法用語だった、というところは事実だから良いとして、「セックスとジェンダーが異なるという議論は、ジョン・マネーが、男児を女児として育てるのに成功したという人体実験に基づいていた」というのはもちろん間違い。セックスとジェンダーの区別は「双子の症例」よりずっと以前に考案されたものであり、「双子の症例」によって否定されたジョン・マネーの主張は「生後18ヶ月までの子どもの性自認は手術と社会化によって変更できる」というものだけ。

「とされているが」以降を書き足したのは小谷野敦という人らしいのだけれど、ちょっと前まで「ジェンダーフリー批判」をしていた人たちが、最近では「ジェンダー」概念そのものにまで標的を広げてきているのね。それにしても、なんでもかんでもジョン・マネーのたった1件の症例に依存しているみたいな言い方はおかしいし、小谷野さんみたいなプロの学者・評論家の人にこんな浅ましい「はてなキーワード」利用はしないで欲しかったな。ジェンダー概念のおかしさを主張したいなら、他にもっとマトモなやり方がありそうなモノだし。

で、やっぱり放っておけないから直したいと思う。「とされているが」以降は事実としても間違いだし、内容的にも本題とあんまり関係がなさそうなので丸ごと削除してしまっても構わないような気もするんだけど、それじゃ反対論者に「自分たちに都合の悪い情報を削除したんだろ」って言われてしまいそうなので(都合悪いからじゃなくて、ただ単に間違いだからなんですが)、やっぱり前回と同じく「誰にも文句の言えないくらい、充実した記述」で対抗するしかないかな。具体的な文案については、掲示板のほうで議論していこうと思うので、感心のある方は以下のアドレスまでどうぞ:

http://macska.org/forum/YaBB.cgi?board=gender;action=display;num=1125988918

あと、小谷野さんの見解も聞きたいので、かれに連絡が取れる方がいたら、メールしてここの議論のことを教えてあげてください。小谷野さんが「あれは言い過ぎた、間違いだった」とご自身で反省して訂正されれば、それで済む話でもあるわけですし。

ついでに、同じく掲示板からの話題。 youlala さんからの情報によると、わたしが以前書いた「『ブレンダと呼ばれた少年』の政治利用は間違い」という記事が2ちゃんねるで叩かれているというハナシ(笑) 以下、関係するコメント:

61 :名無しさん 〜君の性差〜:2005/05/03(火) 20:53:19 ID:gydW5SRZ ?###
>>9について
http://macska.org/index.php?p=84

こういうこと言ってる人も居るんだけど、実際どうなの?

62 :フェミ政策の末路は悲惨:2005/05/04(水) 13:00:18 ID:e6eBriUN
>>61
見事に論理のすり替えがなされている。

日本式フェミニズムやジェンダーフリー教育が、いかに非合理なものであるかは
今後、歴史が明確に証明してゆくところであるが、一言、大多数の女性やマトモな
人々はジェンダーフリーなんて全く望んでないって事。

女性らしさ、男性らしさは=(イコール)「人間らしさ」だって事。

人々が幸福に暮らせていた古き良き日本に戻すべきなんだ。

64 :名無しさん 〜君の性差〜:2005/05/04(水) 14:52:15 ID:eYCYrkTP
それに確かmacskaは有名なフェミだろ
今更逃げてんじゃねえよw

いつの間にか「有名なフェミ」にされてしまったあたりが面白いのだけれど、この関連のお話はこちらでどうぞ:

http://macska.org/forum/YaBB.cgi?board=gender;action=display;num=1125951074

22 件のコメント - “小谷野敦さんによる「はてなキーワード『ジェンダー』項目」の間違い”

  1. rna のコメント

    >小谷野さんが「あれは言い過ぎた、間違いだった」とご自身で
    >反省して訂正されれば、それで済む話でもあるわけですし。
    たぶん無理です(わらい)
    吉原の遊女の平均寿命の件でこれだけモメた実績がありますし…
    http://home.interlink.or.jp/~5c33q4rw/nikki/2002_09.htm#25

  2. トニオ のコメント

    小谷野先生ですかぁ……怖いなぁ………
    小谷野先生はこういう場合でも名を名乗れ、とおっしゃるんでしょうかね?
    なんせ、匿名批評を認めてらっしゃらないそうですから。

  3. Macska のコメント

    Macskaってのは、匿名どころかもう10年以上も前から名乗っているペンネームなので、通称として認めて欲しいところなんですけどね。

  4. 小谷野敦 のコメント

    もちろん匿名は認めません。最終的には「死んでしまえ」と言われても仕方がないのが匿名だと考えています。なお雑誌等で匿名批評がある場合は、雑誌の編集人が責任者であり、その住所が記されているわけですから、住所が記されていれば匿名でもいい、ということになります。
     さて、私が問題にしているのは、ジョン・マネーの実験例は、小倉千加子の『セックス神話解体新書』という広く読まれている本が依拠しているものであり、最近のジュンク堂書店の「うえの・ちづこ書店」でもこの本は推薦されていた、といったことです。つまりこうした人たちは、自らの誤りを認めようとしていないということ。もし、上野・小倉を批判し、新しいジェンダー概念を規定している著書ないし論文があるなら教えてください。

  5. 小谷野敦 のコメント

    なお私は「ジェンダーフリー」という言葉を批判したことはある。もしジェンダーからフリーになるべきならば、あらゆる人はバイセクシャルになるはずだろう、とね。「ジェンダー・バイアス・フリー」なら分かるが、それは「男女平等」とどう違うのか? 「男女平等」を「ジェンダー」という言葉で言い換えなければならない必然性というのはあるのか、ということを問題にしているのです。

  6. 小谷野敦 のコメント

    「考案された」という表現が気になるんだがね。「発見された」なら分かるのだが、それだと、非科学的な匂いがする。戦略のために発明した、みたいな。

  7. トニオ のコメント

    あ、どうも、小谷野先生。ぼくはトニオっていうケチなもんで。
    実名のほうは先生らしきアカウントのmixiのひとに知らせるかたちでよろしいでしょうか?
    いやもう、先生のありがたい御言葉の下にぼくの貧相な名前を並べるだなんて僕にはとてもとても畏れ多くて。
    それにしても、先生の言動にはいつも感銘を受けておる次第でして。
    いやでも、質問というか愚問なのですが、
    >もし、上野・小倉を批判し、新しいジェンダー概念を規定している著書ないし論文があるなら教えてください。
    というなるほどごもっともで実に正しい御指摘だと思うのですが、
    例えば、ジェンダー論者が屁理屈をこねて、
    「上野・小倉を批判したところでマネーの実験はジェンダーを否定したことにはならない。」
    なんてぬかしていたら、はっ倒す前になんて論駁してやればいいのでしょうか?

    それからもう一つ愚問を失礼させていただいて、
    >もしジェンダーからフリーになるべきならば、あらゆる人はバイセクシャルになるはずだろう、とね
    とまたこれも全てのフェミニストなる輩どもを一列に並ばせて正座させて端から聞かせたいようなお言葉なのですが、
    これまた敵もさるもので、また巧妙に屁理屈用意しやがって、
    「ジェンダーは文化的な性差でセックスという肉体的な性差とは違うのだから、『あらゆる人はバイセクシャルになる』というのは明らかにおかしい。それに、ジェンダーバイアス、とは言わずとも、すでにジェンダー自体が文化的な差を表しているのだ。さらに、『男女平等』ということばにまったく社会構築物としての『性差』への解消の意志が表れていないではないか』
    なんてぬかしてきたら、これもビンタの一つでも食らわせて抱く前に、なんと論破してやればいいんでしょうか?
    御教授いただけたら幸いです。七重の腰を八重に折り、ぜひともよろしくお願いします。では。

  8. 英語が得意 のコメント

    小谷野さんて英語が不得意みたいですね。 某掲示版からのコピペ:

    http://www.ittsy.net/academy/instructor/atsushi2_3.htm
    >> 「コンプレックス」という英語は、日本ではかなり奇怪な運命を辿っている。まず、ご承知の通り、「インフェリオリティー・コンプレックス」の略として使われたために「劣等感」という意味になってしまった。

    アフォ!  英語でも complex は「劣等感」(Inferiority Complex)と同義なんだよ。

    そういう用例 http://www.bbc.co.uk/bbcthree/hercules/athletes/keith_longney.shtml
    Keith says he has a strong mental attitude, which helps him succeed, and is very resourceful when it comes to competing. He has a complex about his size and worries about competing with younger and taller athletes.

    >> 本来は「複合物」なのだが、何も複合していなくても「劣等感」の意味で「コンプレックス」と言う例は、枚挙に暇がない。

    アフォ!  「劣等感」は常に、複雑かつ感情的に複合されておるだろうが!(ユング、アドラー)

    complex:
    1 : a whole made up of complicated or interrelated parts ・・・
    2 a : a group of culture traits relating to a single activity (as hunting), process (as use of flint), or culture unit
     b (1) : a group of repressed desires and memories that exerts a dominating influence upon the personality

    >> かくして「コンプレックス」は、一方では劣等感を、一方では愛着を意味する不思議な輸入語になったのである。

    アフォ!  英語でも complex は、そういう両義的な意味なんだよ。

    complex
    Psychoanalysis:
    (a) a group of mostly unconscious impulses and attitudes toward something, strongly influencing behavior
    (b) loosely, an obsession (執着、強迫観念)

    日本の大学の英語教師には、小谷野程度の英語力しかない者も多いが・・・

  9. 小谷野敦 のコメント

    トニオくん、学問は政治的プロパガンダではないのだから、下の意見は論外。なお下の卑怯者よ、英語のコンプレックスは、嫌悪感、強迫観念、といった意味である。「マザコン」にそういう意味があるか? またその用例は、「劣等感」ではなく「脅迫的嫌悪感」である。アタッチメントの意味はない。かつ、ユングもアドラーも今や学問として認められてはいない。ユングは最初からオカルトだがね。

  10. 小谷野敦 のコメント

    何が某掲示板だよ。2ちゃんじゃねえか。人間のクズの溜まり場。

  11. 小谷野敦 のコメント

    トニオくん、ミクシィでのメッセージ、どうぞ。待ってますから。ところで、「かれに連絡が取れる方がいたら、メールしてここの議論のことを教えてあげてください」と言ったご当人はどうしたのかな。今日は用事? 私の直メは新耀社から出ている本には漏れなく書いてあるから、直接どうぞ。

  12. macska のコメント

    こんにちは、その当人です。はい、用事でした(会議出席のためにシアトルに2日間行ってました)。
    で、2時間ほど前に帰宅して、夕食を食べメールを読んでいたところです。
    返事は明日(月曜日)中に新しいエントリで行うので、少々お待ちください。

  13. トニオ のコメント

    いやぁどうも、小谷野先生、御返答がいただけて光栄です。
    mixiでメッセージを送らせていただきました。
    それであの、
    >学問は政治的プロパガンダではないのだから、下の意見は論外。
    とのことですが、実に正しいおことばでフェミニストの勘違いを一言で表しているような内容ですが、
    例えば、ちょいとフランス思想なんぞをはなにかけたフェミニストが、フーコーなんかを引き合いにだして
    「『知=権力』というフーコーの視座からすれば、学問というのは極めて政治的なものにならざるをえないではないか」
    などとぬかしてくるとなるとどうでしょう?

  14. 小谷野敦 のコメント

    トニオくん、実名はミクシィのほうで聞いたので、君は人間扱いします。その問題は『すばらしき愚民社会』に書きましたが、要するにポストモダン的相対主義で、「絶対的・客観的真実はない」という真なる命題から、「絶対的・客観的真実を追究する必要はない」という偽なる命題を引き出した例で、フーコーは歴史家として評価できても、そういった仕事は単なるイデオローグの仕事であって、学問ではありません。なおこの点は、掛合英紀『学問とは何か』がさらに詳細に論じています。

  15. トニオ のコメント

    いや、織り込み済みの議論だったんですね。失礼しました。
    『すばらしき愚民社会』も読まなければなりませんね。宿題が溜まっていく感じです。
    >「絶対的・客観的真実を追究する必要はない」という偽なる命題を引き出した例
    なるほど、確かにそうかもしれませんが、実にトリヴィアルな質問が許してもらえるのなら、
    フーコーの晩年においては、パレーシアという概念をあげて、
    愚民的な空談から「自己への配慮」によって練り上げられた主体としての「真理」を語る方法を提示しようとしたのですが、
    そういったポストモダン的な(アレント的な『人間の条件』といったものなど)「真理の方法」もその議論は視野にいれてらっしゃるのでしょうか?
    いや、かなり愚問かもしれませんが、御容赦いただきたい。

  16. 小谷野敦 のコメント

    トニオくん。全然興味ありません。ポストモダンはもう学問として破産しています。『バカのための読書術』をお読みください。

  17. Macska のコメント

    ところで、不必要に他人に漏らさないと約束していただけるのであれば、
    わたしも本名・住所・電話番号を小谷野さんに明かす準備があります。
    不必要に、というのは、例えば訴訟手続きのために記入が必要などといった場合を除いて、
    他者に一切漏らさないという意味に解釈してください。
    つまり、わたしの意見を引用したり批判するうえでは、あくまで通称を使うということです。

    この条件で良いから「よし、教えろ」という事であれば、わたしにメールをください。
    わたしは小谷野さんの著書を持っていませんし、ミクシィにも参加していないので
    こちらからメールを送る事ができないのです。

    どうしてこういうオファーをするかというと、わたし自身、匿名な相手との議論は嫌だからです。
    ただし、わたしの場合、特定のペンネームなり通称を一貫して名乗る相手であれば、
    必ずしも本名を知らずとも構わないという点では小谷野さんほど徹底していません。
    要するに、相手を一貫した主体として扱えるのであれば、それで良いという考え方です。

    小谷野さんはその辺りがもう少し厳しくて、
    「一貫したペンネームというだけでは主体として認められない」というお考えなのでしょう。
    そうした立場もそれなりに理解できるので、両者の立場の妥協として、
    「小谷野さんに対してのみわたしの実名を明らかにする」という形で納得していただけるのであれば、
    そういう形にしたいというのがわたしの希望です。

    議論の内容については、今こちらの時間で朝の8時ですが、今日中にお答えします。

  18. トニオ のコメント

    愚問だったようですね、失礼しました。

  19. 清水晶子 のコメント

    清水と申します。これで実名ということになるでしょうか。
    (いや、実名ですけれども、著名人ではないので
     あまり実名の価値がないなと思って。)

    色々とうかがいたいところはあるのですが、
    基本的にはMacskaさんにお任せして、一つだけ。

    >もしジェンダーからフリーになるべきならば、
     あらゆる人はバイセクシャルになるはずだろう

    私もジェンダーフリーという言葉は好きではありませんが、
    とりあえずジェンダーからフリーになるというのを
    ジェンダーという指標を持たないという意味でとるならば
    あらゆる人はバイセクシュアルではなく
     (「バイ」の根拠が消滅することになるので)
    ただのセクシュアルになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

  20. Macska のコメント

    返事書きました。
    http://macska.org/index.php?p=105
    議論の続きも、そちらでお願いしますです。

  21. のコメント

    オモスレー
    ほいよコンプレックス:
    a particular anxiety or unconscious fear which a person has, especially as a result of an unpleasant experience that they have had in the past or because they have a low opinion of their own worth, and which influences their behaviour
    http://dictionary.cambridge.org/define.asp?dict=CALD&key=15667&ph=on

  22. PukiWiki/TrackBack 0.2 のコメント

    ジョン・マネーと性同一性障害
    こんなものを発見したので、性同一性障害について語ってみようかと (=゜ω゜)ノ http://www.intersexinitiative.org/japan/review-colapinto.html 経由:http://macska.org/index.php?p=105 , http://macska.org/index.php?p=84 , http://d.hatena.ne.jp/jouno/20050907/1…