マケイン陣営の ACORN に関するデマについて、カカシさんに返答

11/20/2008 - 6:13 am | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

わたしが大統領選挙前に書いたエントリ「大統領選挙終盤にもなって、ACORNとビル・エアーズのデマを中心に据えるマケインに失望」について、苺畑カカシさんが反論を書いている。彼女の言うとおり、既に選挙も終わって ACORN なんて話題にもならなくなっているし、日本の読者にとってはどうでもいい話だと思うので、あんまり続ける気はないのだけれど、せっかくお応えいただいたのでとりあえず今回はお返事します。

まずは、この部分。

これについて、小山エミはACORNは低所得者の選挙登録を援助する中立な市民団体であると説明する。

(略)

共和党がACORNの活動に文句をいうのは、そのあからさまな民主党支持とそのあくどい手口について言ってるのであり、低所得者に民主党支持が多いからではない。多少でもACORNの背景を知っているひとなら、彼らがおよそ中立な市民団体などではないことは充分承知のはず。左翼運動家の小山エミがその事実を知らないはずはないので、はっきり言って上記の供述は「おとぼけにもほどがあるね」と言うもんだ。それではACORNがどのように選挙違反をやったのかという話をする前に、ACORNがどんな団体なのかという話からしておこう。

ACORN は低所得の人たちが自分たちの生存と尊厳を守るための運動組織であり、当然のことながら特定の価値観を持つ団体だ。何の思想も価値観もないという意味で「中立な市民団体である」とは言っていない。右か左かで言うなら明らかに「左側」の価値観を持つ団体であるのは当たり前の話。

ではなぜわたしがわざわざ「党派的に中立」と書いたのかというと、カカシさんが「このグループはオバマ選挙運動に多額の献金をしているのである」と書いていたから。そうした記述を読むと、まるで ACORN が民主党やオバマ陣営の別働隊のような印象を受けるが、それは事実に反しますよ、という意味で、「ACORN は党派的に中立」と書いたの。

ナショナルレビューに載ったスタンリー・カーツの記事を参考にACORNの歴史を追って観よう。ナショナルレビューは保守派の政治マガジンでカーツは保守派の政治評論家。

あのさ、わたしはカカシさんが「マケイン陣営や保守メディアの宣伝に騙されている」と指摘しているわけだから、そこで保守メディアの記事を引用しても反論したことにならないでしょ。まあカカシさんの意見に合致した情報は保守メディアや保守ブログにしか存在しないわけだから、仕方がないとは思うけどさ。

より信頼できる情報源として、ここでは Annenberg Political Fact Check を参照したい。このサイトは Annenberg Foundation によって設置されたもので、その他のいかなる財源も持たない。また、保守・リベラルその他を問わずいかなる政治思想も推進しておらず、選挙中はオバマとマケインの各陣営による相手への批判について、具体的な証拠を挙げつつ、どこまで事実に基づいているのか検証してきた。そのサイトに掲載されている、ACORN をめぐるさまざまな批判についての報告のまとめには、次のように書いてある。

マケイン/ペイリン選挙運動は、全国で活動するコミュニティ運動団体 ACORN が「膨大な不正選挙行為」を行なっていると指摘した。かれらは、オバマがこのグループと「長く深い」関係を持っていると主張した。われわれは、この双方の指摘は誇張であると結論付けた。しかし、オバマもこのグループとの関係を実際より控えめに報告していた。

・ACORN もしくはその職員が不正に投票したとして起訴されたり、有罪になったことはない。マケイン/ペイリンの広告が「不正選挙行為」と呼ぶものは、(不正投票ではなく)不正な有権者登録であった。ACORN の運動員のうち数名は登録届の不正で有罪となり、他の人たちは調査を受けている。しかしこれまで表面化した証拠によって明らかになったのは、それらの運動員たちが(有権者登録の)仕事をせずに給料を受け取るために虚偽の登録届を出していたことであり、不正な票を投じるためではなかった。

・オバマは過去に何度か ACORN と何らかの関係をもった−−最終討論会でかれが話した以上に。

どうだろうか? わたしが以前のエントリで書いた通り、ACORN における不正な有権者登録は確かにあったけれども、ACORN は一部の不届きな運動員の詐欺(本当は仕事をしていないのに、虚偽の登録届を提出することで仕事をしたふりをして給料を受け取っていた)の被害者であり、ACORN 自身が選挙結果に影響を与えることを目的に何らかの不正を行なったという証拠は一切存在しない。今回またカカシさんが ACORN による不正の数々とされるものをこれでもかと紹介しているけど、その全てが「運動員が ACORN から給料を騙しとるために不正な登録届を提出した」事件だった。これが事実。

ACORNはAssociation of Community Organizations for Reform Nowの略で、「いますぐ改革するための共同体組織編成同盟」とでも訳すのかな?名前からして社会主義丸出しという感じがするが、カーツによるとムーブオン・ドット・オーグ(MoveOn.org)やコードピンクなどと並ぶ「アメリカ最大の過激派グループ」で、その過激ぶりは他の二つをしのぐという。

えーと、想像するに「for Reform Now」というのはただ単に略語を ACORN(どんぐりの実)にするための語呂合わせみたいなもので、わたしたちは改革を求めます、以上の意味はないと思う。その前の「Community Organizations」はコミュニティにおける組織のことで、要するにそれぞれのコミュニティにおける組織の連合体が ACORN だということになる。カカシさんの訳は、「organizations(組織・団体)」を「組織編成」と訳している部分が変だと思うけど、この名前だけからは社会主義という印象はわたしはまったく受けない。どちらかというと、無色無臭な感じの名前だと思う。

まぁそれはいいけど、このカーツという人が MoveOn とか Code Pink を「過激派グループ」と呼ぶのには失笑するしかない。単なるフツーのリベラル反戦団体じゃん。そして ACORN も、それらと同じくフツーに貧しい人たちの権利を主張している市民団体。

先回りして言っちゃうけど、保守メディアがよく MoveOn のことを「過激派」と宣伝するときに言うのは、「ブッシュ大統領をヒトラーになぞらえるコマーシャルを放映した!」とかいう話。事実はもちろん違って、この団体がネットでブッシュを批判する30秒のコマーシャルのコンテストを開催して、アップロードされた動画を誰もが見て採点できるようなシステムを作ったところ、何千件もの応募の中に二本だけブッシュをヒトラーになぞらえる内容のものがあった。YouTube などと同じく、アップロードされた動画を公開前にいちいちチェックする設定にはなっていなかったため、それらは一時的に閲覧可能だったのだけれど、指摘があってすぐに MoveOn はこの二本の動画を不適切と判断して削除した。もちろん、その動画がコンテスト以外で MoveOn によって放映されたことは一度もなかった。ところが、FOX News をはじめとする保守メディアでは、その後延々と「MoveOn は大統領をヒトラーになぞらえる過激な団体である」と宣伝しまくっているのね。あー嫌になる。

Code Pink の方はピンクの服を来て反戦を訴える女性たちの運動であり、いま調べたところどうやら大阪にもあるらしい。コードピンク大阪のサイトを見て各自判断して欲しいのだけれど、確かに反戦運動をやってるし、左翼っぽい人が多いかもしれないけど、どう見ても「過激派」ではない。普通のおばちゃん、おばあちゃんばかりだ。

本当の「過激派」とは、たとえばかつてウェザー・アンダーグラウンドの活動をしていた頃のビル・エアーズのような人のことを言うはずなのに、この程度の大人しい団体を「過激派」呼ばわりしていると、かえって「オバマは左翼過激派のエアーズと関係がある!」というプロパガンダの効力を弱めてしまうんじゃないかと思う。まぁエアーズ自身、いまじゃただのヒッピーくずれのおやじだけど。

「秘書が勝手にやったことでして、、わたくしはその〜全く関知しておりません、、、」とかいっているどっかの政治家みたいで全く説得力ないね、こんないいわけ。ACORNがきちんと監視しているというなら、どうして何年にも渡ってあちこちの支部で何度も何度も同じ『間違い』が起きるのだ? (中略) 不正の数が長年広範囲に渡って広がっていれば、それは組織ぐるみの方針であると考えるのが常識。

いやだからさ、仮に ACORN が組織的に不正を行なっているとしたら、何が目的なわけ? もし選挙結果に影響を与えるのが狙いなら、不正な有権者登録をいくら届け出ても全然意味がなくて、実際に不正に票を投じようとするはずでしょ? ところが、これまでの膨大な調査において、発覚したのは全て「運動員による不正な有権者登録」だけであり、不正に投票したケースも、投票しようとして止められたケースも、これまでまったく一度も見つかっていないのね。そのことが、組織ぐるみでないという根拠なの。分かる?

ACORN がきちんと監視しているといっても、支部は各州にあって、さらにその支部の下に州内各地のオフィスがあるわけだから、中には監視が不完全のところだってあるはず。カカシさんが紹介しているワシントン州支部のケースでは、どうやら管理不行き届きがあったらしいので、それは当然管理責任を問われるべき。そして ACORN は現実に管理不行き届きの責任を認めたからこそ、捜査にかかった費用を弁償したのね(カカシさんは罰金と言っているけど、それは間違い)。でもそれは、たとえば同じように全国に支部がある郵便局でもスターバックスでもなんでも、不真面目な従業員もいれば、無能な中間管理職だっていて、中には会社の備品を盗む社員もいれば、管理不行き届きで部下の不正を防げない管理職だっている。

そういうレベルでいろいろ問題があるということは、わたしはまったく否定していない。わたしが言っているのは、ACORN が選挙に影響を与える目的で何らかの不正に関与しているという事実はこれまでの全ての調査でまったく確認されておらず、まるで ACORN がそういった不正を行なっているかのようなマケイン陣営の宣伝は不当である、ということ。

ちなみにACORNはどんな連中を自給8ドルでアルバイトに雇っているのかというと、このラスベガスで起きた選挙違反事件では、集められた65000の登録書があやしげなものだったとされ、しかもアルバイトの59人が前科ものの犯罪者だったというのだ。重犯罪者は他人の個人情報を集めてはいけないことになっている。だからACORNは不正な登録書を集めたこと以外にも前科ものを雇うという違反をしていたのである。

この件については正直初耳だったので調べたけど、この人たちは身分詐称の罪で書類上は刑務所に服役中の身で、ただし出所前に実社会に慣れるための中間地点的な施設で暮らしていたらしい。かれらはまだ完全に自由の身ではないので、身分詐称で服役中の人は非囚人の個人情報を集めてはいけないという制約に従う義務がある。おそらく、刑務所の中で、出所後の犯行の準備をしてはいかんという趣旨だろう。で、問題が起きたのは、かれらに実社会での職を斡旋する団体と雇用者の ACORN のあいだで業務内容について連絡が十分でなかったために、斡旋団体は個人情報に接する職だと知らずに斡旋してしまい、ACORN はかれらがそのような制約を受けている囚人だとは知らずに有権者登録の仕事をやらせてしまったということらしい。

この件についても、もっと業務内容をきちんと連絡すべきだったとか、雇用する人についてもっと調べるべきだったという批判は成り立つと思うけれども、ACORN が何か大きな不正を行なっていたというわけではなさそうだ。そして ACORN が全国で雇っている何千人、何万人ものアルバイトの中で、この59人を取り上げて ACORN という団体の組織ぐるみの不正だとか言い出すのはどう考えても変。

ただし、エミちゃんも認めている通り、オバマはACORNの弁護士だったことがある。それというのもオバマはコミュニティオーガナイザー(共同体組織編成家)だったころ、抗議運動などを主催していた実力を買われ、当時のACORNのリーダーからメンバー達の抗議運動や組織編成を指導してほしいと依頼されており、ACORNの過激なメンバーたちはオバマの指導によってその行動を学んでいたのである。つまりACORNメンバーの行動はオバマの思想にもとづくものなのだ。

ACORN の活動が過激だというなら、そのような活動はオバマがシカゴで ACORN に出会うよりずっと昔から行なわれていたから、ACORN メンバーが「オバマの思想」にもとづいて行動しているという主張は歴史的に不可能。毎年一回開かれるセミナーの講師として何回か呼ばれて講演したという以外の「思想」的な繋がりがあるという証拠はどこにもない。カカシさん自身、ACORN はオバマより前の世代の過激な左翼運動から派生した団体だ、って言ってなかったっけ? オバマ思想なのか60〜70年代の左翼思想なのか、どっちかはっきりして欲しいところ。

というわけなので、カカシがオバマとACORNについて書いたことは、マケインの流したデマでもなんでもなく、真実に基づいたものだったのだ。

いや、カカシさんは ACORN についてそんなに詳しく書いたわけじゃないけど、マケインが流したのは完璧にデマでしょ。マケインの宣伝の一番のポイントは「ACORN がオバマを勝たせるために不正を行なっている」というものであり、実際にはそのような事実を示唆するような証拠はこれまでたったの一つも提示されていないんだから。

続いて、わたしのエントリ「自動車業界ビッグスリーの救済論議は、ニューディール完成への契機に」へのカカシさんのコメントにも応えておく。

余談だが、これについて左翼変態フェミストの小山エミも、ビッグスリーは倒産させるべきだと書いているのを読んで私は、「え〜?なんで〜?」と一瞬目を疑ってしまった。エミちゃんが支持するオバマはビッグスリーの救済には賛成のはずだが。

当たり前だけど、わたしはオバマの政策のすべてに賛成しているわけじゃないよ。オバマよりマケインの方が優れていると思った点もたくさんあるし、これまでそう書いてきたと思う。そんなに驚くことないんじゃないかな。

社会主義で自由市場を嫌うエミちゃんにしてはまともなことを言うじゃない、と思って読んでいたら、案の定、彼女の解決策は産業が個人の福祉を保証するのではなく、国が保証すべきなのだと語っている。

いや、あのさ、わたしは社会主義者ではなくて、自由市場が好きです、と何度も書いてるんだけど、どうして無視するの? わたしはカカシさんと同じく、「どうしても必要な時以外はなるべく手を触れないでもらいたい」という考え方の持ち主で、その「どうしても必要な時」の基準がカカシさんとは確かに違うかもしれない。でも、基本的に市場に任せるのが良いというところまでは同じ考えなんですよ、って何度言ったら分かるんだろう。

気持ちは解るのだが、会社が請け負うべき労働者への保証を国が補えば、ビッグスリーが倒産の危機を迎えたように今度は国が破産の危機を迎えることになるということをエミちゃん並びに社会主義者は理解していない。いったい国が国民にする保証は誰が支払うのだ?

誰が払うのかと言えば、もちろん納税者が払う。国は、というかことさら米国は、企業と違ってそう簡単には破産しないけど、コストが膨張しすぎないように健康貯蓄口座などを組み合わせて市場の利点を活用するべきだと思う。前エントリのコメント欄で、わたしは次のように書いた。

次に、政府は既に医療費の五割以上を負担しています。最貧困層やお年寄り、障害者のためのメディケア、メディケイドをはじめ、私的な保険制度を成り立たせるための各種の免税措置、退役軍人のための医療、そして政府機関や軍で働く人たちの保険などのコストです。

さらに、健康保険を持たない人が病院に来たときの緊急医療の費用や、過度の医療費負担が支払えずに個人破産した人の分の費用などは、必ずしも政府が負担しているわけではないですが、他の患者の医療コストを押し上げることにより、社会全体が負担しています。

一方、私的な健康保険ですが、その大半は企業によって雇用パッケージの一部として提供されています。すなわち、若くて特に重い病気や傷害のなく、医療費が比較的かからない人が多く含まれます。

さて、これらを総合して全体を見ると、医療という市場の中で、旨味のある部分は民間の保険会社が吸い付くして利益にする一方、コストがかさむ部分は社会全体に負担が押しつけられています。この「利益は民間企業に、コストは社会全体に」という公共簒奪図式は、リスクの高い博打がうまくいっているうちはさんざん利益を搾り取っておいて、失敗した途端に政府の支援を仰ぐ、最近の金融業界のあり方とまったく同じです。

どちらにしても社会全体で医療費の大半を負担している事実はかわらないのに、こんなに非効率で不公正な制度のままでいいんでしょうか?

カカシさんは、自由市場主義の立場からビッグスリーの救済には反対している。でも、現行の健康保険制度だって、その実態はというと毎年巨額の税金を投入して保険会社を救済しているのも同然ということ。こんな馬鹿らしい話はないと思うんだけど。

税制や健康保険制度について、具体的にどうするべきかという話は、ちょっとここでは語りきれないので別の機会に。

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