ラスベガスとネバダ州の売買春についてメモ

2008年1月13日 - 3:47 PM | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

前エントリ「レヴィット&ヴェンカテッシュの『街頭売春の経済学』報告」へのはてなブックマークにこんなコメントを見かけた。

2008年01月13日 nichijo_1 売買春 ネバダ州のラスベガスとかはどうなっているのだろう.

どうなっているのだろう、の対象が不明瞭なんだけど、エントリの主題は街頭売春についてだから「ネバダ州のラスベガスの街頭売春はどうなっているのだろう」という意味に解釈してみる。で、さらにこれも解釈になるんだけど、なぜネバダ州ラスベガスなのかという部分もよく分からない。まぁ一般のイメージとして、ネバダ州と言えば米国で唯一合法的な売春が認められている州だから、それに関連してのことだと想像してみることにする。間違っていたらごめん。
で、そのネバダ州なんだけど、実はラスベガスはアメリカの中でも最も街頭売春に厳しい都市の一つ。合法じゃなかったのかと思うかもしれないけれど、ヨーロッパやカナダなどで売買春の非犯罪化を進めているところが個人による自由売春に寛容で管理売春に厳しいのと正反対に、ネバダ州における合法売春は特定の売春宿において行なわれる完全な管理売春だけであり、しかもラスベガスなどの都市部から少し離れた地域においてのみ認められている。
基本的にこれらの売春宿で働く女性は一定の期間住み込みで24時間待機することになり、食料や生活必需品を市場価格の何倍もの代金で売春宿から購入しなければいけない。外に出入りすることは原則的にできないし、そもそも外に出ても砂漠しかないので車がなければ何もできない。売春宿の経営者は、わざわざ州外の女性に片道切符だけ渡して働きに来るよう呼び寄せたりしており、そうやって来た女性はかなり高い違約金を払わなければ、契約期間が終わるまで逃げ帰ることもできない。客はそこにいる女性の中から一人を選ぶシステムで、女性同士の競争は激しい。
で、ここからが問題なんだけど、ネバダ州にももちろん宗教的な理由などから売買春に反対する人はいて、かれらは政治家に圧力をかけて合法売春宿を禁止するように要求している。「都市から離れたところに立地し、労働者が売春宿に閉じ込められていることで地元の人の目に触れない」ことは、批判をかわしつつ商売するための絶妙な条件でもあるのだけれど、同時にそれは経営者の力を強大にしている。また、宗教右派などの攻撃からビジネスを守るために、売春宿の経営者たちは政治家にかなりの献金をしているし、いろいろな癒着もある。地元の政治家や警察は、合法売春宿の経営者の味方というわけ。
さて合法売春宿の経営者たちにとって脅威となるのは、売買春反対派だけではない。売春宿に属せずに個人で営業する売春者の存在も、かれらから見れば競争相手であり、しかもラスベガスなどかれらが出店できない都市部にも個人営業の売春者は出入りするわけだから、合法的に商売をやっている自分たちがどうして違法に売春をしている人たちのせいで損をしなけりゃいけないんだ、と政治家に訴え出る。その結果、ラスベガスの警察は他の都市と比べて個人営業の売春者に異様に厳しいというわけ。
そのラスベガスでももちろん大規模な管理売春はあって、それらは売春ではなく「エスコート」といった口実で運営されている。売春宿と競合関係にあるそうしたビジネスがどうして合法売春宿の経営者の差し金で政府に潰されないかというと、それはもちろんかれらも政治家や警察とつるんでいるから。さらに言うと、ラスベガスは観光産業において労働組合の力が強くて、一部の労組関係者は裏で売春の斡旋に近いこと(タクシーの運転手が案内したり、お金を貰ってカジノ内に売春婦を入れたり)をやってるし、一応カジノやホテルの経営陣からマフィアは一掃されたことになっているけれども裏ではいろいろある。ネバダ州の性産業はそうした巨大な権力のぶつかり合うところなので、うしろだての無い個人が街頭売春するには非常に厳しいのが現実。
まぁ街頭じゃなくて新聞に広告出すとかなら個人でも営業可能なんだけど、そこもまた激しい戦場。というのもラスベガスはショービジネスがさかんだから、ダンサーとして成功したい女性がたくさん集まってくる。中にはすごい美人も少なくないし、整形手術なんて当たり前という雰囲気もある。その中から夢破れて売春婦(エスコート)に落ち着く人もたくさん出てくるわけで、はっきり言って外見的なレベル高すぎ。州内に合法売春宿があるから、全国から集められた労働者たちが売春宿をやめたあともそのままネバダに住み着いて別の形で売春を続けることがあるし、そもそもカジノで大儲けした人が最初に満たそうとする欲望なんて分かり切ったものなので、それを目当てに商売しようという売春者はいくらでも集まる。そんな中で競争しなくちゃいけないのだから、ラスベガスで売春するのは楽じゃない。
そういうわけで、米国で売春するなら、よほどの美貌と才覚の持ち主でない限りみなさんはラスベガスは避けましょう。お勧めはというと、そうだなーやっぱりサンフランシスコやニューヨークがいいでしょ。
以上、人から聞いた話をいろいろ総合しました。

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