ラルフ・ネーダーの選挙事務所事情

2004年6月13日 - 5:49 AM | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

Washington Post (06/13/2004)によると、2000年に「緑の党」候補として米大統領選挙に出馬し、今回も何故か別の党から出馬するらしい消費者活動家ラルフ・ネーダー氏の選挙事務所が、自身が創設した非営利団体の事務所と同じオフィスに同居している事が問題となっている様子。非営利団体は免税の特権を受ける代わりに選挙戦に参加することを禁止されており、もしこの団体がネーダー氏の選挙を支援していたと判断されると、団体・ネーダー候補ともに何らかの罰を受けることになる。
もちろんネーダー氏は「何も悪いことはしていない」と主張。ちゃんと契約書を交わしてオフィスの一部を間借りしているだけであり、家賃も払っているし、電話線もFAXもコピー機も全部独自で準備している、と言っている。けれども、ネーダー氏の選挙参謀が書類上その非営利団体のスタッフだったり、非営利団体のものであるはずの携帯電話に電話をかけると選挙事務所に繋がったりするらしく、細かく調べれば何らかの違反が発見される可能性は高い。
さらには、仮にネーダーの説明が全て正しかったとしても、オフィスを間借りした時点で問題だという人もいる。ワシントンDCの一等地にそんなに都合良く間借りできるオフィススペースが空いているわけもなく、仮に民主党のケリーや共和党のブッシュが借りようとしても断られたはずなので、有償無償に関わらずそのスペースを提供したこと自体が不当な便宜であるという。もちろん、この論理を押し進めると「公開の市場で宣伝された不動産以外に選挙事務所を構えてはいけない」という事になるはずだが、そうすると民主党・共和党の両党だって困るはず。自分たちができない事をネーダーだけに要求しちゃいけないですよ、はい。
それはともかく、今回の開き直りを見て、ネーダーが政治家としてつくづく不適切な事を再確認。政治家ってモノは、法律さえ守っていれば良いってワケじゃなくて、そもそも疑いを受けるようなことは避けるようにしなくちゃダメなの。対立候補にハメられて疑いをかけられたというならまだしも、こんなアホなスキャンダルで調査受けたりするんじゃないの。ま、スキャンダルでもなけりゃネーダーが出馬している事実すら誰にも気づいて貰えないし、わざわざネーダーに疑いをかけようとするほどネーダーの事をマトモに相手にしている対立候補すらいないし、腐るのも分かるけど。
このネーダーおじさん(というか、既におじいさんの年齢だけど生涯独身)、昔はカッコ良かったの。GMの自動車は安全性に問題があるという問題を追求するうちに逆にGMが雇った私立探偵に付け回されるようになって、それを取っ捕まえて消費者運動のリーダーになって、さらに全米法定弁護士協会という超強力なロビイストを抱える団体を通して政治に影響力を持ち、一時は「米国で一番影響力のある民間人」と呼ばれたほど。それが今じゃ、大統領選挙に毎回出て1〜3%くらいの支持率を集めるだけの人。悲しくないんでしょーか?
大統領選挙に出たいなら、出ればいいのよ。でも、トップの1人しか選ばれない大統領選挙において、いつまで選挙運動やっても支持率が5%に届かないなら、そのまま運動しても意味ないでしょ? だったら、有力候補のうちで自分の考えに一番近い人と話して、「わたしは自分の支持者に向かってあなたに投票するよう呼びかけるから、この点とこの点についてわたしの公約を政策に取り入れてくれないか」と交渉するのが得策だと思うけど。「あなたを支持するから、当選したら環境庁長官に任命してくれ」でも「消費者保護局の局長にしろ」でもいいですよ。それだけの地位につくだけの実績はあるんだから。支持率3%の候補なんて何の意味もないけれど、選挙戦終盤になって主要候補間の支持率が接近していれば接近しているほど、その3%の価値は高くなるわけで。
二大政党制のもとで政治に何らかの影響を与えたいなら、そうするのが一番なのに、そうしない。それは、今回の件でも明らかになったようなネーダー氏個人のよほど政治家には向かない頑固さというか、自分は常に正しいという思い込みの強さでもあるんだけど。二大政党の独占を破るのは賛成だけど、それは市議会やら町議会から着実にやるべきであって、いきなり大統領になりたいなんてのは無理に決まってるのにね。
そういえば、ラジオでロバート・ライシュ元労働長官(第1次クリントン政権)のインタビューを聴いたけれど、インタビュワーの「ケリー候補が大統領になったらまた大臣になりたいですか?」という半ば冗談の質問に対し、「国防長官になりたい」ってはっきり答えていた。そういう質問には具体的な話はせずにぼかして答えるのが普通なのでそう答えると思っていたけれど、機会が与えられれば自ら国防省に乗り込んでイラクからの撤退を実現したいと本気で考えているらしい。面白そうなので、ライシュの新著「Reason: Why Liberals Will Win the Battle for America」読もうっと。

2 Responses - “ラルフ・ネーダーの選挙事務所事情”

  1. Yoko Says:

    Ralphタンは、2000年ブッシュ政権誕生の最大の立役者。こいつがでていなければゴアで決まりだった。
    それに懲りずにまた出てきて、2004年もブッシュ再選をアシストするなんて悪夢が繰り返されないように希望。
    今、誰か一人殺しても許されるのなら、迷わずこいつを殺す(笑)

  2. Yoko Says:

    >「あなたを支持するから、当選したら環境庁長官に任命してくれ」でも「消費者保護局の局長にしろ」
    これってアメリカではOKなんですか?
    日本だと公職選挙法違反になると思います。要するに、裏取引で立候補を止めさせたのだから、一種のワイロと同じこと。

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