【保存版】売買春とフェミニズム理論4分類

6/1/2005 - 5:15 pm | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

ええと、今回から始めるシリーズとして、過去にわたしが掲示板やMLに書いた記事の中から、それだけで役に立ちそうな内容のモノを紹介していこうと思います。第1回は、様々なフェミニズム理論における売買春の扱いについてで、2001年にわたしが Wendy Chapkis という人の「Live Sex Acts」(1997) という本の最初の20ページくらいを、わたしの主観によりさらに簡単にまとめたものです。

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売買春について私とだいたい意見が近いフェミニストにWendy Chapkisという人がいますが、彼女の「Live Sex Acts」という本の第1章ではほんの20ページくらいの文章でフェミニズムにおける売買春についての論争を具体例を挙げてきっちりまとめています。 ここではそれを私の主観によりさらに簡単にまとめてしまいます。

Chapkisによると、フェミニズム内部の売買春についての分析はだいたい以下の4つの陣営に分かれます(ただし、分類名は彼女によるものではないです):

 1)アンチ・セックス・フェミニズム
 2)ポジティブ・セックス・フェミニズム
 3)セックス・ポジティブ・フェミニズム
 4)自由セックス主義

上記のうち、1)がカチカチの70年代後期型ラディカルフェミニズム、2)はより柔軟(に見える)ラディカルフェミニズムとオーソドックスなリベラルフェミニズム、3)は第3波フェミニズムの主流、4)はフェミニズムというより自由主義にフェミニズム的な正統性を与えたものです。 順に説明します。

【アンチ・セックスフェミニズム】というのは、文字どおりセックスそのものを男性による女性支配から切り離せないものと見る立場で、売買春に反対するだけでなく、「父権社会において、女性はみな結局売春婦なのだ」とまで言い切ります。 すごいですねぇハイ。 一見無茶な主張なのですが、理論的には2)に比べてはるかに論理が一貫していて、内部の論理を検証しても論破できない構造になっています。 別の言い方をすれば「信仰みたいなモノ」とゆーコトになってしまうのですが・・・ 一般の女性の支持を受けるとは到底思えないですし、社会的に大きな勢力を持ち得るような主張ではないので、無視しておいて良いと私は思っています。

【ポジティブ・セックス・フェミニズム】とは、セックスする当事者同士の権力関係によってセックスは抑圧的にも解放的にもなるという立場で、社会主義フェミニズムを除く第2次フェミニズムの代表的な潮流であるラディカルフェミニズム(の大部分)とリベラルフェミニズム(の大部分)が含まれます。 どこまで抑圧と見るかという点で、「男性と女性の間にはどうしても超えられない権力の差があるので、ヘテロのセックスは常に抑圧的であるが、女性同士のセックスなら抑圧的ではない」という1)に近い比較的過激な主張からはじまって、かなりの幅があります。 つまり、2)の論者は様々な性行為を「抑圧度」によってランク付けして、ここまではいいけどこれから先は駄目といった線を引いている事になります。 一般に「抑圧度」が高いとされる性行為には、売買春やS/Mが含まれます。

【セックス・ポジティブ・フェミニズム】や【自由セックス主義】とは、1)や2)と違って、ある性行為を肯定するかどうかの基準として、「抑圧度」ではなく「両者による合意の有無」を据える立場です。 基本的に「大人同士の合意ある性行為は肯定するべきである」との考えから、お金のやり取りの有無や性行為の「異常さ」にはあまり関心を持ちません。 もちろん、何をもって「合意」と見なすべきかという点での議論はありますが(先に挙げた東南アジアの例など)、「セックスへの対価としてお金をやり取りする」事自体は肯定する立場です。

3)と4)の違いですが、4)は「自分の意思で売春をしている人は既に完全に解放されている」という考えからただ単に「合意あるセックスの自由」を主張するだけであるのに対し、3)は「合意あるセックス」を基本的に肯定しつつも、それだけでは不十分であるとし、「売春をしない自由」を含む性的自己決定を脅かす社会的な構造や権力の不均衡を指摘し、抵抗する立場です。 別の言い方をすると、4)の立場からは売春者の是非と売春産業の是非は基本的に一体ですが、3)の立場は売春者と売春産業の間に通常の労働者/資本の関係を見い出します。

一般に売買春についての論争は2)と3)4)連合軍のあいだで起きることが多いですが、現実には3)と4)のあいだに見えない闘争があります。わたし自身は3)の立場ですが、性労働者運動に関われば関わるほど後者の闘争が重要だと感じるようになりました。

One Response - “【保存版】売買春とフェミニズム理論4分類”

  1. 建築屋 Says:

    「後者の闘争」と言うの、3)と4)のあいだの闘争でかつ3)が4)に勝ことですか?

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