オバマ議員への過剰な期待はやめよう

12/23/2004 - 2:30 pm | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

今週号の表紙において毎年恒例の「Man of the Year」にブッシュ大統領を選んだタイム誌に対抗してか、ニューズウィークは最新号で「次に来るのは誰か」と題して表紙にイリノイ州選出の新人上院議員にして「政界のタイガー・ウッズ」とも呼ばれるバラック・オバマ議員を登場させた。スーパーの雑誌スタンドにブッシュ大統領の顔とオバマ議員の顔が並んでいたら、大半の人は若くてハンサムなオバマ議員の方に手を伸ばしてしまうはずで、ニューズウィークはうまくやったものだと思った。

今年の選挙ではどこもここも負けまくった民主党にとって唯一の良いニュースと言えば、オバマ議員という次世代のスーパースターが登場したことだ。わたしがこの政治家を知ったのは春頃に偶然聞いたラジオインタビューによってだったが、最初に感じた印象は「クリントンの再来だ」というものだった。思えば1988年の民主党全国大会で予定を20分も上回る基調演説を行って全国的な注目を浴びたのが当時のアーカンソー州知事ビル・クリントンだったが、その16年後の今年、同じ民主党全国大会の基調講演で「希望」を訴えて旋風を巻き起こしたのがオバマだったというだけの話ではない。

クリントンと言えば、少なくとも1994年に中間選挙に敗北して実権を奪われるまでは「あなたがたの痛みはよく分かっている」という白々しい決めゼリフを真摯なものであると信じさせる包容力のあるカリスマ性を持っていたが、それと同種のカリスマをオバマ議員には強く感じる。また、政治家の中でも飛び抜けて優れた頭脳の持ち主であり、プラグマティックな発想の持ち主であることも(それが原因で「エリート主義的」「節操がない」と批判されることもあったが)両者に共通している。そういうわけで、オバマ議員は民主党の、いや米国の将来のために必要な指導者であり、史上初のアフリカ系の血を引く米国大統領に一番近い人物であるという評価に異存はない。

しかし、である。このところのオバマ・フィーバーにはいい加減うんざり感じてきている。民主党全国大会の演説は確かに上手いポイントを突いたけれど、政治家はカッコいい演説をするだけじゃダメなのよ。その点、州議会における実績は認めるけれど、まだまだ学ばなくてはいけないことがたくさんある。いきなり過大な期待を持たれるのはオバマ議員自身にとって迷惑なはずだ。だいたい上院というのは年功序列・馴れ合い主義の世界であって、一年生議員が何か派手なことをやろうとしても潰されるに決まっている。もちろんオバマはスマートだしプラグマティックだから、最初のうちは目立たないようにしながら地道に人脈と実績を築くのを狙うだろう。次回2008年の選挙で副大統領候補にと言う人もいるが、冗談じゃない。オバマは将来絶対に必要な人材なんだからこそ、最低でも3期くらいは上院でじっくり経験を積んでもらわないと困るんだ。

ほんの数年前、大統領の座に一番近い黒人はといえば、みんながコリン・パウエルだと思っていた。2000年の選挙でブッシュが大統領になったとき、タカ派政権のくせに誰一人マトモな兵役の経歴を持たず国内的にも国際的にも信頼度ゼロという致命的な弱点をカバーするため国務長官の座に迎え入れられたパウエルが、その後どうなったか。政権内で唯一、党派を超えて経歴・人格ともに人々の尊敬を受けていたパウエルは、ブッシュの繰り広げたウソまみれの戦争を正当化するために個人的に築いてきた評判を切り売りさせられた挙げ句、使い捨てされてしまった。もはや、パウエルが有力な大統領候補となることは有り得ないだろう。

今回の選挙でも、民主党のケリー議員は「外見に魅力がなく、東部エリートのお金持ち家族の出身」と見られているという弱点をカバーするため、南部の労働階級出身でハンサムなジョン・エドワーズという一年生議員を副大統領候補として担ぎ出したが、結局負けてエドワーズは無職である。エドワーズ自身は次回の大統領選挙にも出馬するつもりでいるみたいだけど、それなら副大統領への野心なんか抱かずに、準備が整うまで上院で修行してれば良かったはず。もしエドワーズ議員があと8年上院に留まっていれば、かなり強力な大統領候補になっていたはずだ。もちろん、エドワーズ程度の人材なら他にも代わりがいるかも知れないけれど、オバマを同様に使い捨てにするわけにはいかない。スーパースターにはそれなりにちゃんとした環境を与えてじっくり実力を付けてもらった上で大統領選挙に望めば良いのであって、せかして潰してしまっては困るのね。

バラック・オバマは間違いなく将来の大統領候補だと思う。でも、今のところ彼は議会内序列99位の一年生議員でもあるんだ。本当にオバマが語る「希望」に賭けるのであれば、短期的に過剰な期待をかけるのはやめて、彼が本当の意味で頭角を表すまで待ってみようよ。

21 Responses - “オバマ議員への過剰な期待はやめよう”

  1. Sakino Says:

    あっ、ここにもオバマファンが^^;。

  2. zz Says:

    なるほど、一外国人としてもオバマに過剰な期待をしてしまっていたので、頭が冷えました。
    潰してはならない、というのは本当にそうだとおもいます。
    ただ、これだけアメリカの威信が落ちているさなかで、本当の「変革感」を国内的にも対外的にもアピールできるのはヒラリーではなくバラックなのではないでしょうか。もちろん、若さ故に潰れないように民主党挙げてのサポートを取り付けるのでなければ、効果的な仕事を期待するのは難しいというのは事実ですが。。。あるアメリカ人が「アメリカはまだ女性大統領を迎えられるほど成熟していない」といっていましたが、「女性」を「黒人」に変えても多くの人にとって真なのも事実でしょうね。

  3. gohei Says:

    中東の雲行きを考えると次期アメリカ大統領選に無関心ではおられない。
    中間選挙では民主党が巻き返し勝利したが、今後のブッシュの動きが
    心配でならない…、イラン問題で暴走する最悪のシナリオが展開した場合、
    日本の受ける衝撃は大きい。
    オバマの登場は共和党のネオコンによるイスラエルとの好戦的なグループ
    との暴発があった場合、その反動としてありうるのではと期待する。
    「女性」と同じくらい「黒人」の大統領には、アメリカ社会における障壁は
    高いと思われる。この国の動向が世界の安全保障を左右する存在で
    ある限り、平和主義の弱者に優しい人格者に対する総体的な支持が
    アメリカ市民社会に出てくることを期待したいが、それはアメリカの立場
    を苦しくするような破局的政治選択が現政権においてなされることを
    前提としているだけに、静かに見守りたい。

  4. chi Says:

    オバマを日本語で検索するとこのページが上の方に出ます(2007年1月)が、
    この文章は2年以上前に書かれたものであることをお忘れなく。
    その後の状況は刻々と変化しております。

  5. macska dot org Says:

    バラック・オバマ議員及び米大統領選挙関連エントリ…

    最近日本でも大統領候補の一人とされるバラック・オバマ上院議員についての報道が多くなり、それはそれでいいんだけれど、日本語で「オバマ」を検索するとわたしが2年以上も前に書 (more…)

  6. 日本でも話題になってきた大統領候補 オバマ議員 at orioa Says:

    […] と、知ったようなコメントですが・・・ 僕は、アメリカ大統領選挙ってものがどのようなものか全然分かりません。が、以下のBlogで詳しく解説されているので参考に。 macska dot org ? Blog Archive ? バラック・オバマ議員及び米大統領選挙関連エントリ macska dot org ? Blog Archive ? オバマ議員への過剰な期待はやめよう […]

  7. とらねこ31 Says:

    沖縄からです。アメリカ大統領選挙、あまり興味はないですが、米軍基地を抱える本県としては、ヒラリークリントンが大統領になったとしても、夫クリントンの時代とかわることがない様に思います。あまり期待できない、というのが率直な感想。ならば、オバマ氏か、というとわかりかねますね。ただ、反イラク戦争の姿勢は理解できました。その意味では、オバマ氏がいいのかもしれない。様子見ですね、いまのところ。仮に彼が、大統領になったとして、沖縄の現状に大きな変化が生じればいいのだけど、不透明ですね。

  8. KURO Says:

    オバマ人気がすごいですね。
    首相になる前の安倍さんとダブります。人気はすごいけれど、政治家としての実績が不足、若い。
    選挙なんてしょせん波に乗った者勝ちですから。

  9. バラックオバマ yes we can Says:

    とうとうオバマ氏が大統領候補に躍り出ました!Yes we can!

  10. 匿名 Says:

    Yes we can のコメントをどの位アメリカ市民が理解してるかにもよるんじゃないでしょうか?
    Weですよ、I では無いです。これ直訳するとJFKの有名な『what can you do for your country』ですね。今のアメリカ人にそんなメンタリティーはない思います。オバマ支援者の中に選挙後、weと言う感覚を持ち、自己の生活から改善できる余裕がある人と言うのは何%なのか? 私の予想ではとても軽薄な%としか想像出来ません。macskaさんが仰るとうり、オバマ氏は、将来に置けて大切な政治家であるが故に、今の時期と考えるのは、彼の政治生命を短くする要因の1つであると私は考えます。(もしかしたら、期待が大きいため、酷評も大きくなるんじゃないかと)。
     アメリカ市民がもっとweの意味を理解しているのなら、誰が大統領になったとしても、市民運動(消費的なもので決して暴力とかマーチングじゃなく)がモット活性化されてるはずですよ。その結果に置き、団体が動きやすくなりますから。ただ自己生活の改善や変化を求めるには、ちょっとした経済的なゆとりが必要で、オバマ支援者の大多数の低所得や中流下に改善を望むのは余裕がなさ過ぎます。 リベラル派の政治家が必ずしも下級階層への友とは限らないんですよね。リベラルになるには、元からのヒッピー派か生活にちょっとしたゆとりがなければ、ありつけない思想だと私は思います。
     

  11. 匿名 Says:

    オバマ議員がラコタ国の独立を認めたら期待できますね。しかし、軍産複合体の影響を受けているならまた戦争するでしょうね。

  12. komes Says:

    オバマ氏の経歴を見ると黒人といえ人種差別の深刻な経験はないと見られます。  まあ温室育ちといえそうです。   過大な期待は無理でしょう。  

  13. 匿名 Says:

    オバマが大統領になれば、まず日本と仲良くするのを辞め、中国と仲良くするようになりますよ。
    すると、日本は中国の属国となりますよ。

  14. ハルー Says:

    キング牧師も見てるかな?

  15. 匿名 Says:

    オバマが大統領になったら、80年代のアメリカのように貿易不均衡問題を持ち出し、
    色々な要求を日本に出すように思えます。オバマはおそらく保護貿易に走ると思われるからです。

    一過的なブームでオバマファンの日本人も多いようですが、
    ただでさえ苦しい日本の製造業が更に苦しい状況に追い込まれる可能性だってあると思います。

    ブッシュは不人気でしたが、フリートレード論者だったので、対日要求は少なく、
    日米関係は表面的であれ安定していました。日本人はそこだけでもブッシュを評価すべきです。

  16. みらい Says:

     オバマ氏が、大統領になりました。
     今後の、アメリカですが、どうも、不況になりそうなきがします! 理由は、オバマ氏が、低所得者優遇を、打ち出しているところです。 そもそもアメリカは、「アメリカンドリーム」に象徴されるように、成功者を理想とし、そこに向かって発展してきた歴史だったと思います。そのアメリカの理想をアメリカ人は、この期の不況で忘れて、オバマ氏を選択しました。メジャーリーガーになりたいと、努力しないと、メジャーリーガーに、なれないように、アメリカの、今後の発展は、厳しくなるのではないかと思うのです。そもそも、サブプライムローンは、システムや政策のミスは、あったでしょうが、借りたものを返さなかったのが、いけなかったのではないでしょうか?、自己責任の国アメリカ。政府や政策や、大統領に頼る、今のアメリカは、かって、日本が理想とした、憧れの、アメリカでは、なくなってしまったような・・・;
     これからの数年、アメリカを見てみましょう!そして、日本は、アメリカの今後をよく参考にした上で、動いたほうが利口だと、思うのですが・・・。

  17. げすと Says:

    オバマ氏、大統領になりましたね。
    しかしやはり持ち上げられすぎだし持ち上げすぎですよね。
    自ら作り上げた相当なハードルを果たして実際に越えられるんでしょうか・・・

  18. はおにい Says:

    厳密に言うと、まだ大統領にはなっていません。

    アメリカは唯一の超大国から、地域大国になる方向だと思います。イラクだけでなく、国外からは少しずつ手を引いていく。ドルと以外の基軸通貨が存在感を増す。日本は脱米入亜しか生き残る道はないでしょう。

    脱超大国化の一環かもしれませんが、オバマさんが核廃絶に前向きなのはいいことです。麻生さん、「アメリカがいくら言ったって簡単にできる話ではない」なんて後ろ向きなこと言ってないで、被爆国の代表として積極的に協力して欲しい。確かに難しい話ではありますが。

    アメリカの核の傘を失った場合、日本はますます自主防衛に傾斜するでしょう。近隣諸国との集団安保体制も考えていかないと。今は、アメリカにすがってればいい時代の終わりの始まりでは。

  19. 匿名 Says:

    最近の日本を見ていると世界恐慌後のように
    また日本だけ経済復興させ、金融反撃し、欧州のどこかとともに国際協調路線をぶち壊し、アメリカに喧嘩を売りそうな気配がありますけどね。

    完全に歴史をなぞってますね。日本もこのあと反米全体主義政権が樹立するし。
    公然とアメリカに文句付ける人も、それどころか「下の国・弱い国」として蔑視する(舐める)若者すら出てきた。
    反米小説(アニメ)の流行、「日本って実は凄いんだぜ?」論、これも世界恐慌後と全く同じ。

    世界の無極化がいかに危険なことか分かっている人がいない。
    ホントにバカですね。
    優しい人に文句言っても何もされませんが、ヤクザな人を侮辱したり文句付けたらそれだけでボコボコにされるという当たり前のことすら分からない「お坊ちゃま」が日本人に増えたんでしょう。

  20. とおる! Says:

    これ!面白いっすよ!
    ——オバマが招く日本の危機と世界の混乱
    http://www.the-liberty.com/newest/index.html

  21. もん Says:

    麻生総理の過激な期待はやめよう

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