はじめて効率的に機能している米「左派連合」と、ケリーが語る「希望」

10/29/2004 - 4:35 pm | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

Daily Kos 経由で知った LA Weekly 誌の編集者・コラムニストである Harold Meyerson 氏の最新コラム「ザ・ツナミ」が素晴らしい。ツナミというのはもちろん「津波」のことだけれど、彼が「ツナミ」と表現しているのは今回の大統領選挙でケリー議員を当選させるべく久々に歯車が噛み合うようになったリベラル陣営の大連合のことだ。先週、今回の大統領選挙における最激戦区であるフロリダ州とオハイオ州の現場を見て回った Meyerson 氏は、興奮した口調でその様子を伝える。

「そこで、これまで36年間も進歩派の活動家として、そしてジャーナリストとして過ごしながら一度も見た事がなかったものを見たのだ。それは、アメリカにおける左派が効率的に、完全に機能している様子だ。」 Meyerson 氏がフロリダとオハイオで見て驚いたのは、伝統的に民主党の選挙運動を支援してきた労働組合や自然保護有権者同盟といった団体だけでなく、これまでほとんど選挙に関わって来なかった団体や、最近生まれたばかりの団体までもが America Votes という連合体を通してスムースに協力関係を築いていることだった。 伝統的な民主党の支持基盤である労組・環境団体・黒人市民権団体・女性団体をはじめ、銃規制を求める団体、同性愛者団体、インターネットを基盤とした新しいリベラル系団体など30を超える団体が同じ部屋に集まって戦略を立て、役割を分担し、全国から集まったボランティアを駆使して有効な運動を行っているのだ。

例えば、黒人やラティーノが多く住む地域では市民権団体や America Coming Together が中心に投票を呼びかける活動を行い、白人中流家庭の多い郊外では環境団体が担当する。貧困層の白人が多い地域はもちろん労働組合が受け持って一軒づつドアを叩きながら民主党への支持を呼びかける。以前ならこれらの団体はそれぞれ別個に動いていたが、今回は頻繁に情報を交換しながら活動している。こうした団体の活動を支えているのが、ニューヨークなど選挙の結果が既に見えている州から大挙してやってくるボランティアの学生や活動家だ。関係者によると、500万人の有権者がいるオハイオ州になんと合計5万人ものボランティアが集まっているのだ。ブッシュを(もう一度)倒すという、共通の目的のために。

驚くべきことに、こうした連携は民主党を中心として動いてはいない。というより、選挙資金規制法があるため民主党と連携して動くことはそもそも禁止されている。つまり、America Votes に参加する多数の団体はそれぞれ独立した無党派の市民団体や労組なのだ。これまで、こういう枠組みで得意分野の違うさまざまなリベラル系団体がネットワークすることはなかったし、環境団体同士・市民権団体同士など同じ分野の団体ですら相互の連携はほとんどなかった。

夏の民主党党大会でバラック・オバマが「反抗的な希望」を唱えたが、先週フィラデルフィアでクリントン大統領を迎えて開かれた集会ではケリーがこう言った。「もし一方の候補があなの恐怖に訴えようとしており、もう一方の候補があなたの希望に訴えようとするならば、みなさんは希望を語る候補に投票すべきだ」。フロリダやオハイオに比べれば重要度が低いとされるここオレゴンでも、少し周囲を見渡せばその希望というか、熱気は伝わってくる。アメリカという国は先進国としては考えられないくらい大規模な選挙不正が時に起こる国だけれど、よほど大きな不正がない限りケリーは勝てそうだという希望をわたしも感じるようになった(とはいえ、前回それで負けたわけだし油断できないが)。

だいたい、わたしがリベラル寄りだからそう感じるのだけなのかも知れないが、ここのところ共和党が発するメッセージをいくら読んでも「今のまま歩み続ければそれで良し」「ケリーはこんなに頼りにならない」というだけで、何ら希望が感じられない。今日のニュースを見ていると共和党内でも最右翼であるボブ・スミス元上院議員(「共和党はリベラルすぎる」として一時期離党したことすらある)が唐突にケリー支持を打ち出して周囲を驚かせたと報じられていたが、ケリーの政策を支持しているわけじゃなくて、ただ単にブッシュの率いる「アメリカ」に全く希望が感じられないことが理由だったんじゃないかと感じた。

注目すべきは、選挙が終わった後、今回大活躍を見せたリベラル連合がどうなるかということだ。共和党はこれらの市民団体の活動は実質的に選挙資金規正を骨抜きにするものなので規制強化を狙っているが、共和党の側だって保守系の市民団体が流すコマーシャルなどの恩恵を受けているわけで簡単にはいかないだろう。そもそも、選挙資金規正が行われた理由は、献金への見返りとして利益誘導的な政治が行われることを防ぎ、少数の献金者に過大な影響力を与えないためだろうが、一般の市民がたくさん集まって政治的な主張をすることまで規制する必要はないはずだ。やはり、もしリベラル大連合が崩壊するなら内部からであろう。

わたしは、「少数者がみんな連帯して全体で多数になろう」というナイーブな多数派戦略は信用できないし、反グローバリズムのマルチチュードが云々という文章を読むと「アホかお前は」と感じる。それでも、少なくとも現時点において「非集権的・ネットワーク型」の労組・市民運動連合体というのが素晴らしく機能しているのは認めざるを得ない。果たして、ブッシュという共通の敵を倒したあと、ケリー大統領の権力にぶら下がって腐敗するのではなく、常にケリーを監視し、さらなる前進を求めて圧力をかけ続けることができるのか。ケリー政権が実現したあとも、民主党にベッタリくっつくのではなく、緊張感のある協力関係を持ち続けることができれば良いのだが。

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