2008年米大統領選挙に向けて、当たらない予測(というか希望)

12/23/2006 - 1:29 am | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

アクセス記録を調べていて、ここのところ「バラック・オバマ」(上院議員=民主党・イリノイ州)で検索してこのブログにたどりついた人が非常に多いことに気付いたので(そういえば数週間前に米国の週刊情報誌が一斉にオバマ特集をしていたので、それを読んだ日本人記者がマネしたんだろうか)、期待されているかもしれない大統領選挙の話題。ひびのまことさんいわく、わたしの予想は外れるらしいので(というか、こうなって欲しい、という期待がかなり混じっているからだけど)、あんまり信じないように。

まず民主党。わたしはオバマが2年後に大統領選挙に出る事はあり得ないと思っていたんだけれど、どうやら本人は結構本気のようで不安になってきた。わたし自身、オバマのことを「クリントン前大統領に似たカリスマの持ち主だなぁ」と思っていたら、クリントンどころかケネディと比べる人まで出てくる様子(それは言い過ぎだろうが)。不安だというのは、負ければせっかくのスターに傷が付くし、もし今の時点でめでたく勝って大統領になっても経験不足というか政界にコネが少な過ぎてまともにかれ自身の政策を通すことなんてできないから。

ブッシュやクリントンがいかに無能でも「あいつはバカだった」で済むけれど、オバマが大統領としてどの程度成果を残すかには米国における今後の人種問題の行方がかかっている。こんなことをかれ一人に背負わせるのも酷だと思うけれど、米国史上はじめてのアフリカ系アメリカ人大統領となるのであれば、ただ大統領になるだけじゃなくて、誰もが認める偉大な大統領になってもらわなくちゃ困るんだ。でも現状ではそれだけの準備がかれにあるとは思えないし、かれ自身の準備が仮にできていたとしても、それだけじゃ議会は動いてくれない。議会と協力しなければ何の政策も通らない。

それでも出るというなら、少なくとも民主党指名選挙までなら勝てる見込みはかなりありそう。アイオワ(1番目)、ネヴァダ、(2番目)サウスカロライナ(4番目)という序盤の重要拠点で(それぞれの地元出身の候補に次ぐ)2位を確保しながら、南部諸州で一斉に予備選挙が行なわれるスーパーチューズデーで一気にトップに躍り出るというのがそのパターン。

選挙では、まだ2年前に上院議員に選ばれたばかりで経験不足な点を攻撃されるだろうけれど、それに対する対策もわたしは考えた。同じイリノイ州には過去にも下院議員を一期やっただけで大統領になった人物がおり、その人の再来としてのイメージを強く押し出すというのがそれ。イリノイ州から大統領になった先輩とは、もちろんかのリンカーン。黒人奴隷の解放を宣言したリンカーンと同じ州から、今度は黒人政治家として初の大統領の座を狙うオバマが登場したことに、有権者が壮大なストーリーを見いだす事ができれば、オバマの勝算はかなり高くなる。

もちろん、『ヤバい経済学』でも書かれていた通り、世論調査で黒人候補を「支持する」と答える人の一部は実際には投票しない傾向があったりするし、それ以前にミドルネームが(サダム)「フセイン」でラストネームが「オサマ」(ビンラディン)の一文字違いというかなり偏見持たれそうな名前を持った候補が本当に勝てるのか、かなり不安も感じる。個人的には、オバマが大統領選挙に出るのはもっと先でいいと思うのだけれど、もし今回出たらやっぱり応援したくなると思う。

そのオバマの出馬で一番割を食うのは、もちろんヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク州)。単に手強い競争相手というだけでなく、クリントンは予備選挙の序盤は(どうせ知名度の無い小物ばかりの小競り合いなので)手を抜いて選挙資金を温存しておいて、途中から圧倒的な知名度で参入するという戦略を取っていたはずだけれど、オバマが出ることでとりあえず知名度だけに頼った独走はなくなった。これは、知名度で劣る他の候補にとってもチャンス。

わたしはもともとクリントン議員は嫌いだし、仮に民主党指名を取っても本選挙で勝てないと思っているのだけれど、世論調査だといまのところ一位らしい。多分、彼女とオバマ以外の候補を知らない人が多いだけなんじゃないかと思うけれども、オバマがどれだけクリントンを脅かすことができるのかがポイントとなりそう。どちらにしても、2004年のジョン・ケリーと同じく、東海岸のリベラル(といっても彼女は実はそれほどリベラルではないのだけれどイメージとして)が本選挙で勝つことは当分なさそう。

このブログを以前から読んでいる人なら、オバマの出馬が噂される以前、わたしはビル・リチャードソン知事(ニューメキシコ州)を支持していたのを知っていると思う。クリントン政権でエネルギー庁長官・国連大使を歴任したリチャードソンは、最近では北朝鮮の核問題への対処でブッシュ政権を援護するために中国の担当者と非公式に協議したように、「外交が分かる地方知事」という経歴がウリになりそう。また、全米で唯一のラティーノ系知事として、ラティーノの支持を集めそう。

しかし一方でメキシコ系移民に敵意を感じる人や、黒人より先にラティーノが成功することを妬む一部の黒人民主党員の離反などによりダメージを受ける可能性もある。いずれにせよ、現時点ではほとんど知名度がなく、派手なパフォーマンスをするタイプでもないので、かなりの乱戦にならなければ勝ち目はないか。リチャードソンが党指名を勝ち取るには、全国で2番目に行なわれる同じ南西部のネヴァダ州の予備選挙、そしてスーパーチューズデーのアリゾナ州・ニューメキシコ州を制覇するのが前提。それができない場合、スーパーチューズデーの翌日に脱落必至。

前回の大統領選挙に出た中では、ジョン・ケリー上院議員(前回民主党候補)、ジョン・エドワーズ元上院議員(副大統領候補)、ウェスリー・クラーク元NATO軍司令官、デニス・クシニッチ下院議員が再挑戦。何の魅力も感じられず「東海岸のリベラル」であるケリーは問題外として、この中で一番有力なのはエドワーズか。かれは南部(ノースカロライナ)の貧困家庭出身の弁護士で、人種や経済階層によるアメリカ社会の分断の克服を訴える「1つのアメリカ」というスローガンが冴えを増している。ただ経験不足(上院議員一期のみ)はオバマと同じなので、ブッシュがチェイニーを選んだように重量級の副大統領を担ぐ必要がありそう。エドワーズが勝つには、アイオワ・ネヴァダ・ニューハンプシャーまで3位以内を維持したうえでサウスカロライナで1位を取り、そのままスーパーチューズデーで南部を一掃する必要がある。とすると、オバマと最も直接競合するのはエドワーズかもしれない。

それ以外に出馬しそうな上院議員や知事が何名かいるけれど、いまのところ実際に立候補を表明したのはアイオワ州のトム・ヴィルサック知事だけ。もともと大した政治家とは思っていなかったけれど、数日前テレビで演説しているところを見かけて、ケリーに並ぶくらいの魅力のなさに「こりゃ駄目だ」と思った。それでも全国で最初の指名獲得競争(党員大会)が行なわれるアイオワの州知事が立候補した影響は甚大で、はっきり言ってえらく迷惑。最初のステージであるアイオワは、知名度のない候補が自分の勢いを見せつけて一気に注目を浴びようとする舞台なのに、その地元の知事が出て党員の票を集めてしまってはそうした意義が失われる。しかもヴィルサックは、アイオワ州外で勝てる見込みが全くないのだから困ったものだ。もしかして、自分が立候補しておいて「誰に自分の票を譲るか」を餌にパワーブローカーにでもなろうとしているんだろうか。

これまで出馬する意向を見せている候補はこれだけだけれど、まだ忘れてはいけない大物が一人残っている。2000年の大統領選挙でおそらく勝利していながら大統領の座をブッシュに奪われて以来、イメージを刷新して再登場したアル・ゴア元副大統領だ。かつて「人間味がない」「信念が感じられない」「当たり障りのないことしか口にしない」と言われたゴアが、ここ数年の講演や地球温暖化問題を扱った映画「An Inconvenient Truth」を見る限り、いつの間にか信念を熱く語るタイプの政治家に生まれ変わっているのだ。知名度も実績もあり、来年アカデミー賞を取るようなことがあれば話題性も抜群のゴアが唯一の欠点を克服したとなれば、オバマもクリントンも吹き飛ぶはず。ゴアはいまのところ温暖化問題の活動が忙しくて大統領選挙への出馬は考えていないと言っているけれど、かれが立候補するのは予備選挙の直前でも構わない。

というわけで、わたしにとって理想のパターンは、ゴアが民主党の指名を勝ち取りオバマを副大統領候補にして本選挙で共和党候補に勝つこと。オバマはまだまだ若いんだから、8年間副大統領をやってから大統領をめざせば良い。そうすることで、オバマの最大の弱点=経験不足は解消できる。優秀な実務家であるゴアは、オバマにとって良い手本になるはずだしね。ゴアも、自分の任期でそれなりの成果を残すとともに、史上初の黒人大統領を育てることで歴史に名を刻まれることになる。地球温暖化問題も大切だけど、オバマを偉大な大統領に育てることも米国の将来のためにはすごく重要なことだと思う。

続いて共和党の側。こちらは今年の中間選挙で大敗して以来、責任のなすり合いから党内が分裂気味だけれど、次期大統領選挙では勝ち負け以前に党内を融和できる大統領候補を出すことが将来の分裂回避ためにも必要。その点から見て、現在世論調査で上位を占めている、中絶容認で同性愛者に好意的な(男性同士のカップルとハウスメートだったこともあるくらいだ)ルーディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長や、何を考えているか誰にも分からないジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州)が指名を得ることはまずありえない。そんなことになれば、宗教右派勢力が離反して第三の候補を出すに決まっているから、そうなる前に共和党内の有力者が介入するはず。

左右のバランスを取る政治家としては、マサチューセッツ州のミット・ロムニー知事やネブラスカ州選出のチャック・ヘーゲル上院議員あたりは政治通の評判が高い(わたしも嫌いではない)。しかしロムニーはモルモン教徒であること、ヘーゲルは(外交リアリズムの立場から)ブッシュ政権を痛烈に批判しすぎたことから、やはり宗教右派の支持は得られない。

かといって右派に近い候補に目をやると、移民排斥で名を挙げたトム・タンクレド下院議員(コロラド州)やダンカン・ハンター下院議員(カリフォルニア州)など明らかに小物すぎる。右派で一番有力なのはサム・ブラウンバック上院議員(カンザス州)だが、こんどは学校で進化論ではなく創造論を教えるよう主張するなどあまりに保守的すぎて党内穏健派に受けられようもない。

そう見て行くと、ブラウンバックら右派とジュリアーニら中道派のあいだで対立が深まったときに、両者が受け入れられる候補が登場して一気に党内をまとめるということがあり得る。このポジションに入り込もうとする候補は、現在3人いる。

まず第一に、共和党が団結して大勝した1994年の夢を再びということで、ニュート・ギングリッチ元下院議長(ジョージア州)の再登場。わたしはギングリッチは嫌いじゃなくて、歴史学者らしいしっかりとした歴史観を持つ政治家として評価しているのだけれど(その政治思想には反対だ)、やはり過去の人っぽさは拭えない。90年代あれだけ力を持ちながら、うまくクリントンの敵役をやらされて人気は最悪だったしね。

第二の候補は、ウィスコンシン州の元知事で、第一次ブッシュ政権で厚生長官を務めたトミー・トンプソン。中絶反対派でありながら、厚生長官として胚幹細胞を使った研究を推進するなど極端に宗教右派の影響下にはなく、また州知事時代に実施した福祉改革が1996年に連邦レベルで可決された福祉改革のモデルとなったことから、行政官としての手腕も認められている(その福祉改革自体は、わたしから見ればサイアクだったわけだけど)。

しかしわたしが本命と見るのは、第三に挙げるマイク・ハカビー州知事(アーカンソー州)。まだ知名度の点で全国レベルではないのだけれど、政治家になる前はバプティスト教会の牧師だったという経歴を持ち、趣味のアウトドアを通して州立公園の整備を訴え、肥満による糖尿病の診断をきっかけに50キロの減量に成功すると「健康」をキーワードにするなど、豊富なアピール要素を持つ。

さらにハカビーの評判をあげたのが、昨年アーカンソーに隣接するルイジアナ州ニューオーリンズを巨大ハリケーンが襲ったとき。「書類は後回しで今すぐできることを」を掛け声に、たとえば薬が必要だけれど処方箋を持たない人に薬剤師が独自の判断で薬を与えられるようにするなど、大幅に政府の規制を緩和して、大挙して押し寄せる避難民に適切な支援をした。同じ時期にブッシュ大統領が無為無策によって混乱を拡大したことと比べてどちらが大統領格か明らか。

ハカビーが共和党の大統領候補指名を受ける場合、外交・軍事面での経験不足がネックとなるので、そちらの経験を持ち、しかしイラク戦争に関与していない(国民の厭戦気分を害しない)副大統領候補が必要。わたしなら、ブッシュ政権の外交政策から決別する意味でヘーゲル上院議員を選ぶ。

というわけで、わたしが選ぶ最高の組み合わせは、民主党ゴア/オバマに対し、共和党ハカビー/ヘーゲル。というか、もちろんわたしは民主党に勝って欲しいから、共和党候補が小物だったり分裂状態だったりしたらもっと都合が良いわけだけれど、そういう党派的なことや政策の是非を抜きに両党から大統領に最もふさわしい候補を選べばそうなる。

でもいまのメディアの報道ではクリントン対マケインあたりが想定されていて、それはまぁ普通の見方をすればそうなのかもしれないけど、どっちも短期的な人気取りのために言う事をコロコロ変えるような候補じゃ、選挙戦を見物していてつまらないじゃないの。本物の政治家同士が信念と政策を闘わせるような選挙を見たいから、上記のような組み合わせを期待したいところです。

ところで、しばらく前の記事になるけれど CNN が10月26日に報道した世論調査によると、「ジョン・マケイン」と「ヒラリー・クリントン」のどちらに投票するかを聞いたところ1%差でマケインと出たが、マケインの相手をミドルネームを加えた「ヒラリー・ロダム・クリントン」にして聞いたところクリントンが6%差で勝利する結果となったという話。

「なるほど、ロダムというミドルネームを入れればイメージが良くなるのだな」と思ったら、そうでもない。同じ記事によると、共和党候補がルーディ・ジュリアーニだった場合、「ヒラリー・クリントン」はジュリアーニに4%差で勝つのに、「ヒラリー・ロダム・クリントン」だと差は1%に縮むという。つまり、「ロダム」を入れた方が良いかどうかは相手にもよるということになり、そもそもそんなことで支持率が3〜7%も動いてしまうということ自体が謎。まぁ多分単なる偶然なんだろうけど、それだけ世論調査はあてにならないというか、政治を真面目に議論することが無意味な気がしてくる。

こんなに長いエントリを読ませておきながら「意味ありませんでした」というオチになってしまってごめんなさい。

One Response - “2008年米大統領選挙に向けて、当たらない予測(というか希望)”

  1. macska dot org Says:

    バラック・オバマ議員及び米大統領選挙関連エントリ…

    最近日本でも大統領候補の一人とされるバラック・オバマ上院議員についての報道が多くなり、それはそれでいいんだけれど、日本語で「オバマ」を検索するとわたしが2年以上も前に書 (more…)

コメントを残す

XHTML: You can use these tags: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>