「DVに反対する全国連盟」(NCADV) 会員への公開書簡(邦訳)

2004年7月4日 - 5:28 AM | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

NCADV のメンバーのみなさんへ
フロリダ州オーランドで開かれた前回の NCADV 全国大会において、「ドメスティックバイレンス(DV)とホームレスについての公開フォーラム」と題された会合が持たれました。ところが、何人かの元ホームレスのDVサバイバーたちがこの「公開フォーラム」に行ったところ、この会合は彼らが思っていたほど「公開」されていはいませんでした。
もちろん、彼らが物理的に排除されたという意味ではありません。しかし、この「公開フォーラム」の意図に彼らの存在が考慮されていなかったことは明らかでした。主催者がこの「公開フォーラム」に意図したことは、DVに関係した団体などで働く専門家同士で、「どうしてDV被害者の一部はDV専門のシェルターではなくホームレスのシェルターに行くのか?」といった、実際の被害者やホームレスの人たちの経験とはかけ離れた議題について意見を交換するための会合だったのです。地元のホームレスの人たち(DVが原因でホームレスになった人は多い)はこのせっかくの機会に意見を述べるよう招かれはしませんでしたし、彼らを呼び入れるための広報すらされていませんでした。
こうした専門家たちが意見交換をしていたあいだ、地元のホームレスの人たちはオーランドの市議会に駆けつけていました。 NCADV の大会で「公開フォーラム」が開かれているちょうど同じ頃、オーランドの市議会は「歩道に座り込んだり、寝転がることを禁止する」条例を可決していたのです。当時オーランドには全国から集まった数百人ものフェミニストたちや反DV運動の指導者たちが集まっていたにも関わらず、目の前で「貧困」を犯罪として扱おうとしている市議会に何ら抗議も抵抗もしなかったのです。いや、そればかりか、本当はホームレスの人たちのために何もしていないのに、まるで何かしているかのようなアリバイ作りをしていたのです。
大会閉幕までに、NCADV に今後ホームレス支援団体とのより緊密な協力を求め、次回の NCADV 全国大会においてこの議題について本物の「公開フォーラム」を開くよう求める共同声明の執筆にわたしは参加しました。この声明を非白人のクィアたちらのグループにも賛同してもらった後、閉幕式の最中に読み上げるよう要求しましたが、NCADV の執行部に拒否されたため、賛同したグループによって閉幕式の最中にステージを乗っ取って読み上げました。会場からは大きな拍手があり、司会をしていた NCADV の役員はこの問題について執行部で議論して正式に返答することを約束しました。
それからもう2年近く経ちますが、未だに執行部からの回答はありません。
昨年の12月1日、わたしは今年の大会にむけたワークショップ(「フェミニズム、そしてDVシェルター内部における権力と責任」という内容です)のプロポーザルを提出しました。それは、この日がプロポーザル提出最後の日であり、また大会までにまだ執行部がきちんとした対応をする時間があると感じたからです。
ところが、2月になってもまだ回答がないため不安になったわたしは、再び NCADV に回答を求めるメールを送りました。対応してくださったスタッフの方は執行部にきちんと伝えると言ってくれましたが、その後も回答はありませんでした。
3月9日には、そのスタッフの方から、わたしに対して今年の大会で「DVとホームレス」のテーマでワークショップをして欲しいという以来がありました。もちろんわたしはこうしたテーマでワークショップをすることに興味がありましたが、共同声明への回答を何らしないままワークショップだけしろというのは無責任であると感じたので、執行部が回答をいまだに遅らせていることを指摘し、ワークショップについて話すのはそれが片付いてからだと答えました。
その後も、何度か NCADV から「フェミニズム〜」のワークショップに関して発表者としての登録を済ませろだとか、大会参加の登録をしろという連絡がありましたが、その度に NCADV 執行部からの回答がない時点でそのような大会にわたしが参加するかどうかは決められないと答えました。スタッフの方は、執行部にはちゃんと連絡しており、彼らからの回答がない理由は分からないと言っていました。
さて、今週になって、今年の全国大会の案内を受け取りました。中身を見てみると、発表者登録すらしていないのに、わたしの「フェミニズム〜」がプログラムに組み込まれており、一方「DVとホームレス」の問題に関する内容は一切見当たりませんでした。さらにわたしが驚いたことに、今回の大会のテーマは「大々的な社会変革を求めて」だというのです。
わたしは、NCADV の執行部が共同声明でわたしたちが提示した要求を受け入れて欲しいとは願っていましたが、必ず受け入れるだろうとまでは信じていませんでした。しかし、受け入れるかどうかに関わらず、わたしたちを完全に無視して何の回答もしないとは全く考えてもいませんでした。わたしはこれまで、何らかの回答をするための時間と機会を十分に執行部に与えたはずですが、それでも全く何も反応は無かったのです。
最初、わたしはこの公開書簡を NCADV 執行部に当てて書こうと思っていましたが、何度も何度も同じ事を書いて無視され続けるのは愉快なことではありません。そこで、わたしは執行部でなく NCADV の一般のメンバーに宛ててこの手紙を書いているのです。
これまでのやり取りで NCADV 執行部が取った行動(というよりは、取らなかった行動)は、この団体が主張しているあらゆる基本的な理念に反しています。そう思いませんか? そう思ったなら、何か行動を起こしてください。わたしは執行部に恥をかかせるつもりはなかったので全てのやり取りを私的なメールで行ってきましたが、大会まで2週間を切った今、わたしのやり方は無効であったと考えざるを得ません。 NCADV の執行部の人たちは、わたし一人が諦めてどこかに行けば問題は片付くと考えているのでしょう。
彼らのこうした戦略は、諦めなくてはいけないのがわたし一人しかいなかった場合のみ有効です。もし、たくさんの人たちが諦めるのを拒否するならば、彼らは別の方法でこの問題に向かい合うしかなくなるでしょう。だから、NCADV のメンバーや支持者のみなさんには、何らかの行動を起こすようお願いします。わたしは何か1つの抗議方法を提唱しません。それぞれの人が、自分が有効と考える方法で、NCADV の執行部にどういう役割を求めるか伝えてください。決して、何事も無かったかのように今回の大会を開いて、終わらせるような事を許してはいけないと考えます。

One Response - “「DVに反対する全国連盟」(NCADV) 会員への公開書簡(邦訳)”

  1. ひっぴぃ ♪♪ Says:

    「わたしは何か1つの抗議方法を提唱しません。それぞれの人が、自分が有効と考える方法で、NCADV の執行部にどういう役割を求めるか伝えてください。」というのがいいなと思いました。一人一人が主体的に動く可能性を広げる方向だなと思ったから。
     多くの人で議論する場を創ることができたらいいですね。

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