ある「炎上」「ネットいじめ」に抱く、いやというほどの既視感

8/27/2010 - 10:23 am | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

2ちゃんねるやミクシィなど、ソーシャル系のインターネットサイトを震源とする、一般人のブログ「炎上」や、個人情報を悪用した嫌がらせなどが、問題として取り上げられるようになって久しい。この短い文章では、そうした問題についての日本における議論の参考とするために、先日英語圏(とくに米国)で騒がれた、ある「ネットいじめ」の事例について、紹介してみたい。文中で言及している動画やコメントは、既に知っている人もいると思うし、英語がちょっと分かる人が検索すれば一発で出てくるけれども、不必要に晒したくはないのであえて省く。

事件の概要は次のとおり。被害者は、MySpaceやFacebookなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)サイトに自分の画像や動画などを掲載していた11歳の女の子。彼女があるバンドのミュージシャンと一緒に撮った写真を自分のプロフィールに掲載したところ、そのミュージシャンは過去に性犯罪での逮捕歴があり、11歳の女の子とも性的な関係があるのだろう、という憶測が、動画中継サイトStickamを使ったゴシップサイトに掲載された。それをきっかけに彼女が自分のSNSページに掲載していたさまざまな画像——中には、年齢に相応しくない、やや性的なものもあった——が複数のサイトで晒され、彼女のSNSページには彼女を尻軽だとかブスだと中傷するコメントが多数書かれた。

それに対して彼女は、YouTubeなどを通じて中傷を書き込んだ人たちに反論し、また口汚く挑発する動画を発表した。その動画が注目を集め、彼女に対する悪口がさらに多数書き込まれ炎上しただけでなく、4chan(日本の「ふたばちゃんねる」方式の匿名画像掲示板)において、彼女の「性的な」画像とともに、彼女の実名や家族の住所などの個人情報が晒された。また、そうした情報を見た人の一部が、実家に嫌がらせ電話をかけて反応をYouTubeやTumblrなどで報告したり、出前の注文を入れたりという嫌がらせを行った。

また、彼女が自分自身の性的な画像を公開していることについて、親のネグレクトあるいは性的虐待であるという通報が警察に寄せられた。その一方で、彼女や嫌がらせ電話に出た母親に対して「レイプしろ」というコメントも書き込まれ、彼女の身の安全も懸念される事態になった。

これらのいじめ行為を受けた女の子は、最終的に涙を流しながら「もう嫌がらせはやめて」とYouTubeで訴えようとした。しかしそこに彼女の父親が登場し、嫌がらせに加担した人たちに対する激しい怒りをぶちまけた。ところがこの父親はネットの仕組みをよく分かっていなかった様子で、「サイバーポリスに届け出た」「お前らみんな逆探知して正体は分かっているぞ」と、ありえないような内容を口にしてしまった。

それに加え、父親の口調や文法的な特徴があまり公式の教育を受けていない人に典型的なものであったこと、さらにかれの口ひげがちょっとユニークな面白い形だったことなどが相まって、その動画がそれまでの経緯を知らない人にも「笑える動画」として、リミックスやマッシュアップ版も含めて、広まってしまう。その結果、YouTube、MySpace、Facebook、Stickam、4chan、Tumblr及びこの動画を取り上げたさまざまなブログにおいて、女の子とその父親に対する中傷がさらに書き込まれた。

その後、被害者の女の子の安全のために警察が介入する事態になっており、また一部の良心的なブロガーによって、当初はただの笑える動画と思われていたものの背景に、深刻な「いじめ」があったという認識が広められたこともあり、ある程度沈静化した。とはいえ、無責任に「炎上」に加担した人たちを批判したブロガーを中傷し、そうしたサイトへのDoS攻撃を示唆するようなスレが4chanに立つなど、その後も一部では騒動が続いた。

日本において2ちゃんねるやミクシィなどで起きる、さまざまな「炎上」「ネットいじめ」「個人情報漏洩」といった事件についての報道を見てきた人なら、英語圏でのこうした事件についてこれまで一度も聞いたことがなかったとしても、上記の経緯に激しく既視感を覚えるのではないだろうか。そうした事件が起きるたびに、このような事態が起きたのは日本の文化や国民性に関係しているとか、日本のネット圏は匿名文化だからというような、もっともらしい説明が行われてきた。

しかし今回米国に住む11歳の女の子とその家族を襲った事件は、日本で起きたいくつかの事例と、その展開や暴走・炎上の経緯まで、あまりに似通っている。文化の違いというのは確かにあるだろうけれども、似たようなアーキテクチャさえあれば、こうした事件はどの国で起きてもおかしくないのではないだろうか。他国におけるこうした事例を知ることを通して、日本国内の事象を安易な日本特殊論で説明してしまうことには慎重になる必要があるだろう。

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(この記事は、メールマガジン α-Synodos(アルファ・シノドス)第57号(8月1日発行)及びシノドスブログに掲載されたものを再掲しました。)

3 Responses - “ある「炎上」「ネットいじめ」に抱く、いやというほどの既視感”

  1. しゅう Says:

    しばらく更新がなかったのでちょっと心配してましたが,更新があってよかったです。
    まだまだ残暑が厳しいですが,体調を崩されることないようにご自愛くださいー(゜゜

  2. とんぼ Says:

    今回の米国でのネットいじめはたしかにひどいものですが、日本の炎上をウィキで調べたところ、ずいぶんネットいじめと炎上は違うものだなと思いますよ。日本の場合、例えば、チンピラがバイクで車にぶつかりそうになって腹が立ってその車から運転手を妻子の見ている前で引き釣りおろして土下座させた、などというかなり悪質な記事に起こるものです。今回の米国のネットいじめと日本の炎上は全く違うものです。そしてなぜ、米国のいじめや殺人、あるいは情緒的に腹が立つ問題があるとすぐに「日本もひどい、いや日本のほうがひどい、日本は本当にクソ、日本は滅びろ!」といった非常に意味不明な自虐的な体質になるのでしょうか?わたしはこういった日本人の体質のほうがなぞです。

  3. あかるくいきる Says:

    こんにちは。学者さんはすごいですね。ええと、私が書きたかったことは、やはりこれは、ある種の、消費文化の結果ではないかと思うのですね。それでは、サイト止めればいい、携帯禁止すればいい、監視すればいいのではないか、とアナログ文化のおばさんは思うのですが、それはできないのですね。結局、監視しても、それをかいくぐって、いじめは行われるものですし、誰も携帯を持っていない自分には、繋がっていない自分にはなれないのです。ほんの10年前はそんなに子供携帯もっていなかったのではないかと思うのだけれども。

    私もつまらない人生送っているものですから、慰めにために、コミュニテイサイトにじぶんのだめな人生を書いたり、共感してもらえそうな人に自分の人生についてメールしたら、今日、きっぱり、お前がスキルがないからだよと、ある若い女性から応援メールが来ました。自分が仕事が見つからないのを中年のおばちゃんであるせいにしてばかりでみっともない「能力がないのは否定しないが、面接時年齢で、おばちゃん、中古品といわれる女性多いんです、あなたは知らないだろうけど」日本は女性に対して様々な政策をし、たくさんの有能な女性が大活躍している。私のように。「そうですか、でも、私は下層の出身で、あなたのようにコネや恵まれた土台があるわけじゃない」私は有能で、能力がありスキルがあるから、ちゃんとした人生をおくっているのだ、といわれました。そうですか、順風満タン能力主義のエリートフェミニスト様。あなたのような人は、これから上層でがんばってください。この複雑な社会構造を、大部分の女性が、社会の場での発言、自己実現できない仕組みを知ることなんて一生ない不感症なエリートが上層部にいて、多くの女性をスキルがないというだけで、黙殺し差別しているという事実を確認しただけです。

    すみません、エリフェミによる、下層庶民失業者のネットいじめの話になってしまいました。
    あやってばかりいる、消費社会の落伍者
    あかるくいきる

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