クラインフェルター症候群とXXY性染色体の関係

2004年6月23日 - 4:39 AM | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

インターセックスに関係したことなら大抵のことについて知ってるつもりだったのだけれど、今さらになってようやく理解したことがあるのでここでも紹介。もしかしたら勘違いしていたのは自分だけかも知れないけれど。ことの発端は、「クラインフェルター症候群とXXY性染色体保持とは違う、自分の性染色体はXXYだがクラインフェルターではない」という主張する人がいて、最初は「なるほど、そういう風にアイデンティファイする人もいるんだな」程度に思っていたのだけれど、別の場所で別の人から同様の発言を聞いて、「実際のところどうなのだろう」と調べてみる気になったのね。
もちろんわたしだって「全てのXXY性染色体保持者が同じ症状を見せるわけではない」とは分かっていたけれど、観測できる症状のあるなしを問わず「XXY性染色体を持つことそのものをクラインフェルターと呼ぶ」という理解だった。ところが、National Institute of Health のクラインフェルター関連ページを読んでみると、それは間違いだったらしい。以下はその引用:

Although the syndrome’s cause, an extra sex chromosome, is widespread, the syndrome itself-the set of symptoms and characteristics that may result from having the extra chromosome-is uncommon. Many men live out their lives without ever even suspecting that they have an additional chromosome.
“I never refer to newborn babies as having Klinefelter’s, because they don’t have a syndrome,” said Arthur Robinson, M.D., a pediatrician at the University of Colorado Medical School in Denver and the director of the NICHD-sponsored study of XXY males. “Presumably, some of them will grow up to develop the syndrome Dr. Klinefelter described, but a lot of them won’t.”
For this reason, the term “Klinefelter syndrome” has fallen out of favor with medical researchers. Most prefer to describe men and boys having the extra chromosome as “XXY males.”

このページに書いてあることをまとめると、だいたい経緯は以下の通りのようです:
・1942年にハリー・クラインフェルター医師がのちにクラインフェルター症候群と呼ばれる一定の症状を持った男性たちについて報告。
・50年代後半には、クラインフェルター症候群を持つ男性が共通してXXY性染色体を持つ事が解明され、この時点でクラインフェルター症候群とXXY染色体保持が同一視される。
・ところが新生児を対象として70年代前半に行われた大規模な調査において、知られていたクラインフェルター症候群の発生率よりもXXY性染色体を持つ男児がはるかに多いことが判明、その多くがクラインフェルター医師が認識したような症状を持たないこともわかる。
・そのため、現在では多くの研究者はXXY性染色体を持つ男性全体を「クラインフェルター症候群」「クラインフェルター男性」と呼ばずに、「XXY男性」と呼ぶようになっている。
というわけで、「XXY」と「クラインフェルター」はきちんと区別して使いましょう、という話。実際にいろいろ検索して見たところ、一般にはほとんど区別されていないようで、研究者たちの間の話だけなのかも知れないけど。
ちなみに、Klinefelter を Kleinfelter と間違ってスペルしている人も多くて、Kleinfelter で検索してもたくさんのページが出てきます。

One Response - “クラインフェルター症候群とXXY性染色体の関係”

  1. Jose Yacopi Says:

    >ところが新生児を対象として70年代前半に行われた大規模な調査において、知られていたクラインフェルター症候群の発生率よりもXXY性染色体を持つ男児がはるかに多いことが判明、その多くがクラインフェルター医師が認識したような症状を持たないこともわかる。
    従来遺伝子があれば形質が発現すると単純に考えられていたが、実際に形質が発現されるためには、それぞれの遺伝子の転写レベルの発現が必要で、たとえ遺伝子が存在していても活性化されていなければその形質は表面にでない。
    1960年代に、M. Lyon は、哺乳類のメスの体細胞では2個のX染色体の一方がランダムに不活化を受けて凝縮しヘテロクロマチンとなることを主張した。
    つまり活性化されたX染色体が他の一対のX染色体をトランスに不活性化していることがあきらかになった。これをlyonization という。
    この知見から、XXY性染色体をもつ男児が全てクラインフェルター症候群にならないのは、lyonizationが起きて、遺伝子数の上では異常でも質的に正常になっているからだと考えられている。

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