「同性婚合法化運動の英雄」ニューサムSF市長の献金パーティで抗議活動

12/13/2005 - 4:39 am | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

今週のはじめ、ポートランド市のコミッショナー(条例を審議したりするという意味では市議会議員のようなものだけれど、コミッショナー1人1人が行政官として特定の市政府部署を統括するという大都市では珍しい地位)のサム・アダムス氏から同報メールを受け取る。内容は、サンフランシスコのギャビン・ニューサム市長がポートランドで再選に向けた献金パーティをするから参加してくれ(寄付しろ)というもの。呼びかけ人のリストを見ると、アダムス氏のほか Basic Rights Oregon(オレゴンのLGBT権利擁護団体)やポートランドのゲイ&レズビアンの事業経営者(ゲイ&レズビアン関連の事業じゃなくて、経営者自身がゲイ&レズビアン)や民主党有力者が名を連ねていた。ある街の市長がそこから遠く離れた街で献金パーティをするというのは奇妙だけれど、明らかにニューサム市長は同性婚問題で得た名声を利用してポートランドのクィアたちから政治資金を集めようと思っている様子。

でも、全国的には(もしかすると全世界的にも)同性婚を推進したニューサム市長はリベラルだと思われているけれど、サンフランシスコでの評判はそうではない。かれはもともとホームレス叩きをして政治的にのし上がってきた人物であり、市長選挙では4人いた有力候補のうちもっとも保守的だとみなされていた。選挙戦開始当初は3人いた民主党員候補のうち実績のあるトム・アミアーノが有力だと思われていたのだけれど、アミアーノ支持グループの中からマット・ゴンサレスが突如「緑の党」の候補として出馬して選挙戦は混乱、結局最左翼のゴンサレスと最右翼のニューサムに票が集まって決選投票となる。ここで、先の大統領選挙で「緑の党」のラルフ・ネーダーに支持層を掻き回されて痛い目にあった民主党が党のスター(クリントン夫妻、ジェシー・ジャクソン師、ボクサー上院議員ほか)を総動員してニューサムの応援にまわった結果、僅差でかれが勝利した。つまり、こういった特殊な事情がいくつも重ならなければリベラルなサンフランシスコでは市長になれるはずがないほど保守的な政治家だったのね。

そのかれが、サンフランシスコで自身と政治的見解なり経済的利害なりを共にする産業界から政治資金を集めている限り、お金の繋がりが利益誘導になっていることを批判はできるけれど政治にはよくあることなので特に騒ぐこともない。今回の献金パーティの大きな問題は、かれが政治家として何を考え何をやっている人物なのか知りもしない善意のクィアたちが、同性婚の実績だけを理由にかれに献金してしまうことだ。サンフランシスコの事情をよく知らないポートランドの人たちの献金が原因でニューサムが再選され、そのためにサンフランシスコの貧しい人たちがより苦しむようになったらどうするわけ? そう思ったので、即座にニューサムに抗議するビラを作り、当日会場となった高級レストランの前で配布した。以下はそのビラの内容の訳。

ギャビン・ニューサムは進歩派政治家か?

昨年サンフランシスコ市長のギャビン・ニューサムは同性カップルに結婚証明書を発行することでゲイ&レズビアンの権利擁護のチャンピオンに登りつめました。確かにそれはクィアたちが平等を勝ち取るのに貢献した素晴らしい功績と言えるでしょうが、だからといってかれの他の政策について批判を抑えるべきだとは思いません。現実には、ニューサムは最も力の弱いわたしたちの隣人たちを長年守ってきたセーフティネットを破壊しようとする、産業寄りの「ニュー・デモクラット」の一人として政治キャリアをつんできたのです。

貧しい人たちを踏み場にしたニューサムのキャリア

2002年、当時サンフランシスコ市のスーパーバイザ(サンフランシスコは市と郡の両方であるので市議会議員をこう呼ぶ)だったギャビン・ニューサムは、極端に貧しい人やホームレスの人を対象とした公的支援プログラムを最大85%削減し、その代わりに社会サービスを増やすという内容の「Care Not Cash(お金ではなく手当てを)」というイニシアティブを起草し提案しました。ニューサムによると、貧しい人はお金を得るとすぐ麻薬やお酒に使ってしまうので、かれらの代わりに使い道を決めてやるほうが良いのだと言うのです。このイニシアティブは技術的な問題で違法だとして法廷によって停止されましたが、それによってニューサムはホームレスを毛嫌いしながらかれらからわずかなお金をむしり取ろうとする産業界の支持を得ました。

雑誌記事:ニューサムはサンフランシスコにいるほとんどのホームレスを苦しめた

不動産業界やレストラン業界の強力なサポートを得て市長になったニューサムは、ニューヨークでジュリアーニ市長が行ったのと同じようなホームレス・バッシングの政策をはじめました。ホームレスの人数と比べれば僅かでしかない数の住居が提供されたほかは、約束されていた社会サービスは増やされませんでした。さらに、過去に多くの人たちを支援してきたいくつもの社会福祉団体が閉鎖され、サービスを欠いた「サービス紹介センター」にとってかわられました。雑誌「プア・マガジン」によると、「Care Not Cash」は「サンフランシスコにいるほとんどのホームレスの生活をより困難にしました」。

ニューサムの政策は自由を求めて来た未成年のクィアたちを裏切っている

サンフランシスコには同性愛を嫌悪する両親に捨てられたり家庭における暴力から逃げ出したりした多くの未成年のクィアたちが集まっています。残念ながら、未成年のホームレスのうち40%がクィアであるというくらいに、かれらの多くは貧困に苦しんでいます。かれら未成年のクィアたちは一般のホームレス・シェルターでは嫌がらせを受けたり差別されたりしており、またより年長でお金持ちのクィアたちによって食べ物やお金や寝床と交換に性的な搾取を受けていますが、これは市がかれらに与える毎月59ドル(7千円くらい?)のお金では到底生活できないからです(そして、たったそれだけの金額を受け取るために、ワークフェアと呼ばれる奉仕活動をさせられています)。ニューサムが同性婚の合法化を推進したとしてクィアたちから拍手喝采を浴びているそのあいだにも、こうしたことが起きているのです。

同性婚、大賛成ーーでも、ほかにも大切なことがあるはず

ギャビン・ニューサムの再選のために献金する代わりに、以下の団体に寄付してください。もしあなたがそれでも同性婚の問題でニューサムを支援するというなら、かれに献金した額の倍だけこれらの団体に寄付してください。それから、せっかくお金を出して買った政治的なアクセスは、ストリートで生きる未成年のクィアたちのために賢く使ってください!

【サンフランシスコ及びポートランドのホームレス当事者団体及び当事者主体の支援団体の連絡先(省略)】

いつものことだけれど、わたしはこうした行動を起こす時は何を目的とするか考えてやることにしている。そうでなければ、自分だけ言いたいことを言ってスッキリするけれど実は自己満足なんてことになりかねないもの。今回の行動で最初に考えたのは、ニューサムに会おうと既にその場に来ている人に「中に入るな」と言っても無駄だということ。一応「ニューサムにお金をやるな、ホームレスのために寄付しろ」と言っているけれど、そんなことがないのは分かっている。また、参加者がサンフランシスコの市民ならばかれらにニューサムがいかに酷いかを訴えることにも意味があるけれど、ポートランドの人にいくらそれを伝えても何の意味もない。普段は小さな行動でもメディアを利用して大きな運動に見せかけるようなトリックを考えるのだけれど、今回ばかりは地元のメディアにいくらニューサムに批判的な記事が載っても意味がない。

そこで考えた目的その1、とにかくサンフランシスコのホームレス団体に寄付してもらうこと。そのために、リベラルな人が読んだらニューサムに献金しちゃったことを後悔しないまでもちょっと良心がうずくような文章を書いて、ニューサムに出した額の倍ホームレスの団体にも出せば許されちゃうみたいな感じにしておいた。こういうパーティでは軽く数百ドル単位の小切手が手渡されているから、もし1人でも2人でも本当に寄付する人がいたらホームレス団体は相当助かるだろうと思った。ビラ配っていて気付いたんだけど、レストランの前に停めてある大きな車のうちの1つのライセンスプレートが「IPO LLC」だったのね。IPOは initial public offering(株式公開)、LLCは limited liability company(有限会社)の略だから、「有限会社を大きくして、ゆくゆくは株式公開しよう」という意味なのか、それとも既にそうした人が自慢するために付けているのか分からないけれど、見るからに成金が乗りそうな車だ。せっかくリベラル寄りのお金持ちが集まっているのだから、こっちも同時にホームレス団体のための資金集めをしない手はない。

目的その2。ポートランドのメディアに載っても意味がない…ということは、サンフランシスコのメディアに載れば意味あるじゃん! 「サンフランシスコ市長がポートランドで献金パーティを開いた」なんて読んだら、サンフランシスコ市民は「そんなことしてないで仕事しろ」って思うし、「サンフランシスコ市長、ポートランドで活動家の反対行動を受ける」と載ったら自分たちの街の恥だと思うはず。これはいけそうだぞ、というわけで、サンフランシスコの友人に電話して載せてくれそうなリベラル系&クィア系メディアをいくつも教えてもらった。抗議行動はとても小規模なものだったのだけれど、そんなの写真がないから誰にも分からない。抗議のあと、すぐさまサンフランシスコのメディアにプレスリリースを送っておいた。

プレスリリースを書く際は、活動家が陥りがちな一方的な批判を抑え、どういう抗議行動があったのか、どうして抗議したのかなどを分かりやすく書くように注意した。これはわたしとしては大失態なのだけれど、普段ニューサム市長を見慣れていないから本人をすぐに判別できずに、間違ってかれ本人にもビラを渡してしまったことも書いた。さらに、その時のニューサムの反応も、ユーモアをぶち壊さないようにかれをイヤな人物っぽく描写することは我慢して、魅力が出ない程度にお茶目に描写しておいた。ポートランドで活動家がニューサムに抗議したけど、ポートランドの人はニューサムの顔を見慣れてないから間違ってかれにもビラをわたしちゃった、みたいな感じでユーモラスな話としてでも基本的な事実を報道してくれればそれでいいから。

でも思ったけど、ニューサムって評判通りの大物だわ。わたしはレストランの大きな窓を通して中を見ただけだけれど、30代後半にしてあのカリスマだもの。サンフランシスコの市長はやめて欲しいけれど、全国的な尺度で見ればサンフランシスコの「保守」は十分リベラルに入る部類。別のポジションに付けばそれなりにいいかもしれない。しかも同性婚問題でリベラルイメージが付いてしまったから、いまさら中道保守の政治家として出直すわけにもいかないし。いずれにせよ、今後かれがより上の地位に進出していく可能性はかなり高いと見た(現に、市長再選を口実に政治資金を集めているけれど、本当の目的は州知事選ではないかという噂もある)。これからも是々非々で臨んで良い政策は褒めつつ悪い政策を軌道修正するよう呼びかけていく必要がありそう(はーいせんせー、まず、髪にムースをつけすぎるのは一歩間違うと汚らしいのでやめた方がいいと思いまーす)。

あと、ポートランドのコミッショナーのサム・アダムスさん。かれはその夜だけで3件のパーティを掛け持ちだそうで早々に出て行ったけれど、帰り際にビラを受け取って数分のあいだビラの両面を真剣に読んでいた。政治的立場は違うかもしれないけれど(いやあんまり違わないかも)、演技でもなんでもなくわたしが作ったビラまでちゃんと読むなんて政治家として偉い人だと思った。かれは前市長のアシスタントを長年つとめていた人で、前市長にかなり批判的だったわたしは良い印象を抱いていなかったのだけれど、昨年当選して以来かれ自身の良い面がたくさんでているように思う。頼んでもいないのに勝手にメールを送ってくるのは困るけど(不特定多数にスパムしているわけではなく、一応わたしがクィア関係の団体の代表だから届くんだと思う)。

なんだ今日のエントリはどうなってるんだ、わたしが政治家を褒めてるなんて!

2 Responses - “「同性婚合法化運動の英雄」ニューサムSF市長の献金パーティで抗議活動”

  1. xanthippe Says:

    そう。選挙などのときに反対勢力だった人でも、拾い物かもしれないって政治家はおりまする。

  2. Yoko Says:

    ちなみに、1978年、SFのsupervisorだったHarvey Milkとともに暗殺されたMoscone市長に代わり、市長に昇格したのがDianne Feinstein(当時Board of Supervisors議長)。彼女は現在カリフォルニア州選出連邦上院議員。

    2003年の市長選についてWikiで見るなら、NewsomよりMatt Gonzalezのほうが面白い。
    http://en.wikipedia.org/wiki/Matt_Gonzalez

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