わたしの愚痴を聞いてくれなかった「アイアン・シェフ・アメリカ」

2005年1月19日 - 5:46 AM | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

料理専門ケーブル局フード・ネットワークでやっと「料理の鉄人」米国版「アイアン・シェフ・アメリカ」放送開始。やっとというのは、去年パイロット版として日本から本物の鉄人を呼んで米国人の新鉄人と対決というのを特別番組としてやっていて、オリジナルの日本版にこだわりがあったわたしはいろいろと不満な点もあったのだけれど、それ以来何も無かったのを寂しく感じていたから。知っている人も多いと思うけれど、日本での放送が終わってからもアメリカでは日本の「料理の鉄人」が英語吹き替えで延々と再放送され続けていて、わたし自身、周囲の友人とともに多分通算100回分くらいは見ているくらいハマっていたりする。
昨年放送された「アイアン・シェフ・アメリカ」のパイロット版は、わたしの周囲に数人いる「料理の鉄人」(オリジナル)のファンのあいだではあんまり評判が良くなかった。一般の挑戦者ではなく視聴者に良く知られた日本人鉄人が挑戦してくるということもあったせいか、シェフの背景を紹介するような人間ドラマ的なところが無かったし、そういう真剣な部分とのコントラスが素晴らしかったあのバカらしい筋書きや衣装といった要素が無くて変に真面目すぎるというのがその主な理由。細かい理由としては、対戦相手を司会者が勝手に決めてしまうのがドラマ的な面白さを削いでいるし、解説者がフォアグラを外見で判別できなかったり(わたしだってそんなモノ普段から食べてるわけじゃないけど、あの番組を見てれば分かるでしょうが)、審査員が明らかにおかしくて米国側シェフに甘すぎた(視聴者の電話投票では圧勝していた日本側シェフが審査で大敗していた)など出演者にも問題があった。
また、よりスポーツ的な要素を強めようとしたのかもしれないけれど、各シェフが料理を必ず5皿出すように決められていたり、点数の付け方が「味に最高10点、盛り付けに5点、独創性に5点」ときっちりと決められていたりした点も本来の面白さを大きく削いでいるように思えた。ホイホイと素早い調理で6皿も7皿も出す料理人がいたり、渾身を込めた料理を2皿だけ出してくる料理人がいたりするとそれだけでバラエティが増えるし、個性や戦略が見えてきて面白いはず。それにオリジナルの「料理の鉄人」の審査員は「独創性」をかなり重視してポイントを分配していたように思うのだけれど、そのおかげで審査員だけでなく視聴者の意表を突くような創意工夫がなされたのだし、例えば和食を専門とするシェフがフランス料理でよく使われるテーマ食材をどう調理するかといった点に強く興味を持てた。味の評価に偏重するなら、例えば和食の食材がテーマの回は和食の料理人が最強なのが当たり前で、つまらない。第一、盛り付けや独創性なら視聴者にもあれこれ評価できるけれど、味は評価できないのだから、視聴者の評価と審査員の評価が乖離しやすくなる。この料理人が作る料理は見た目も発想もつまらないけれど味だけは物凄く美味しいのだなんて言われても、観ていて全然面白くない。
そういう不満を抱いていたのはわたしの周囲だけで無かったようで、当時他の人のブログを覗いていても似たような事が書かれていたから、今度正式に「アイアン・シェフ・アメリカ」が放映開始されると聞いたときは、そうした問題のいくつかは修正されているだろうと思っていた。と言っても、アメリカ人のシェフがカラフルに輝く衣装を身につけるとまでは思ってはいなかったけど、挑戦者の背景をもっと詳しく紹介するなど人間ドラマ的な側面を追加するくらいはするんじゃないかと思った。何故かスポーツ専門チャンネルでやってる「ポーカー世界トーナメント」ですら競技者の背景をレポートしたりしているくらだから、米国人視聴者だってそういう事には興味があるはず。というより、背景を知れば勝負の内容にもっと興味が湧くというものだ。
ところが先日放送された第1回放送を見ると、ほとんど何もかもパイロットのままだった事に失望。良くなった点は、日本版でも鉄人だったフィラデルフィア在住の森本氏が米国版の鉄人の一人に収まったことだけで、あとは審査員の人選がちょっとばかしマシだったかもしれない程度。レポーターが食材の発音を知らなかったり、あらかじめシェフに名前を教えてもらったメキシコの地方料理について解説者が「調べてみたけれど何も分からなかった」と言い出すなど、スタッフは依然としてかなりレベルが低い様子。
先にパイロットを放映したということは視聴者の反応を見るためだったのだろうけれど、あれだけわたしの周囲やブログ界で言われていたことが反影されていないということは、一般の視聴者に比べてわたしたちの方が特殊なのかも知れない。考えてみれば、番組の内容について聞かれたわけでもないのにあーだこーだと言っている人たちはわたしを含めてオリジナルの「料理の鉄人」に愛着がある人たちで、そういう人にとってはオリジナルと違う部分はそれだけで全部欠点に見えてしまうのかも知れない。とはいえ、せっかく米国版を放映するのであれば、まったく新しいファン層を開拓するよりはオリジナル版のマニアックなファンをそのまま引き継いだ方が有利なはずであり、オリジナル版のファンを遠ざけるような内容はどうかと思う。最後の勝敗宣告のシーンで、オリジナルに習って「JUDGMENT」という単語を間違って(というか、非スタンダード的に)「JUDGEMENT」と綴ってくれれば良かったのに、とまでは言わないけれど。
ちなみに第1回の挑戦者は米国における本格メキシコ料理のシェフとして有名なリック・ベイレス氏だけれど、彼がシカゴでやっているレストラン(フロンテラ・グリル)にはわたしも行ったことがあるっていうのは自慢になるかな。普段はそんな有名なレストランなんて一切縁がないのだけれど、2年前シカゴを訪れたとき、現地に住んでいる知り合いに連れて行ってもらったの。その友人は、自身もメキシコ料理のレストランを開くのが将来の夢という人で、ベイレス氏の大ファンだと言っていたから記憶に残っている。それで肝心の料理の味はというと… うーん、わたし、メキシコ料理あんまり好きじゃないのよね。ほとんどアメリカ風メキシコ料理しか食べた事がないわたしがそう言うのは失礼だよなーとは思うけど。
というわけで、誰か森本さんのお店に連れてってください。
前に別の番組で見たところ、あの内装はちょっとどうかと思うけど…

One Response - “わたしの愚痴を聞いてくれなかった「アイアン・シェフ・アメリカ」”

  1. ともみ Says:

    こんにちは!お邪魔してみました。私はパイロット版しか見てないんですが、あれはなんか出来レースって感じでいまいちでしたね。やっぱり日本版のほうが、私には楽しめます。最近始まったほうのはまだ見ていません。鉄人たちはfood networkのタレントシェフ総動員って感じですね。司会者がアジア系ってところ、本家を真似しての人選なんでしょうか。アメリカのテレビ社会で貴重なアジア人ではありますが、ステレオティピカルな武道たしなむ系統の雰囲気が・・

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