「なぜ少女ばかりねらったのか」著者 Ray Wyre & Tim Tate について注意

1/2/2005 - 11:03 pm | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

なんばりょうすけさんが最近紹介していたレイ・ワイア&ティム・テイト著「なぜ少女ばかりねらったのか」をわたしも読んでみようかなと思いつつ著者の名前を検索してみたところ、意外な発見。こちらのサイトの記述によると、1988年にイギリスのイーストミッドランズのある一族内の複数の大人による複数の子どもたちに対する性的虐待が発覚し、男女10人が有罪判決を受けた事件があったのだが、その当時、事件の裏側には子どもを「生け贄」として捧げる儀式をはじめとした大規模な悪魔崇拝ネットワークがあり、政治的な圧力を受けて警察はそれを隠蔽しているのだと宣伝してまわったのが、このレイ・ワイアとティム・テイトの両者らしい。

もちろん、そんな悪魔崇拝なんて実際には無かったことは複数の調査グループが検証して確認しているし、警察による隠蔽については名指しされた警察の担当者がテイトを名誉毀損で裁判に訴えた結果、テイトが全面謝罪して多額の賠償金も払っている。なんばさんの紹介を読む限り「なぜ少女ばかりねらったのか」の内容には(わたしと意見が違う部分も含めて)特におかしい所はないように感じたし、ある問題でおかしな発言をしたからといって他の問題での発言もおかしいと決めつけるつもりはないけれど、信頼性に関わる問題だからもうちょっと掘り下げてみよう。

悪魔崇拝者による儀式的虐待(SRA)という問題が虚実ないまぜのまま米国で大きなパニックとなったのは1983年頃からだが、大学では神学を専攻していたイギリス人ジャーナリスト・TVプロデューサのティム・テイトは、上記の事件がイギリスにもSRAが存在すると証明できる絶好のケースだと信じてテレビ番組作成に取りかかる。事件について詳しく書かれた情報を読むと、テイトがこの事件を単なるジャーナリストとしてカバーしていたのではなく、SRAの存在を証明するために手段を選ばずに直接関与していたことを疑わせる件がある。

そもそも再度の調査でSRAが事実でないと判断された理由の1つは、「証言」によって儀式が行われたとか死体が捨てられたとされる数々の「隠し部屋」が実際にはどこを掘り起こしても見つからなかったことだが、ある公園の建物の地下に存在するとされたトンネルに限っては、誰も知らなかったはずのトンネルが書き込まれた地図が発見され、SRAがそこで起きたかもしれない重要な証拠の1つとされた。そこで調査団はその地図を発行したとされる部署に問い合わせてみたところ、確かにその地図を作成したのはその部署であるが、元の地図にはトンネルなど描かれてなかったと言う。そこで、最近この地図を見た人はいませんかと聞いたところ、テレビ記者のティム・テイトが地図のコピーを一部持っていったと分かった。テイト本人が何かをしたという証拠にはならないけれど、その部署からテイトの手に渡った地図に、SRAの存在を傍証するかのように何者かがトンネルを書き足したのは確かだ。

なんばさんの紹介した通り、レイ・ワイヤは保護監察局で性暴力の加害者更生のためのプログラムで勤務していた人物だが、もうちょっと付け加えると彼もテイトと同じく大学時代はバプテスト教会の牧師になるべく神学を学んでいる。彼はティム・テイトからSRAについての米国からの資料を与えられ、専門家であるかのように振る舞うことができた。ところがこの資料というのが問題で、1983年にカリフォルニア州で起きたマクマーティン事件の原告側で働いていたソーシャルワーカーたちによって作られたものだった。

マクマーティン事件というのを簡単にまとめると、マクマーティン夫妻が経営する幼稚園に通っていた子どもの親のうち1人が「自分の子どもがマクマーティン氏に性的な虐待を受けた」と訴え出たのをきっかけに、地域全体を覆ったパニックと、はじめから虐待の存在を前提として子どもの証言を取ってしまった一部のソーシャルワーカーの失態により、数百人の子どもを巻き込む大規模なSRAが起きていたとされて大騒ぎになった。ところが慎重に検証したところ、そういった虐待の証拠が一切見つからなかったばかりか、ソーシャルワーカーの不手際が立証され、結局マクマーティン夫妻が完全無罪を勝ち取った。その騒ぎの最中、ソーシャルワーカーたちはより虐待の事実を掘り出そうと「子どもがこういう反応を示したら、SRAの被害を受けている可能性があります」といった文書を作っていたのだが、最終的には間違いだらけであった事が判明したにも関わらず、それらの資料がSRAの専門資料としてテイトを通してワイヤに渡ったのだ。

テイトとワイヤはこれだけでなく、キャサリン・マッキノンやアンドレア・ドウォーキンといった「反ポルノ」論客を集めた論集「Pornography: Women, Violence and Civil Liberties」にも揃って寄稿している。この本でワイヤは編者のインタビューに答えて男性の性的ファンタシーがポルノグラフィによって形作られているとして「あらゆるポルノは女性に対する暴力に繋がる」と主張する一方、テイトは国際的な児童ポルノ産業の広がりを指摘している。こうした活動が「女性に対する暴力を止めるため」「子どもを虐待から守るため」といった動機によって行われていることを取りあえず疑うつもりはないけれど、彼らに共通する「キリスト教聖職者候補として育てられた経歴」を考えると、彼らの信念のどこまでが実際に性暴力について調べた中で気付いたことであり、どこからが宗教的な信念(ポルノは悪)によるものなのか、少し気になる。

そもそも、テイトがそこまでSRAの存在を証明しようとやっきになるのは何故なのか。テイトが作成したテレビ番組は、結局証拠とされた内容が全て「根拠とならない」と判断されてテレビ局が謝罪するハメになったし、同じ資料を元に彼が書いた著書も前述のとおり関係者に訴えられて名誉毀損で多額の賠償金を取られている。もちろん、小規模であればカルト的な集団による儀式的な虐待というのは有り得るけれど、テイトが紹介したような多数の幼児を生け贄にしたりといった悪魔崇拝的な虐待の存在は一切証明されていない。そもそも、アメリカやイギリスでこれに近い問題を起こしている集団の大半は、実はキリスト教系のカルト集団なのだ。しかし、テイトは「キリスト教系儀式的虐待」について決して報道しようとはせず、悪魔崇拝者による儀式虐待ばかりに注目している。この点においても、ジャーナリストとしての客観性が疑われる。

とまあ、いろいろ気になることを書いてはみたけれど、「なぜ少女ばかりねらったのか」に関してはワイヤのより直接的な個人体験が元になっているようなので、多分それほど無茶苦茶ではないんだろうと思う。それでも、これからこの本を読む人はワイヤとテイトはこういう前科のある人物なんだと知った上で読んだ方が良いんじゃないかな。そう言いつつ、わたし自身はなんとなく読む気が無くなってしまったのだけれど。

One Response - “「なぜ少女ばかりねらったのか」著者 Ray Wyre & Tim Tate について注意”

  1. 児童小銃 Says:

    [社会] レイ・ワイアとティム・テイトは要注意
    macska さんより『なぜ少女ばかりをねらったのか』の著者レイ・ワイアとティム・テイトの過去の失態の話が。 二人は「児童虐待者は怪物じゃない」とか言いつつ同じ時期に「悪魔崇拝…