同性婚その他オレゴン州住民投票

10/23/2004 - 12:11 pm | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

Yoko さんから米大統領選挙に関連してオレゴン州の同性婚禁止憲法改正案についても書いてある朝日新聞の記事を紹介される。「マルトノマ郡当局が、同性カップルへの結婚証明書発行に踏み切った」ことをきっかけに同性婚反対派が「州憲法改正を求めて動き出した」というのは明白な間違いなんだけど(憲法改正を求める署名活動は同性婚実現より先にはじまっていた)、それを除くとよく書けている。前回の選挙でゴアが勝った地域(ポートランド周辺と、大きな大学のある街だけ)とブッシュが勝った地域(それ以外の州全体ほとんど)の対比を見ると、オレゴンの大半は保守的な地域であることが分かる。

記事にある通り、今年11カ所で行われる同性婚禁止条項の住民投票のうち、少しでも否決の可能性があるのはこのオレゴン州だけ。他州と違うアドバンテージとしては、オレゴンでは過去に幾度にも渡って「反同性愛者」を掲げた住民投票が行われており、その度に州の住民が僅差で否決してきた歴史があることだ。とはいえ、過去の「反同性愛」提案はオレゴン市民連合という極右グループが推進してきたのに対し、今回に限ってはより主流に近い保守派グループが大挙して動員をかけており、可決される可能性が高い。

オレゴン州にはもう1つ他の州と違う点があって、それは住民投票より先に既に結婚証明書を受け取った同性カップルが多数存在すること。同性婚反対を主張するグループは「同性婚を認めたらこんなに酷いことが起きる」と騒いでいるわけだけれど、現に同性婚が認められていた時期に彼らが懸念するようなことは何一つ起きなかったわけで、フツーに考えると説得力は弱い。でも、もともと同性婚に反対する動機は何らかの具体的な損害をおそれての事じゃなくて、宗教的なのだからあまり関係ない。

ところが、ここのところ反同性婚派はプッシュ・ポルまで使って憲法改正を訴えている。プッシュ・ポルというのは、一見中立の世論調査を装って偏った情報を広める手法で、例えばブッシュ大統領の側のプッシュ・ポルならば「テロリストはケリーの方が与し易い相手だと言っていますが、それでもあなたはケリーに投票しますか?」と聞いたりする。世論調査というのは単なる口実であって、「ケリーはテロに弱い」という偏った主張を広めるためだけに行われる。

最近、オレゴンの有権者の多くが電話で聞いたプッシュ・ポルの内容は、「憲法改正を認めない場合、幼稚園からはじまって高校・大学まで全ての段階で同性愛について教えるよう義務づけられる可能性がありますが、憲法改正にあなたは賛成ですか、それとも反対ですか?」というもの。もちろん、教育の問題と憲法改正問題は全然関係ない。おおっぴらに「同性愛者への差別を行うべきだ」という主張には賛同しない中間派を騙すために教育問題にすり替えているのね。こういうプッシュ・ポルを行う連中は、キリスト教徒のくせにこんな嘘ついて地獄に落ちるとは思わないんだろうか。

賛成が多数となって憲法改正案が通ったとしても、まだ論争は続く。先月ルイジアナ州で住民の8割が賛成して同性婚禁止の憲法改正が成立したかに見えたのだけれど、直後に住民投票自体を問う裁判で違憲判決が出て取り消された。違憲となった理由は、1つの住民投票で同時に2つの項目について憲法改正をしたのが間違いだったということ。具体的には、同性婚を禁止する条項と、同性婚に類するシビル・ユニオンなど別の制度を禁止する条項は別々に投票すべきだったというのが判決の内容だった。オレゴン州で提案されている憲法改正にはシビル・ユニオンについての条項はないけれど、「同性カップルに結婚証明書を発行しない」ことを定めた条項と、「マサチューセッツ州やカナダなど同性婚が認められた地域で結婚した同性カップルをオレゴン州内では独身とみなす」条項が混在しているとして裁判が起きるのが必至。

あんまり勝ち目がないような気もするけれど、こういう問題は時間を稼げばどんどん社会の方が変化していくものだから裁判闘争でもなんでもOK。ほんの数年前はシビル・ユニオンが認められただけでもお祭り騒ぎだったのに、いつの間にか保守派の側が「シビル・ユニオンで十分」と主張するようになったように、ホワイトハウスが何と言おうと同性愛者の権利については確実に社会はより寛容に、より平等指向になっているのだから。

そもそも、個々の州がどのように取り決めたとしても連邦最高裁判所が「同性婚を認めないのは違憲」という判決を出せばそれで決着が付く話。そのためには、ケリーを大統領に当選させて、まともな最高裁判事を指名してもらう方が重要かもしれない。

ついでなので、他の住民投票についても短くまとめ。

提案31と32は住民による署名によって提起されたのではなく、州議会によって住民投票にかけられたもの。提案31は選挙の最中に候補者が死亡した場合どうするか定めるもので、提案32は移動手段ではなく住居として使用されているトレイラー車両への自動車税の免税。これらについてはどこからも反対意見は聞かれないので成立するはず。

提案33は医療用大麻の扱いを変えること。オレゴン州では医療用大麻の使用が認められているけれど、既存の制度では病人が自分で大麻を育てるか、第三者に無償で育ててもらうかしか認められていない。もともと医療用大麻が提案された時には、病人の家族が育てることを想定していたけれど、現実にはそう都合のいい家庭は少なく、また育てる代わりに報酬を払うことも禁止されていたために、せっかく医療用大麻の使用が認められていても街で違法に流通している大麻を購入するか、育てる人に違法に報酬を払うかするかしなければいけなかった。提案33はこうした失敗を鑑みて、州が決める妥当な値段で医療用大麻を売買することを合法化し、また一度に所持できる量を緩和することで、たくさんの人のための大麻を一カ所で大規模に育てることができるようにする内容。

理屈としてはともかく、注目は緩和された後の一度に所持できる量。なんと6ポンドも所持できるようになるとか。乾燥させた草を6ポンドとなるとかなりの量であり、下手すると末端価格で100万円に届く。どう考えても病人が個人で吸う量じゃないけれど、それくらい認めなければ大規模栽培ができないということらしい。オレゴンの住民の多くは医療用大麻自体は支持しているものの、麻薬売買につきまとう悪いイメージとこの6ポンドという一見多過ぎる量のため否決されると見られている。合法的に売買を認めなければその分違法な売買が行われるだけなので、非常に残念。

提案34は、州が所有する森林から木材を伐採する際、同じ数の木を植えるよう義務づけるもの。木材はオレゴン州の主要産業の1つであり、選挙の度に産業と環境保護派が対立している。わたしのような都市住民から見ると「伐採するだけの木を植える」というのはもっともな話に思えるけれど、木材伐採で生活をたてている人や地域にとっては、オレゴンで伐採するコストが増えると他の州やカナダに職が逃げるため死活問題。そう考えると、都市住民に環境税をかけてそれを森林保護にあてるという解決が一番理屈にかなっていると思うのだけれど、そういう解決法は政治的になかなか出て来ないのね。これもおそらく否決されるでしょう。

提案35、医療瑕疵訴訟による損害賠償に上限を設けること。医療業界が大金を注ぎ込んでこの住民投票成立を目指しているのは分かるけれど、一般市民がこんな法律に賛成する理由は何もない。業界は医療費高騰の理由を医療瑕疵訴訟のせいにしているけれど、米政府機関の調査によれば訴訟によるコストは医療費全体の1%強でしかない。損害賠償に制限を設けるならば、ただ単に一定の上限を設けるのではなくて被告の収入や資本規模に比例する方式にしなければ、大規模な医療機関だけを利することになる。提案35に反対のグループにはあまり資金がないけれど、かのエリン・ブロコビッチがコマーシャルに登場して反対の投票を呼びかけている。

提案36、同性婚禁止。既に書いた通り。

提案37、政府の規制によって土地の時価が下がった場合、政府が所有者に差額を支払えという提案。成立した場合、政府の役割を解体することになる。問題外。

提案38、州政府が出資する労働災害保険公社を廃止。これも政府の役割を解体しようとする勢力によるもので、問題外。

以上。

4 Responses - “同性婚その他オレゴン州住民投票”

  1. Yoko Says:

    どもです。

    日本は台風やら地震やらで大変なことになってます。

    とりあえず今日のネタ

    ワシントンポスト、ケリー支持(ま、この新聞は当然でしょうな)
    http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A57584-2004Oct23.html

    ABC”Good Morning America”一卵性双生児の姉妹、一人はFTMTGに、もうひとりは普通の女性に。
    http://abcnews.go.com/GMA/Health/story?id=174855&page=1

  2. Yoko Says:

    Measure 36支持者のイカサマにYale大教授怒る。

    Expert: Ore. gay marriage opponents twist his research
    http://www.kgw.com/news-local/stories/kgw_102204_elections_gaymarriage_experts.151214e7.html

  3. Macska Says:

    「Measure 36支持者のイカサマ」と言えば、彼らが論拠として挙げている別の研究者にニューヨーク大学の Judith Stacey というクィア理論家がいますが、彼女と偶然別の用事で話した時に36の支持者が彼女の研究を濫用していることについて彼女の話を聞きました。

    Stacey さんは、他の研究者がバックラッシュを恐れるばかりに「ゲイの家庭の子どもは異性愛家庭の子どもと何ら変わるところがない」という結論ありきの研究を行っていることを批判して、実はこんなに違いがあるんだという事を示す仕事をやっています。同性愛カップルに育てられた子どもはかわいそうだという議論に対して、むしろ同性愛家庭で育った子どもの方が他人に寛容で性役割にとらわれない自由な考え方の持ち主になるのだとポジティブな「違い」を示すのね。

    でも、反同性婚論者たちは、彼女の研究の中から「同性愛家庭で育った子どもは異性愛家庭で育った子どもと違う」という部分だけ取り出したり、「同性愛家庭で育った子どもは、同性愛に抵抗が少ない」という点を「子どもが汚されている」と決めつけたりして、彼女の研究を濫用しているのね。それに対して、Stacey 教授はメディアに連絡を取ったりインタビューしたりして間違った引用を正そうとしているけれど、いくら批判しても濫用は広まるばかり。現にこうしてニュースで「教授が怒っている」っていう記事が載っても、それを読む人なんて全体から見て僅かに過ぎないし。

    ちなみに、ついさっき受け取った最新の世論調査によると、49%対41%ではじめて「36反対」が「賛成」を上回ったとか。今 No on 36 Coalition が心配しているのは、「同性婚に賛成」のつもりで「賛成」に票を入れかねない人がかなりいるという情報。問われているのは「同性婚禁止」の是非なので同性婚に賛成なら「反対」票を入れてくれ、という話がきちんとできれば良いのだけれど、あまり関心がない人にそこまでちゃんと聞いて貰えるかどうか。むしろ、同性婚反対の有権者が多い地域に行って「同性婚にノー、36にノー」と宣伝した方が効率が良いかもしれない(笑)

  4. Yoko Says:

    >むしろ、同性婚反対の有権者が多い地域に行って「同性婚にノー、36にノー」と宣伝した方が効率が良いかもしれない(笑)

    ↓が一番グーかと。

    No, no, no, no, no and no
    http://www.oregonlive.com/campaigncentral/oregonian/opinion/index.ssf?/base/editorial/1098533052109380.xml

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