シンプソンズ「同性婚エピソード」の後味悪い大転回(注意:ネタバレ)

2005年2月21日 - 12:27 PM | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

最近この手の話が増えてきているけど、tummygirlさんも紹介していた通り半年以上前から話題となっていた(大人向け)アニメ番組シンプソンズにおける「メインキャラクタの一人が同性愛者としてカミングアウトする」エピソードが昨日放映された。このエピソードについては、事前に「スプリングフィールドで同性婚が合法化される」「ホーマーがインターネットを通して聖職者の資格を得て、同性婚を執り行う」「パティが女性と付き合う」というプロットが噂としてコアなファンの間では伝わっていた。と同時に「最後に大きな転回がある」という話も伝わっていたこともあり、「パティが同性と付き合うという話がそんなに早くリークされるのはかえっておかしいのではないか、同性愛者としてカミングアウトするのは別のキャラクタかもしれない」など深読みしてしまったけれど、実のところその「大転回」はあまり後味の良いものではなかった。例によってネタバレ全開で行くので、話の筋を知りたくない人は読まないように。





























パティというのはこの番組で半常連のキャラクタで、シンプソン一家のお母さん、マージの姉。常に一卵性の双子のセルマと一緒に煙草を吸いながら登場する「オバサン」キャラで、髪型が違う他は外見も声も職場も好きなテレビ番組も同じとあって、マニアックなファン以外は両者の区別が付かなかったりする。けれど恋愛歴だけは違っていて、何人もの男性と不幸な結婚を繰り返すセルマ(彼女の結婚する相手と言えば、保険金目当てにセルマを殺害するつもりで結婚する人や、変態性愛を隠蔽するために偽装結婚する人など)に対して、パティの方はこれまで「体を触られるのが嫌い」「一生独身のままでいるつもり」と口外していた。とはいえ、パティは女性に性的な興味を持っているのではないかと疑われるような場面が過去のエピソードにいくつかあり、ファンの間では「明言されてはいないけれど、パティは同性愛者」という認識が当然という雰囲気があった。パティのカミングアウトに驚くマージに対し、ホーマーが「じゃあもう1つ驚くべき事実を教えようか、僕はビールが大好きなんだ」と皮肉っているのは、ファンの声を代弁している。
さて、問題なのは最後の大転回。パティと相手の女子プロゴルファー・ヴェロニカの結婚式が行われる当日、マージは半分開いたトイレのドアの中に見てはいけないものを盗み見てしまう。使用後、上に上げられたままになったトイレの座席と、シェービングクリームを付けて髭を剃っているヴェロニカの姿だ。身内に同性愛者がいたことを受け入れかねていたマージは、「ヴェロニカは男だ」と気付いてむしろ皮肉な事実を喜んでいたのだけれど、結婚式の段階になると自分の姉が何か隠し事をしている相手と結婚しようとしている事に我慢できなくなり、真実を明らかにする。「パティ、この人は男なのよ」と言いながら、ヴェロニカが着ている首まで隠すドレスの上の方のボタンを外し大きく膨らんだヴェロニカの喉仏を明らかにするマージ。驚くパティと他の参列者。
ヴェロニカが事情を説明する。自分は確かに男性なのだが、男子選手としてプロゴルファーになれなかったので女子の振りをして競技していた。パティが恋におちたのは女性としての自分だったから、実は自分は男性だとは今までどうしても言い出せなかった。いずれにしてもパティを愛する気持ちは変わらないので、男性として求婚したい、と。パティは「わたしが好きなのは女性なのよ」とはっきり応え、参列者からは拍手が沸き起こる。
最近話題となっている同性婚の話を絡めながら、マージが同性愛者としての姉を隠避するところから受け入れられるようになるまでを描いたエピソードとして、心が温まる部分もある。結婚式の最中、たくさんの人の前で恥をかかされたヴェロニカはかわいそうだけれど、もともと利己的な動機で女性のふりをして周囲を騙していたわけだから、自業自得だと言えると思う。だけれど、ヴェロニカが単なる「女性のふりをした男性」ではなく、トランスセクシュアルの女性であった可能性もあったのではないかと考えると、やっぱり非常に後味が悪い。
例えば、パティと付き合い出したヴェロニカは、自分がトランスセクシュアルであること、身体的には男性であることを打ち明けた上で、できるだけ周囲にもそのことは漏らさないようにお願いしていたというシナリオだってあったはず。もしかしたらそういう約束で当事者同士が納得していたのだとしたら、偶然ヴェロニカの「秘密」を知ってしまった第三者が大勢の人の前で「これがお前が実は男である証拠だ」みたいにしてその「秘密」を暴くのはおかしいだろう。実際、第三者にプライバシーを暴かれて生活を壊されたトランスセクシュアルの人はたくさんいるのだから、マージにああした行動は取って欲しくなかった。せめて、ヴェロニカを直接問いつめるなり、パティに自分が目撃した事実を伝えるなりできたはずなんだけどな。
ちなみに、エピソード内で同性カップルたちに「スプリングフィールドに来れば結婚できます」と宣伝するコマーシャルが製作されていて、そのコマーシャルの最後に専用ウェブサイトの URL (www.springfieldisforgayloversofmarriage.com と、やたらと長い)が掲載されていたのだけれど、そのアドレスに行ってみたら、本当にウェブサイトがありました

One Response - “シンプソンズ「同性婚エピソード」の後味悪い大転回(注意:ネタバレ)”

  1. sumakida Says:

    他の項目では紛糾していたみたいですけど。
    ヴェロニカがトランスセクシュアルかもとまず考えるところがmacskaさんですね。私がパティだったら、女性だと思った人がトランスセクシュアルでも、それまで通りに接してくれたらかまわないけどな。それより、喉仏があることに気づかないくらいの肉体的距離で結婚を決めるという感覚が私にはわかりづらい。A セクシュアルのレズビアンということかしら。
    転回の後味の悪さというか、同性婚ってこんなふうにパロられちゃうのかなというのがちょっとヤな感じ。