(e)merging.
A Third 
Wave Feminist Page

第3次フェミニストたちの代表的な本

To Be Real: Telling the Truth and Changing the Face of Feminism (1995)

編者:Rebecca Walker
New York: Anchor Books

ニューヨークで「Third Wave Foundation」という団体を設立したRebecca Walkerが編集した第3次フェミニズムのバイブル。 『(e)merging.』の基調も大筋でこの本に沿っており、取り敢えず第3波について読みたい人にはこれをまずお勧めします。 Walker自身による「Being Real」というエッセイは、この本を編集しながら経験した「フェミニストによって作られた理想の女性像」と「自分らしさ」との間の葛藤が素直に書かれていて、非常に読み応えがあります。 Gloria Steinem、Angela Davisという第2次フェミニズムを代表する2人がそれぞれ感想を書いているのも興味深いです。 『(e)merging.』では、第3回の「自分の欲望という『獣』を認めるということ」や第6回の「結婚後の名字を考える意味」などでこの本からのエッセイが登場しています。

To Be Real

Listen Up: Voices from the New Feminist Generation (1995)

編者:Barbara Findlen
Seattle: Seal Press

To Be Real」と並んでいまや第3次フェミニズムの2大アンソロジーの1つとして読まれている本。 この本の「売り」は、現代女性の多様な バックグラウンドや生き方をフェミニズムを分裂させる「弱点」ではなく、フェミニズムの多彩な 発展を可能とする「長所」として描いている所で、抑圧−被抑圧といった単純な構図では語れな くなった複雑な現代社会の現実を鋭く捉えています。 実体験に基づいた、非情に分かりやすく面白いエッセイが多数含まれているので、今後『(e)merging.』でも続々紹介していく予定です。 この本の出版社であるSeal Pressは良質のフェミニスト系書籍をたくさん出版しています。 『(e)merging.』では第2回の「エスノセントリズムと『裏切りのフェミニズム』」にこの本からのエッセイが登場しました。

Listen Up

Body Outlaws: Young Women Write About Body Image and Identity (1998)

編者:Ophira Edut (http://www.ophira.com/)
Seattle: Seal Press

「ボディ・イメージ」の問題というと、ガリガリに痩せた拒食症の女の子がそれでも「自分は太っている」と思い込んでいる、という、メディアで繰り返し取り上げられるシーンが思い浮かびますが、もっと広く考えてもいいのではないか、という問いかけがこのアンソロジーの特徴です。 いかにして自分の体と付き合ってきたか、受け入れる事ができるようになったか、という第3次世代のフェミニストたちによる多数のエッセイを通して、ボディ・イメージの問題とは自分が自分の身体をどれだけ自信を持って受け入れる事ができるかということなのだ、というテーマが掘り下げられます。 「バービーよ、さらば」という題名は、ただ単にバービー人形の体型が非現実的なまでに誇張された女性の体である事に対する反発ではなく、バービー人形が象徴するような単一の「美」の基準を捨て去り、一人一人が自分の中に美しさ、力強さを見つけていこうという呼びかけでしょう。 編集者は第3次フェミニズムの雑誌「HUES: Hear Us Emerging Sisters」の創設者の一人。 執筆陣には、スポーツ選手で第3次フェミニズムのアンソロジー「Third Wave Agenda」の共編者の一人でもあるLeslie Heywoodやフェミニズム的ポップカルチャー批評雑誌「Bitch」を編集しているLisa Jervisも登場し、前書きはRebecca Walkerによるものです。

Body Outlaws

Cunt: A Declaration of Independence (1999)

著者:Inga Muscio
Seattle: Seal Press

「Cunt」というのは女性の性器を指す卑猥なスラングで、女性に対する最も侮辱的な蔑称の1つ。 しかしその語源は太古の昔女性の性と生殖の力を崇める敬称だった・・・という秘められた「神話」を創作しつつ、「体の真珠」と彼女が呼ぶ女性器に関する様々な話題について書かれたのがこの本。 メインストリームのフェミニズム系雑誌では「このような主張なら70年代にもっとうまく書かれている」と酷評されたけれど、たまたま第2次にあった主張と結論は似ていてもそこにたどり着くまでのプロセスに突き抜けた第3次的な感性が行き渡っていると思います。 こういうぶっ飛んだ本を書いたInga Muscioってどういう人なんだろうと思っていたら、本人も相当ぶっ飛んでいました。 本にサインをして貰った時も、名前に添えて「in cuntlove」(「cuntlove」というのは彼女の造語で、だいたい「フェミニズム」と同じ意味)なんて書いていたり・・・結構嬉しいけど。

Cunt

Fire With Fire: The New Female Power and How to Use It (1993)

著者:Naomi Wolf
New York: Random House

Naomi Wolfと言えばベストセラーとなった彼女のデビュー作「The Beauty Myth」が有名ですが、第2作となったこの「Fire With Fire」で大きな理論的転換を見せた事を思うと今でも「The Beauty Myth」の世界観が彼女の名前と関連付けられている事が皮肉にすら思えます。 この本でWolfは差別や抑圧を声高に訴えるフェミニズムを「被害者フェミニズム」と切って捨て、まだ差別は残るとはいえ女性がその気になれば自分を解放するだけの機会は揃ったと主張する「パワー・フェミニズム」を提唱します。 第1作ではマスコミによるマインドコントロールで女性は主体性を奪われていると言っておきながら、第2作で「フェミニズムは女性の主体性を尊重しなくてはならない」と言うなんてちょっと勝手じゃない?、という気もしないではないのですが、彼女の書く文章には傲慢なまでの自信がみなぎっていて、読むだけで元気が出ます。 やや保守的な言動が目立つため他の第3次フェミニストからの批判も絶えないのですが、この本で彼女が主張する女性の成功のための具体策など一読の価値はあるでしょう。

Fire With Fire

Feminist Fatale: Voices from the 'Twentysomething' Generation Explore the Future of the 'Women's Movement' (1991)

著者:Paula Kamen
New York: Donald Fine

まだ「第3次フェミニズム」という言葉がなかった時期に、いち早く第2次フェミニズムの限界と次世代フェミニズムの必要性を主張した好著。 同時期に発表されたSusan Faludi著「Backlash」が、さかんに保守反動に乗せられた「意識の低い」女性を批判していたのに対し、フェミニズムの衰退の原因をフェミニズム内部の多様性の軽視と世代間ギャップに求めたKamenの先見の明は今や疑いようもありません。 残念ながら現在では絶版されてしまったようですが、アメリカの図書館や古本屋で見つけたら今でも当時の状況を知るために読む価値は十分。 読み物としてやや面白みにかけるのが問題ですけどね。

Third Wave Agenda : Being Feminist, Doing Feminism (1997)

編者:Leslie Heywood & Jennifer Drake
University of Minnesota Press

この本は、第3次の中でも上の2つに比べてやや年上のフェミニストによるアンソロジー。 平均年齢の差はおそらく5歳くらいですが、論調に微妙な差があるようで興味深いです。 ラディカルフェミニズムへの反発からいきなり「To Be Real」のような新しいフェミニズムが出て来た訳ではなく、各世代のフェミニストによる延々と続く対話の中で新しい動きが登場したことを再認識させられます。 いきなり前衛的な第3次の最前線を読むとショックを受けそうな方は、まずこれをどうぞ(笑)

Third Wave Agenda

#1 代表的な第3次フェミニストたちの本
#2 第3次フェミニズム的な雑誌など
#3 第2次フェミニストたちとの対話
#4 第3次フェミニズムと同時代の動き

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