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DV理論の最前線から #1 (09/03/00)

はじめに

メイン大学で心理学と女性学を学ぶ学生だった私が、日本にいる友人のAさんと一緒に「性暴力情報センター」というページを作ったのは1996年。 きっかけは「水戸・知的障害者虐待事件」の被害者の支援活動に関わっていたAさんが、「味方のはずの弁護士が性暴力について理解しておらず、無神経な言葉でさらに被害者を傷つけているようだ」と訴えてきた事でした。 当時は被害者の側に立った性暴力についての本が非常に少なく、あってもアメリカの著作の翻訳ばかりで、インターネットがまだあまり普及していなかったためウェブで検索しても関連した情報はほとんどなかったのです。 その頃私はたまたま当地のレイプ救援センターでボランティアをしており、「私たちが見つけられないのであれば、他にもこうした情報を探している人がいるはずだ」と思って「性暴力情報センター」をオープンしました。 今からは信じられない事ですが、その時点ではインターネットを使うのはポルノが見たい男性だけだという決め付けがあり、民間団体を紹介する承諾を得るのに苦労した経験があります。

あれからほんの4年。 「性暴力情報センター」の情報はあまり増えていませんが(笑)、インターネットは一般に普及し、他にも多数の関連サイトが登場しただけでなく、書籍も翻訳ものだけでなく日本の現状に即して日本人が書いた良質なものがどんどん増えています。 私自身も、いくつかの性暴力やドメスティック・バイオレンス(DV)関連の団体に関わり、今ではオレゴンのあるDVシェルターで働く一方、いくつかの専門分野において他のDV団体から呼ばれて講演やワークショップをする事が主な仕事になりつつあります。 そういう中、日本より20年早く「制度化」されたアメリカのDV団体がこの20年間で元の運動体とは違った性質になっていることや、制度化による影響で過去にはラディカルに政治的であったDV団体が無色透明な自治体の補完物となりつつある事に気付くようになりました。

連載『DV理論の最前線から』では、こうしたアメリカにおける反DV運動の現状を踏まえ、クィア・ムーブメントによる貢献や社会的・経済的な抑圧に対する抵抗運動の視点を取り込みつつ、過去の運動におけるDV理解の問題点を指摘し、アメリカの反DV運動の最前線で実践されている新しいアプローチを紹介します。 

その前に、軽くこの連載におけるDVの定義を述べておきます。

表面上「親密」な人間関係において、一方のパートナーが継続して他方をコントロールするパターン。 またそのパターンを作り出し、維持するための仕組み。

この定義自体、マスメディアでよく聞かれる物とは随分違っているので、拍子抜けしたかも知れません。 どうしてこのような定義をするかを含めて、次項で説明します。

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