Abortion & Life

Filed under: feminism — 11/17/2008

Abortion & Life

著者/訳者:Jennifer Baumgardner

出版社:Akashic Books( 2008-09 )

定価:¥ 1,755

ペーパーバック ( 250 ページ )

ISBN-10 : 1933354593

ISBN-13 : 9781933354590



妊娠中絶問題をライフワークとしてきたフェミニスト活動家・ライターによる報告。米国のフェミニストたちは何十年ものあいだ「プロ・チョイス(選択賛成)」を掲げて「プロ・ライフ(生命賛成=中絶反対)」の保守派と対立してきたけれども、そうした固定化した対立構図そのものが多くの女性をフェミニズムから遠ざけているのではないか、と問いかける。著者自身ももちろん「プロ・チョイス」の立場からさかんにそうした論争に加わってきたのだけれど、ここ数年のあいだ妊娠中絶のタブーを崩そうと「I had an abortion.」(妊娠中絶をしました)と書かれたTシャツを中絶経験のある有名人やその他の女性に配布しつつインタビューを重ねてきたことでより複雑な視点を手に入れた。
 「プロ・ライフ」のフェミニストはいるのか? この問いに、以前の著者なら「それはいない、女性が自分自身の身体をコントロールする権利を認めない人は、フェミニストと呼ばれる資格はない」と応えていた。しかし彼女は、次第に「プロ・ライフ」を口にする人が必ずしも女性の自己決定権を否定しているわけではないことに気付く。政府が女性の自己決定権を侵害することには反対だけれども、胎児を「選択肢」とは呼びたくない、それは一つの「命」であり、大切にすることに意味があるのだと感じる女性は(少なくとも米国では)多い。
 ここにはもちろん、「プロ・ライフ」側の巧妙な宣伝がある。たとえば2008年の選挙で共和党の副大統領候補となったサラ・ペイリンは、明らかに女性の自己決定権に反対の立場であり、最高裁が妊娠中絶の権利を認めた Roe v. Wade 判決を覆すことを願ってやまない人物だ。しかしインタビューで彼女は「もし自分の友人や娘が妊娠中絶したいと言ったら、彼女を断罪するのでも糾弾するのでもなく、しかしすべての命は大切であり中絶すべきではない、どうしても育てられないのであれば出産して養子に出すようにと説得する」と言った。政治についてよく知らない一般の有権者から見れば、ペイリンの態度は真摯でなおかつ温情的であり、胎児の命を「女性の選択肢」と切って捨てるフェミニストは冷酷に見える。しかし現実には、ペイリンはその政治的影響力をもって女性から自己決定権を奪い取り妊娠継続を強要することを目論んでいるのであり、フェミニストたちこそが性教育の充実などによって望まない妊娠を減らすことや、育児の公的支援などによって子どもを育てやすいような環境を作ることを主張している。
 著者は、女性の自己決定権を守るためには、フェミニストは「プロ・ライフ」に歩み寄らなければならないと主張する。それは中絶に対するさまざまな規制や制約を容認するということではなく、胎児の命を大切なものだと感じる感性を否定せずに、かれらに望まない妊娠を減らすための具体的な政策を実現するよう呼びかけていくことだ。その一方で、著者は Feminists for Life(ライフを支持するフェミニスト達)など「プロ・ライフのフェミニスト」を自称する団体が、実のところ何らフェミニスト的な活動(たとえば、望まない妊娠を減らすための性教育の充実や、経済的理由から中絶を迫られる女性に対する支援など)を行なっていないことも指摘する。それらの団体は、「プロ・ライフ」側の宣伝戦略の一環でしかないというわけ(そのため、さらに「プロ・ライフのフェミニストなんていない!」という声がフェミニズムの中で高まってしまう)。
 いずれにせよ、現在の米国における妊娠中絶論争の行き詰まりを打破するためにも、重要な示唆を多く含んだ本だと思う。

Redistribution or Recognition?: A Political-Philosophical Exchange

Filed under: class + poverty, feminism, politics — 09/30/2008

Redistribution or Recognition?: A Political-Philosophical Exchange

著者/訳者:Nancy Fraser Axel Honneth

出版社:Verso Books( 2003-09-11 )

定価:¥ 2,278

ペーパーバック ( 224 ページ )

ISBN-10 : 1859844928

ISBN-13 : 9781859844922


EntreMundos/AmongWorlds: New Perspectives on Gloria Anzaldúa

Filed under: feminism, postcolonial, sexuality — 09/21/2008

EntreMundos/ AmongWorlds: New Perspectives on Gloria E. Anzaldua

出版社:Palgrave Macmillan( 2008-09-16 )

定価:¥ 2,997

ペーパーバック ( 298 ページ )

ISBN-10 : 0230605931

ISBN-13 : 9780230605930



フェミニズム、クィア理論、ポストコロニアリズム、チカーノ/チカーナ・スタディーズなどに大きな影響を与えた『Borderlands/La Frontera』の著者にして、米国における民族的マイノリティ女性の声を集めた画期的なアンソロジー『This Bridge Called My Back』、『Haciendo Caras』やそれらへの応答として編まれた『This Bridge We Call Home』など、わたしが最も影響を受けたフェミニスト Gloria Anzaldúa の業績と影響について、さまざまな論者が論じる本。
 ハードブックヴァージョンは値段が高過ぎて手が出なかったのだけれど、ペーパーバック版になって何とか手が届く範囲に。こんなに値段が高いのは、学術書扱いだからか。最近コーネル大学で女性学と政治哲学を勉強している学生と話をしていて、その学生が Anzaldúa のことを知らないのに驚いたけれど、たしかに彼女の業績は十分に理解されていないように思う。

Righting Feminism: Conservative Women and American Politics

Filed under: feminism, politics — 05/25/2008

Righting Feminism: Conservative Women and American Politics

著者/訳者:Ronnee Schreiber

出版社:Oxford Univ Pr (Txt)( 2008-06-16 )

定価:¥ 3,101

ハードカバー ( 192 ページ )

ISBN-10 : 0195331818

ISBN-13 : 9780195331813



保守系財団からの強力なサポートを受けて1980年代から活動を活発化させ、差別禁止憲法修正条項を挫折させるなどフェミニズムの政治における影響力を徹底的に削ぐことに成功した保守系女性運動についての研究。Concerned Women for America や Independent Women’s Forum といった団体の関係者や活動家へのインタビューによって明らかにされるのは、保守系女性運動そのものがフェミニズムの論理や成果と複雑な共振性を持っていることだ。

The Education Feminism Reader

Filed under: feminism — 05/05/2008

The Education Feminism Reader

出版社:Routledge( 1994-01 )

定価:¥ 3,121

ペーパーバック ( 392 ページ )

ISBN-10 : 0415907934

ISBN-13 : 9780415907934



東京女性財団によって「米国のバーバラ・ヒューストンという教育学者が『ジェンダーフリー』という概念を推奨しています」と紹介されて以来、たくさんの男女共同参画行政パンフに参考文献として記載されながら、おそらく誰にもまともに読まれなかった不幸な本。てゆーかわたしも読んでない。『バックラッシュ!』等で山口智美さんとヒューストン本人が明らかにした通り、実際にはこの本に掲載された論文でヒューストンは「ジェンダーフリー」路線を批判していた。いや東京女性財団パンフのヘンなところはそれだけじゃないんだけどさ。

A History of U.S. Feminisms

Filed under: feminism, history — 05/01/2008

A History of U.S. Feminisms (Seal Studies)

著者/訳者:Rory Dicker

出版社:Seal Pr( 2008-04-28 )

定価:¥ 1,341

ペーパーバック ( 150 ページ )

ISBN-10 : 1580052347

ISBN-13 : 9781580052344



たまたま書店でみかけた本。フェミニズム系弱小出版社として細々と続けていた Seal Press が大手出版社に買収されて、やたらとくだらない本を大量生産するようになったのだけれど、この本から「Seal Studies」と名付けて教科書としての使用を狙った本を出していくつもりらしい。目次をちらっと眺めると、「第二章 第一波フェミニズム」「第三章 第二波フェミニズム」「第四章 第三波フェミニズム」みたいな単純な構成で、これを通史としてこれから学ぶ人が出てくるのに、それでいいのかよーと思ってしまう。同じシリーズの『Transgender History』はもうちょっとまともっぽい感じ。

Sex and Single Girls: Women Write on Sexuality

Filed under: feminism, sexuality — 04/29/2008

Sex & Single Girls: Straight and Queer Women on Sexuality (Live Girls)

出版社:Seal Pr( 2000-10 )

定価:¥ 1,755

ペーパーバック ( 320 ページ )

ISBN-10 : 1580050387

ISBN-13 : 9781580050388


Jane Sexes It Up: True Confessions of Feminist Desire

Filed under: feminism, sexuality — 04/29/2008

Jane Sexes It Up: True Confessions of Feminist Desire

出版社:Thunder's Mouth Pr( 2002-02-15 )

定価:¥ 1,656

ペーパーバック ( 399 ページ )

ISBN-10 : 1568581807

ISBN-13 : 9781568581804


Look Both Ways: Bisexual Politics

Filed under: feminism, queer — 04/29/2008

Look Both Ways: Bisexual Politics

著者/訳者:Jennifer Baumgardner

出版社:Farrar Straus & Giroux( 2008-03-04 )

定価:¥ 1,449

ペーパーバック ( 256 ページ )

ISBN-10 : 0374531080

ISBN-13 : 9780374531089


Manifesta: Young Women, Feminism, and the Future

Filed under: third wave — 04/29/2008

Manifesta: Young Women, Feminism, and the Future

著者/訳者:Jennifer Baumgardner Amy Richards

出版社:Farrar Straus & Giroux( 2000-10-04 )

定価:¥ 1,553

ペーパーバック ( 416 ページ )

ISBN-10 : 0374526222

ISBN-13 : 9780374526221



第二波フェミニズムの最も有名なフェミニスト、グロリア・スタイネムの元アシスタントだった Amy Richards と、彼女とともに『Ms.』誌で編集者として働いていた Jennifer Baumgardner による共著。若い女性向けのフェミニズム入門編的な内容で、著者らは2000年代に入ってから『To Be Real』の Rebecca Walker らにかわって「第三波フェミニズム」の代表とみなされるようになった(わたしの分類では、第三波フェミニズム・第三期・リベラルフェミニズム)。しかし「わたしたちの世代」を代弁していながらその内容が白人中流女性の生活実感だけを語っている内容に、某大学で開かれた「第三波フェミニズム」についてのコンファレンスでは同世代の発表者が次から次へと『Manifesta』批判を繰り広げた。たとえば本書において「フェミニズム内部の人種差別」の問題は三度言及されているが、二度は「フェミニズムに対して人種差別的であるという不当な攻撃があった」という内容で、最後の一つが「フェミニズム内部で人種差別を感じた人もいた」と、差別があったのではなくその人がそう「感じた」だけであるような記述。しかし入門書としての(白人中流階級の女性にとっての)分かりやすさから女性学のクラスでテキストとして取り上げられることも多く、影響力は強い。同じ著者らによる『Grassroots: A Field Guide for Feminist Activism』も参照。

次のページ »

HTML convert time: 4.577 sec. Powered by WordPress ME