世界の日本研究者ら187名による「日本の歴史家を支持する声明」の背景と狙い

2015年5月9日 - 1:04 AM | このエントリーをブックマーク このエントリーを含むはてなブックマーク | Tweet This

米国をはじめとする海外の日本研究者ら187名が、連名で「日本の歴史家を支持する声明」を発表した。

内容よりもまず注目すべきは、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のエズラ・ヴォーゲル氏、『敗北を抱きしめて』のジョン・ダワー氏、『歴史としての戦後日本』のアンドリュー・ゴードン氏、『歴史で考える』のキャロル・グラック氏、『国民の天皇』のケネス・ルオフ氏、『天皇の逝く国で』のノーマ・フィールド氏ら、学問的にトップクラスであるばかりか米国のアジア政策にまで影響を与えるような名を知られた大物が、ほぼ全員名を連ねていること。わたし自身も署名したが、あとになってリストを見ると、わたしなんかが入って本当にすみません、と謝りたくなる気分だ。権威主義的だと言われるかも知れないが、これだけ有名人が揃うと壮観。そして、この声明が発表されたことが、尋常ならぬ事態だということが分かる。

声明は、安倍首相が日本の総理としては史上初となる米国議会の両議院総会での演説を行った一週間後に発表された。その中で表明されているのは、首相がこれまで日本軍「慰安婦」問題の解決を求める声を無視してきたばかりか、その史実を覆そうとする歴史修正主義的な動きを明白に後押しするような一連の行動への失望だ。

なかでも、日本政府が米国の世界史教科書の出版社や著者に「慰安婦」問題についての記述を書き換えるよう迫った件は、政治的立場を超えて米国の学界から反発を受けている。二月には二十人の歴史学者が日本政府による歴史学への介入を非難する共同声明を発表したが、その後も政府が海外の報道機関に歴史修正主義に親和的な特定の識者を起用するよう要請していることが発覚するなど、事態は改善されていない。

安倍首相の米国議会演説では、「慰安婦」問題を取り上げ被害者への謝罪と歴史修正主義との決別を表明すべきだという一部の議員や識者などの声もむなしく、期待された発言はなかった。それを受けて、欧米で活動する多数の日本研究者が発表したのが、今回の声明だ。直接安倍首相を非難する言葉が入っていないから日本批判・安倍批判ではないと言う人もいるかもしれないが、文脈やタイミングから、明らかに安倍首相と日本政府の姿勢を批判するものだ。

そもそも、なぜ「日本の歴史家を支持する声明」というタイトルが付けられているのか考えてみれば、署名した研究者たちが日本における歴史研究が政治的な攻撃に晒されていることを危惧し、日本政府や歴史修正主義者たちによるまっとうな歴史学への攻撃に対抗しようとしていることが分かるはずだ。

もちろん、政治による歴史の改竄や利用は日本だけに限った話ではない。また、負の歴史に向き合うことが困難なのはどの国も同じだ。だからこそ声明では、日本だけでなく韓国や中国でも「慰安婦」問題がナショナリズムの資源として利用されていることや、米国が第二次世界大戦中の日系人収容政策や奴隷制度に向き合うために長い時間を必要とし、いまだ解決されていない問題も残されていることにも触れられている。にもかかわらずこれだけ多くの研究者たちが、とくに日本の「慰安婦」問題をめぐる歴史修正主義を問題視する声明を発表したのは、今の日本における歴史修正主義の跋扈や歴史的事実を主張する者の社会的排除が、他国の状況と比べても度を越して危機的状況にあると見られているからだ。

わたしは、三月にシカゴで開かれたアジア研究学会において、この声明のもととなる議論が行われた会合に参加した。その中心メンバーは、二月の声明にも参加した歴史学者たちだ。かれらは、自分たちが学会の会報に出した声明が大きな国際ニュースとなったことに驚きつつも、それ以降も日本政府によるメディアへの(特定の識者を起用するように、などの)干渉が続いているなど、歴史修正主義を事実上政府が後押ししていることを踏まえ、歴史学以外の日本研究者にも呼びかけ、より大きな声明を発表することを決めた。そうした声明を発表する一番の目的は、歴史修正主義的な政府と世論の圧力に晒され、自由な研究や報道を脅かされている日本の歴史学者やジャーナリストらを支援することだ。

もちろん、これだけの研究者たちの賛同を得るためには、さまざまな妥協が必要だった。署名の取りまとめを見た上でのわたしの印象だが、たとえば、多くの学者は自らの行動が政治的であると見られるのを嫌うので、直接安倍首相を批判する文言は含まないなど、政治色は可能な限り薄められた。本題でもないのに韓国や中国でも歴史がナショナリズムの資源として動員されていることや、米国も負の歴史に向き合うことに苦悩していることに触れられているのは、反日だとか日本叩きだと思われたくないためだろう。

また、研究者の中でも超大物と呼ばれる人たちは、日本の学界のみならず政官財の実力者とそれぞれ人脈的な繋がりがあり、反日的だと思われると今後の研究に差し障りが生じる恐れもある。そういった事情のなか、学問的に真摯でありつつ、なおかつ政治の暴走を牽制しようとする、ギリギリのラインを狙ったのがこの声明だ。有名人は有名人なりに、かなりのリスクを背負ってこの声明に賛同している。

そもそも日本研究者たちの多くは、日本に好意を抱いているからこそ日本研究を専門に選んだのであり、「私たちの多くにとって、日本は研究の対象であるのみならず、第二の故郷でもあります」と声明に盛り込んでいるのは嘘ではない。もしこれが反日学者による反日のための声明であったなら、これほど広範な支持を得ることはなかっただろう。

今回の声明について、ほとんどのメディアは「安倍晋三、『慰安婦』問題での日本の立場を叱責される」(英フィナンシャル・タイムズ)、「歴史学者ら、日本に戦争の歴史を直視するよう要求」(米ウォール・ストリート・ジャーナル)「187人の研究者が安倍に日本の戦時中の歴史に向き合うよう要求」(ジャパン・タイムズ)のように、研究者らによる安倍政権への批判として報道した。

ところが『東洋経済』編集局記者の福田恵介氏は、「日米歴史家、韓国メディアの“変化球”に困惑 なぜ『5月5日の日米声明』をネジ曲げるのか」と題する記事で、これに異を唱える。福田氏は、この声明を「安倍晋三首相はじめ日本政府を狙って批判・糾弾しているものではない」としたうえで、韓国メディア・聯合ニュースの報道を「日本たたき」として批判する。しかし聯合ニュースの記事の内容は、日本語版を確認する限り、フィナンシャル・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルと大差ない内容だ。世界中のメディアが声明を誤解しているのでなければ、福田氏の解釈がおかしいのだろう。

福田氏は聯合ニュースによる捏造の一例として、同紙が声明を引用して「大勢の女性たちが自らの意志に反してとらえられ、むごい野蛮行為のいけにえにされた」と書いている部分について、原文には「大勢の女性が自己の意思に反して拘束され、恐ろしい暴力にさらされた」とは書かれているが、「どこにも『むごい野蛮行為』『いけにえ』といった言葉はない」と指摘している。

たしかに声明の日本語版ではそのように訳されているが、英語版では「large numbers of women were held against their will and subjected to horrific brutality」だ。どちらの訳も間違いではないが、「brutality」という言葉はただの「暴力」より残虐性の強い言葉だ。聯合ニュースの記事が一度韓国語を経由して日本語に翻訳されているのだとすると、この程度の違いはまったく不思議ではないと思うのだが、それを「ネジ曲げ」「改ざん」とまで呼ぶ福田氏の判断には疑問を感じる。

福田氏はさらに、聯合ニュースが声明の呼びかけ人の一人でコネティカット大学の歴史学者であるアレクシス・ダデン氏のコメントを掲載したことに対して、早稲田大学の浅野豊美氏に「ダデン教授は署名者の一人であるが、内容を主導してはいない」「このようなコメントは今回の声明に盛られた研究者の総意とはまったく違う」とまで言わせているが、声明の呼びかけ人がジョージタウン大学のジョーダン・サンド氏とダデン氏の二人であることは公開されている。

浅野氏の発言が正確に引用されていると仮定しての話だが、他の数名の人とともに翻訳を手伝ったという浅野氏こそ、共同署名者の一人ですらないのに、このようにして呼びかけ人を公然と中傷するのはどういうことだろうか。浅野氏は浅野氏で、聯合ニュースの報道が注目されてしまったためにこの声明が反日的であるという先入観を持たれることを懸念して、反日ではないと打ち消すことによってより多くの日本の人たちに読んでもらおうとしたのかもしれないが、嫌韓ムードに迎合・便乗し呼びかけ人の一人を中傷するような方法をとらずとも、ほかに手段はあったはずだ。

いずれにせよ、『東洋経済』が引用するのは、声明に署名すらしていない浅野氏ただ一人。それだけを根拠として、韓国メディアの報道に「日米歴史家」が「困惑」しているというのは、それこそあきらかな捏造だ。「なぜネジ曲げるのか」と、こちらこそ聞きたい。

声明が発表されて以降、日本の一部の人からは、外国の学者たちは「慰安婦」問題について無知だからこんな声明を出すのだろう、という声が聞かれる。もちろん、それぞれ専門は違うのだから、すべての署名者がみな十分な知識を持っているとは限らないだろう。しかし、日本の右派が次節の根拠としてよく持ち出すような歴史資料、たとえば1944年に作成された米軍による朝鮮人慰安婦と日本人経営者の尋問報告書や、1943年に朝鮮の新聞に掲載された慰安婦募集の広告などは、少なくとも声明の中心となった人たちには知られている。

三月のアジア研究学会で行われた会合でのことだ。「慰安婦」問題の現在の状況について話をしていて分かったのは、どうやら日本の保守系団体がアジア研究学会の日本研究者の(やや古い)名簿を入手したらしく、定期的に会員全員に「慰安婦」やその他の歴史問題についての英文メールが届いている、ということだ。そのメールでは、右派がよく持ち出すさまざまな歴史資料が添付され、それぞれに解説がつけられている。

しかしかれらが興味を持ってその資料を読んだところ、送り手の解説はことごとく一部だけを引用して都合よく解釈したものであり、全体を読めば日本軍の犯罪がよりいっそう根拠づけられる内容だった。一部のとくに好奇心旺盛な研究者らが研究対象が向こうからやってきてくれることを歓迎する一方、それ以外の多くの研究者はただ単純に迷惑していたが、いずれにせよ笑い話のネタにはなっているようだった。

今回声明に参加した研究者たちは、反日でもなければ無知でもない。その多くは、日本に住んでいる誰にも負けないほど生涯を通して日本を見つめつづけ、その行く末を心から心配する人たちであり、海外における日本の最大の理解者たちだ。そういった人たちが、安倍首相の訪米・米議会演説の一週間後、そして戦後七十年の節目を前にしたこのタイミングでこういう声明を発表した意味は、明らかだろう。

もとはと言えば、日本政府が米国の教科書の内容に口を出してきたことへの反発がきっかけだったが、いまではそれが突発的な出来事ではなく、日本における歴史研究や報道への圧迫の延長であったことが知られてしまっている。世界の知日派たちによる声明に、安倍首相やその周辺がどのように応えるのか、今度こそ日本軍「慰安婦」制度の被害を受けた人たちとの和解に向け一歩踏み出せるのか、戦後七十年を記念して八月に発表されると思われる首相談話に注目が集まっている。

(この記事は、「シノドス」ほかいくつかのオンラインメディアに2015年5月9日に掲載されました。)

9 Responses - “世界の日本研究者ら187名による「日本の歴史家を支持する声明」の背景と狙い”

  1. 匿名 Says:

    反日でも無知でも無い子は理解しましたが
    日本人の心情は全く理解できていない事もよく理解出来ました。
    加害者の立場に立ってこれまで数十年謝罪し続けて来たのに自国の情勢次第で此方の態度に関係なく全てをご破算にする、
    1000年経っても恨み続けるという国家と真の意味で理解し得ないと日本人はやっと気付いたという事もご理解ください。

  2. こやま・えみ Says:

    エミ・コヤマ(独立研究者)ってあなたなの?

  3. Says:

    匿名さん
    私も日本人ですが、あなたの仰る「日本人の心情」というものが全く理解できません。
    「安倍晋三とその支持者の心情」とでも言い換えた方がわかりやすいと思います。
    それに、最近は変な表現を用いて国名をぼやかすのが流行っているのですか?
    ヤフーのコメント欄でも、匿名さんの様な表現を用いる方をよく見ます。
    「韓国」とタイプしただけで頭が吹き飛ぶ呪いにでもかかっているのだとしたら多少は同情しますが…

  4. goldbug Says:

    アメリカを舞台とした日韓の歴史戦で、少なくとも政治の分野では日本が勝利したようですね。そもそもこの戦いは韓国側が慰安婦像の設置などで始めた戦いと言っていいでしょう。今回の安倍首相の訪米は一部この戦いにおける日本側の反撃であり、それは結果を出したと思います。
    日本側の戦略としては、まず「人身売買」という言葉を使うことでした。米下院の非難決議を見ると、慰安婦問題は「20世紀最大の人身売買」と書いてあります。安倍首相はこの同じ言葉を使うことにより、米国の非難に同調するように見せました。実際国務省のサキ報道官は「安倍首相が今年に入って過去の歴史や日本の戦後の平和寄与について肯定的メッセージを出している」とこの発言を歓迎しています。しかしもちろん下院決議は日本を批判する意味でこの言葉を使っていますが、安倍首相が人身売買という言葉で意図するところは、これは朝鮮人女衒、慰安婦、そして慰安婦の親の間で起きたことであり、日本は全く無関係だったということでしょう。韓国のマスコミはその意図についてよく分かっているようですが、アメリカは知ってか知らずか、その意味の違いについて深く掘り下げる気は無いようです。
    そしてハーバードでの講演の質疑応答で、「人身売買にあい、言葉では言いようのない苦痛を味わったことを思えば今でも胸が痛む。この気持ちは歴代首相らと違わない」と答えました。ここで見るべきところはもちろん、責任を認めても、謝罪してもいないところでしょう。どこか自分たちとは関係の国で人身売買が起きていて、その被害者はお気の毒だと言っているのと変わりありません。
    しかしアメリカにとってはこれで十分だったのでしょう。オバマからは慰安婦問題の解決をという一言すらありませんでした。もしその一言があれば、日本にとっては問題解決に向けて動かなければならない大きな圧力になったかも知れませんが、安倍首相は慰安婦問題ではアメリカは日本の側についたと思ったでしょう。実際にその通りだと思います。今後アメリカ政府が日本に対して何か圧力をかけてくることはないと思います。
    考えてみれば、日本政府は今回の訪米で、安保法制とTPPで、アメリカに対して自国の若者の命と国の富を差し出すと約束したようなものです。実際これだけのものをオファーされて、日本に対して苦言を呈することは難しかったでしょう。そして韓国にはこれだけのものを差し出すだけの力はないかも知れません。それに何よりアメリカにとっては所詮は他人事です。この問題に深入りする義理があるかと言えば、その理由は確かに無いでしょう。
    韓国としてもこの敗北は認識しているようです。マスコミは「韓国が日本に背を向ける対日外交を続けるなら、韓国の戦略的価値は縮小するかもしれない」、「韓国は米国との同盟国の優先順位で日本に押されていることが再確認された」、「政府の対日、対米外交の戦略の不在と失敗を指摘せざるをえない」、「政府に対しては『外交の失敗』『外交的な孤立』という批判が強まる見通しだ」と政府に手厳しいようです。いずれ政府はこれまでの強硬姿勢を改め、日本に対して慰安婦問題を強く提起するのを止めざるを得ないでしょう。安倍首相はあとは相手が折れてくるのをただ黙って見ているだけです。腹の中ではしてやったりとほくそ笑んでいることでしょう。
    この187人の研究者の危機感はよく伝わってきますが、安倍政権を動かすことが出来るかと言えば、それはノーでしょう。日本は米政府の後ろ盾を得て、この歴史戦に勝ったのです。正しいか正しくないかに関係なく力の強い方が勝つのはいかにも理不尽かも知れませんが、それが現実なのでしょう。

  5. layman Says:

    「日本軍は14歳~20歳の約20万人を強制的に徴用」「戦争終結時に証拠を隠すため、日本兵は多くの慰安婦を殺害した」「多くは朝鮮や中国からの慰安婦だった」
    これらはマグロウヒルの記述ですが、世界中に誤って広まった慰安婦象について「声明の中心となった人たち」はなにかリアクションをしてくれているのでしょうか?
    44年の資料をつまみ食いして、鬼の首を取ったように「慰安婦は売春婦だったから問題はない」と話すアホウヨには辟易としますが、「この人達はどこまで理解しているのだろうか?」という不信感は多くの日本人に広まっているかと存じます。
    原文から読みましたが、声明そのものについては(ダデン氏のトンデモ史観が排除されているだけあって)極めてまともなものであると評価します。

  6. 匿名 Says:

    米国=GHQが日本でやった多数の強姦を放置して日本叩きですか。
    朝鮮戦争やベトナムでアメリカと韓国がやったことには頬被ですか。貴方は酷いレイシストですね

  7. Lee_tw (@zen_task) Says:

    アメリカ軍性奴隷の洋公主や、韓国軍性奴隷のベトナム・トルコ風呂も同時に非難するなら理解出来るが、日本だけ非難する阿呆で偏った歴史家は支持できん。
    日本だけ責めるなら女性の人権問題ではなく人種差別主義者の日本叩きにしか見えない。
    ちゃんと人権問題として世界に訴えるなら、アメリカ政府も韓国政府も非難する必要がある。
    それとも、強制連行や誘拐されて性奴隷にされた韓国人やベトナム人は放置してもよい些末な問題なのか?
    残念だが人類の問題ではなく、日本人を責めたいだけの主張は支持される事は無いだろう。
    もっと巨視的な視野を持ちなさい。
    狭い視野の情けない主張は見ていて悲しくなる。
    日本人だけが問題を正す事が出来る高貴な民族でアメリカ人、韓国人ベトナム人は劣った民族だと考えるのはよしなさい。
    同じ人間で同じ問題を抱え、共に解決していかなくてはならない仲間なんだと考えよう。
    ちゃんと他国の性奴隷も調べて、同じ女性問題だと理解しなさい。

  8. 歴史は歪曲できない Says:

    無署名ブログだが、かなり声明を歪めていると思うぞ。
    「米国では今年2月、日本政府が歴史教科書を出した米出版社に慰安婦関連の文書の訂正を要請したことで、検閲との批判の声があがった」と書くが、この教科書は、朝日が虚報を撤回したにもかかわらず、「日本軍が20万人を強制連行した」と書いている。捏造を指摘したのであって検閲ではない。
    「首相がこれまで日本軍慰安婦問題の解決を求める声を無視してきたばかりか、その史実を覆そうとする歴史修正主義的な動きを明白に後押しするような一連の行動」というのはブログ主の虚偽で、安部首相は「筆舌尽くしがたい思いをした慰安婦がいたと思うと胸が痛む」とお詫びしている。日本政府の間接的関与及び、強制性も国会答弁で認めている。
    「その後も政府が海外の報道機関に歴史修正主義に親和的な特定の識者を起用するよう要請している」事実もない。上杉氏ら20万人強制連行の立場を取って、朝日や吉田証言の虚偽に基づいて発言している歴史修正主義者を起用しないように言っているだけだ。
    そもそも今回の声明は慰安婦について「20世紀に繰り広げられた数々の戦時における性的暴力と軍隊にまつわる売春のなかでも、規模の大きさと、軍隊による組織的な管理が行われたという点において・・・特筆すべきものであります」としている。これはマイク・ホンダが主導した米議会慰安婦決議を土台にしているの明らかで、この決議も朝日や吉田証言の虚偽を元に(即ち、女子挺身隊と慰安婦を混同して、日本軍が女子挺身隊として20万人を強制連行したという前提で)「規模と残業性において、他に類例を見ない」と言っている。要するに、20万と強制連行という文言は出てこないものの、それを前提としているから「規模の大きさで特筆すべきもの」となるのだ。
    しかし欧米の慰安婦が、日本のものより規模が小さかったことや、政府や軍が関与していないという根拠は示していない。マイク・ホンダは「米軍にも人権侵害はあったが、強制連行はなかった。日米の違いは強制連行の有無だ」と明言している。
    だが強制連行はなかった。多くは韓国の業者が、日本に併合される前から女性を集めていた。実際には日本の慰安婦とは、米欧など他国にも当たり前に存在していた慰安婦と全く同質のものであった。だから良いと言っているのではなく、日本と同様、米欧も日本軍の慰安婦と全く同じものを持っていたのだから、慰安婦の歴史、戦場と性の歴史と向き合わなばならない。
    それなのにそれを認めようとせず、自国の慰安婦問題を糊塗し、正当化しようとしているのがこの声明である。負の歴史に蓋をし、歴史修正主義の立場に立っているのは、この声明の方だ。
    この声明は前半で「戦後日本が守ってきた民主主義、自衛隊への文民統制、警察権の節度ある運用と、政治的な寛容さ」など、歴代自民党政権の下の日本の制度を祝福している。朝日やブログ主のように、戦後長くの間、マルクス・レーニン主義に基づいて「北朝鮮は地上の楽園」と80年代まで言っていたり、社会主義平和勢力論に基づいて「非武装中立」と言ったり、ソ連や中国の核兵器を美化したり、中ソのベトナム介入を擁護したり、朝鮮戦争を北侵した韓国の仕業といってきた、旧社会党勢力とは一線を画している。
    ブログ主はソ連や中国の侵略、北朝鮮の政治体制を擁護してきた、自身の負の歴史も総括すべきだろう。

  9. ふろいむ Says:

    毎日新聞が「日本の歴史家を支持する声明」について5月27日に特集記事を掲載しているのですが、大沼保昭さんにコメントさせたりして違う方向に誘導するものになっています。
    http://mainichi.jp/journalism/listening/news/20150527org00m030010000c.html
    「日本の歴史家を支持する声明」の賛同者の皆さんからあらためて日本の16歴史団体が5月25日に出した声明への賛同を表していただくとかできないでしょうか。

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